レビューした作品一覧全4件
この作者が、他者の感想欄などで作品を評する時の、何と言うか、嘘のない感じと言うか、愛に溢れた感じと言うか、感想欄の末尾を「ありがとうございました」という感謝で結ぶところからも垣間見える、文学に対する真摯な気持ちと言うか。兎にも角にも、僕みたいな俗物からすれば、彼女の文学に対する純粋さには、ほとほと頭が下がりますよ。それはその作風にも顕著に表れていて、意図してか、自然体なのか、流行りの文体に真向から寄せて行かない、ある意味でツッパリ通したその文体は、読んでいて小気味よく、でも時に難解で、なんちゅーか、一度はまるとやめられない中毒性のある文章なのである。本作は、夢に挫折をした女子大生が主人公の物語。「絵が私を愛してくれなかったとしても、私が絵を愛していればそれで良かったのに」という言葉が心を容赦なくえぐる。お話は序盤。文学を愛し文学に愛される作者が描くこれからの展開に、乞うご期待なのであ~る。
頭の良い人の、その頭の中をこっそり覗いたら、意外に?
投稿日:2021年12月22日 改稿日:2021年12月22日
マツコデラックスさんのような人。それが私がこの作者に抱く印象だ。けして風体のことではねえっす。頭が良く。器用で。何をやらせても卒が無く。事の本質を掴む能力に長け。でもおごることなく。周囲への気配りを忘れず。だからいつも彼女のまわりには、彼女に話を聞いて欲しい人が大勢集う。そしてそんな自分にどこかしら虚無感を抱いているっぽい。というところがマツコっぽい。さーて、本作のたらこさんは? そんな彼女が日々の創作の中で「ふと思い立ったことを書き綴る」連載エッセイだ。まさにたらこ版「徒然草」って感じの仕上がり。頭の良い人の、その頭の中をこっそり覗いたら、意外に不器用でおバカな一面が垣間見えたりする筈だ。きっとそうだ。密かにそんな期待をしながら読み進めるのであるがしかし?
多くの小説やエッセイの書き手は、作品を世に発表した後は、その作品の捉え方については読み手の自由、読み手の判断に委ねる、と考える人が一般的だ。しかしこの作者は少々違う。例えば本作は「いじめについて、一緒に考えてみましょう」の呼びかけから始まり、最後に「ご意見お待ちしています」という再度の呼びかけで結ばれる。この常に読み手と一緒に考察するというスタイルこそが、この作者の魅力だ。何故なら本作に限らず、彼の作品の感想欄は、いつも多くの論客たちの熱い意見で賑わっている。さて、本作は、この彼の呼びかけに総勢21名の論客が真剣に「いじめ」について考え、長文の感想を書いている。その全てに作者はクオリティの高い返信をしている。そう、本作は、本文、感想、返信までが作品なのだ。これからあなたが書くであろう感想すら、本作の血や骨になる。このエッセイはまだまだ成長を続けるのだ。なんだか生き物みたいなエッセイだ。
「自らの趣味を綴った文章」には総じてその趣味を愛するが故に、無意識に部外者を拒むような文章が多い。どっこい、この作者の本作は、読み手に優しく寄り添った至極の趣味エッセイである。庭づくりにさして興味のない人にも実に読みやすく、何故か徐々に興味をそそられる。そんな摩訶不思議なフォルムに仕上がっている。この絶妙な文章は、ひとえに理性と感性の双方を均等に兼ね備えた、この作者のお人柄が醸し出す産物かと思われる。この作者。一見して生真面目な理論派のようで、いつも肝心なところが程良く抜けているのである。とても憎めないおっさんなのである。一読すると、さも庭づくりの素人が書いたようなモーションであるが、実はそこそこ玄人分野のことを書いていたりする。まったく、計算なのか、天然なのか、よく分からないお人だ。これは庭づくりという小さな開拓の物語である! といったら大袈裟か? いやいや、読めば分かる。
レビュー作品 私の庭づくり
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