冒頭から「逃げる令嬢と追いかける幼馴染」という、王道かつ劇的な展開で読者を引き込み、そのまま感情の綱引きが続く物語構成が見事でした。
クラリーチェとエディン、リリシアとライナルトの両カップルを対比させながら、「恋愛は選ぶもの、そして選ばれるもの」というテーマを巧みに描写。特にリリシアの心情描写は繊細で、政略の犠牲となりかけた令嬢の痛みと、それを乗り越えようとする決意に強く心を打たれました。
一方の男性陣も、ただ追うだけでなく、自らの過去や社会的立場と向き合いながら誠実に愛を証明していく姿が描かれており、読者に「信じる勇気」を与えてくれます。
クライマックスは定番でありながらも、王道を極めた安心感と感動がありました。