三好長慶という、近年再評価著しい戦国武将のストーリーとして、これまでどうしても受け入れにくかったのがラスト描かれ方。 仲も良く、協力的であった、最後まで生き残った弟安宅冬康を、なぜ殺す必要があったのか、それを悔やんで死んでいくというのがどうにも納得のできない部分でした。 その点で、この小説において示された答えは納得のいくものでした。 また、三好長慶や松永久秀はもちろんのこと、その他のこれまであまり印象に残らなかったような人物達の考え方にもそれぞれの信念や理想があり、冴えたものを見せる瞬間があることを丁寧に描かれており、あまり馴染みの無い時代の馴染みの無い面々に命を吹きこまれています。 史実として知る事件で、もやもやしていたそれぞれの行動原理が理解できたように感じてすっきりします。 こういうストーリーであれば、三好長慶ももう少し人気が出てくるかと思えました。