主人公は反則気味の能力を持って居るので、下手すると全く緊張感の無い物語
になってしまいますが、基本的な戦闘力が低く、最終目標相手にだけは無力なので、緊張感
も無く無双するだけの戦闘のお話にはなっていません。1か0かの能力なので、常に一つ間違えば
あっけなく死ぬような緊張感をはらんでいます。
策を巡らし語りで翻弄し、掛かったらそこで終りな戦闘描写は一瞬先は闇、一手先は生か死か
の言葉の詰将棋です。
そしてそれは戦闘描写だけに留まりません。主人公はいささか露悪的なところはあるにしても
その心の根本は悪では無く、その生い立ちから来る観察力、常に自分をも客観視するかのような
性格の為、相手の秘めた胸の内を察しながら自らの心の内にも同じ程度に真摯に向き合いつつ
目の前の事象を一つづつ、一歩づつ解きほぐしていくかのようなこまやかな描写はこれも一つの
詰将棋。