レビューした作品一覧全2件
主人公は反則気味の能力を持って居るので、下手すると全く緊張感の無い物語 になってしまいますが、基本的な戦闘力が低く、最終目標相手にだけは無力なので、緊張感 も無く無双するだけの戦闘のお話にはなっていません。1か0かの能力なので、常に一つ間違えば あっけなく死ぬような緊張感をはらんでいます。 策を巡らし語りで翻弄し、掛かったらそこで終りな戦闘描写は一瞬先は闇、一手先は生か死か の言葉の詰将棋です。 そしてそれは戦闘描写だけに留まりません。主人公はいささか露悪的なところはあるにしても その心の根本は悪では無く、その生い立ちから来る観察力、常に自分をも客観視するかのような 性格の為、相手の秘めた胸の内を察しながら自らの心の内にも同じ程度に真摯に向き合いつつ 目の前の事象を一つづつ、一歩づつ解きほぐしていくかのようなこまやかな描写はこれも一つの 詰将棋。
腐敗しきった王国とその腐敗した王国を倒すべく立ち上がった解放軍と 来れば、主人公は解放軍に所属する若き戦士・・・とはこの話は行かない。 主人公は腐敗した王国の腐敗した軍隊に志願した痩せこけた村娘。 腐敗してはいても絶対的に優勢なはずの勢力に身を置きながら腐敗 した軍組織の愚かな戦略により大局的にはほとんど全ての戦いに敗北 しながら局地戦においてはその悪魔的な武力を持って、その悉くに 勝利を重ね続ける。 腐敗した王国軍の中にも若干の煌きがあるならば、輝かしき光に包まれ ているかに見える解放軍の中にも闇はある。 どこにも光があり闇があるならば、果たして正義とは何なのか。 滅び行く王国、取って代わる勢力、その流れに行き着く先は無い。 御伽噺はめでたしめでたしで終焉を迎えても、歴史とは流れて行くもの だから。あるのは生と死の繰り返し。