レビューした作品一覧全2件
小説というのは作詞とは違い、情景をいちいち説明的に描写せねばならない。そうするといくら叙情的に描きたくても中々ままならない。説明を省き過ぎればポエムになりかねないし、入れすぎても崩れてしまう。だから小説で表す叙情は非常に難しい。この作品はそういう面から見れば秀作とは言い難い。しかし、熟していないとはいえ“叙情的な一つの結末”を見据えて描かれた文章の一つ一つはとても輝いて見える。星をキーワードとした主人公の心の“やりとり”は最後の一文で結ばれ、そしてそれまでの説明くさい経過が一瞬にして叙情にまとまる。これを呆気ないと切ってしまうのも良いだろう。だが少し思考してほしい。小説という文章で描く“美しさ”とは何だろうか? きっとその答えを「私の手の中で星が死んだ」という作品の中で見出だせる読者もいるだろう。
決して見紛うことなかれ
投稿日:2013年5月22日
殺人行為は決して一つの精神論では語れない。それは善悪という、人間を人間とする根底的概念からしてそうだ。何が善くて何が悪いのか。そんなものは考え方一つで変動する。絶対悪が存在し得ないのはそもそも人の善悪という概念がそういう微細繊細な類いであるからだ。法に背けば即ち罪人である。ただ罪人が悪人であるかどうかという点で論は別れる。この作品は殺人あるいは食人行為を著者のニヒリスティックな趣向であくまで大衆文学に留めている。しかしどうだろう。この作品から読者が得れるものは高々一時のエンターテインメントだけであろうか。理不尽不条理皮肉に破綻。著作が所々に仕掛けた冷寒なる精神論と狂熱的なまでの“問いかけ”は恐らく最後まで読者を胸焼けさせる事だろう。この作品は流読すれば救われる。だが“思索する読者”には厭らしい程問い詰め、最後の最後、底の底まで追い詰める、“厭な小説”なのである。だから。流せぬ者は覚悟せよ。
レビュー作品 NO,BAD
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