レビューした作品一覧全13件
 魔王候補として生まれた主人公、エリオン。  魔女の娘であるココロと出会った彼は、彼女と交流を重ね、さまざまな事情からくる“仕方なさ”と向き合い、それでもなお彼女のそばにあろうとしました。  ココロを守るため。  ココロの悲しまない世界をつくるため。  エリオンは人間を、ココロをさえだまし、人に化けました。やがて彼は、彼ひとりしか知らない孤独なたたかいへ自ら身を投じ……。  クライマックスでのココロの“ひとこと”には、思わず上を仰いでうなってしまいました。そうか、そうだったのかと、それまでの彼女の心情を思い直したのです。  最後の展開はやりきれない思いを抱えながら読み進めました。これも“存在の仕方なさ”なのでしょう。  読み進めるごとに、あなたも様々なことを思うことになるでしょう。この作品はそんな魅力に溢れています。  読了時間はおよそ90分。  休日のひとときに、是非ご一読ください。
 人と妖とのたたかい。  そう聞いたあなたはおそらく、札や印を駆使する人間とおぞましい妖とが繰り広げるバトルを思い浮かべていることと思います。  確かにこの作品は、術者と異形とのバトルを魅力のひとつとしています。  しかし、それだけではありません。  主人公は異形をその身に宿す少女。彼女は人外の力と人間との境界で苦悶し、力へ傾くか人に留まるかの“たたかい”を心中で繰り広げるのです。  そんな彼女が人間らしくあるために必要と考えたのは、お金への執着。  お金を稼ぐことこそ、人の野生である。  人ならざる力にとりこまれないため、人であり続けるため、彼女はお金を崇めるようになりました。  けっきょく、人であるためになにが大切なのか。  それは物語の終盤まで読み進めた方だけ知ることができます。  表現や描写も巧みです。それぞれの場面が流れるように鮮明に想像できます。  是非ご一読を。
ファンタジーで群像劇。
投稿日:2014年9月26日
 この作品の舞台には、かつて英雄と呼ばれ、今では魔王と呼ばれる人々がいます。何かの分野において優れた能力を持つ彼らは、個性豊かで性格も魅力的です。  魔王ではない普通の登場人物たちも傑物揃いであり、物語を大いに賑わせてくれます。  地の文は少し独特ですが読むのに苦を感じるほどではなく、むしろ作品にのめり込むきっかけにさえなるかと思います。  ただ人物の行動を描写するだけでは理解しづらいですけれども、この作品では背景や判断根拠、その行動の意味などが詳しく描写されるため、キャラクターの「凄さ」をはっきりと感じることができます。ただ「凄い」と連呼するのではなく、豊かな語彙を以って教えてくれるのです。  序幕はスロースタートですが、どうか第一幕まで読了してください。その頃にはハマっているかも知れませんね。  オススメです。  是非ご一読ください。
レビュー作品 百魔の主
作品情報
 現実とは少し異なる日本が舞台。  登場人物たちが活き活きとしており、熱意や挫折、淡い恋慕など、彼らの気持ちが克明に伝わってきます。  ジャンルとしては超能力バトルもの、ということになるでしょうか。しっかりと体系化された能力は、たとえば『射撃』『盾』『飛行』などといった一目瞭然の名付けがなされており、「これってどういう能力だっけ?」というストレスはありません。  戦闘描写は分かりやすくてスピーディ、手に汗握る攻防を楽しむことができると思います。  そして教官。  僕は色んな方のレビューを拝読してこの作品を読み始めたのですが……。  どのレビューでも取り上げられている通り、教官かっこいいです。主人公たち訓練生を慮り、訓練では厳しく、その他の面では面倒見のよい、漢気溢れるかっこいい大人です。  オススメです。  是非ご一読ください。
 絶対防御の鎧を身につけ、更にチートな攻撃手段をも備える勇者。  それなりの力量を誇る勇者が百人。  強力な魔物を操るモンスターテイマー。  上にあげたのは、主人公サイドのお話ではありません。れっきとした敵です。  この物語の主人公シェートは、この世界における最弱の魔物、コボルト。家族や村の仲間、さらには恋人をむごく殺された彼は復讐を誓いました。  仇たる勇者を討たんと。 「なるほど、復讐パワーで覚醒してやっつけるのね!」 と思ったあなた。それは大きな間違いです。  最弱の魔物であるシェートは、本当に、どうしようもなく、弱い。  そんな彼が、前述の猛者どもを如何にして屠るのか。  気になりませんか?  ただいま長期休載中ですが、作者さまの活報を見るに、少しずつ着々と次章を執筆なさっておられる模様。  なれば今こそ、この物語に追いつくチャンスではあるまいか。  是非、ご一読ください。
強くても強すぎない主人公
投稿日:2014年7月11日
 主人公シュオウは強いです。  類稀な動体視力を持ち、それを活かした戦闘技術を会得しています。彼はこの小説における魔法のような能力を扱えないにもかかわらず、扱える者をいとも簡単にねじ伏せるほどの実力を持っているのです。  しかし。  強いといってもそれは、あくまで人の限界の範囲内。  攻撃を受ければ当然怪我を負いますし、走り続ければ疲労します。膂力はまさに常人のそれに等しく、数の暴力に対しては普通人と同様に無力です。  強い、しかし強すぎない。  この要素が物語にほどよい緊張感を与え、ストーリー展開にはハラハラせずにいられません。  世界観にもとてもワクワクさせられるのですが……。  僕なぞがダラダラ述べるよりも、皆さん自身が物語の中で触れた方が楽しいことは間違いないでしょう。  おすすめです。  是非ご一読ください。 p.s. 書籍化おめでとうございます!  
レビュー作品 ラピスの心臓
作品情報
これぞバトルの醍醐味
投稿日:2014年7月10日
「勝てるはずもないほどの強敵に対して策を練り、看破され、打破され、血みどろになりながらも会心の一手で目的を踏破する」小説が大好きだ。  共感したあなたに『女神を胸に抱くとき』を強くお勧めします。  綿密に張り巡らされた伏線に継ぐ伏線。 「あ、あのときの!」 「そういうことだったのか……!」  一度物語に呑まれれば最後、あなたは感嘆の呻きを漏らさずにいられなくなることでしょう。  第一話にはバトル展開はありませんが、かといって流し読みは厳禁。第二十七話でのこの高揚を得られなくなりますので。  最初から最後までじっくりと味わってください。  なろうの平均からすれば、一話一話がいささか長く感じるかも知れませんね。でも、興味をお持ちになったのなら、どうか対プロメテウス戦(第九話)までは読んでみてください。ここでハマれば、最後までワクワクは止まりません!  是非、ご一読ください。
異世界チートへの一つの答え
投稿日:2014年6月9日
 ある日異世界に転移させられ、恐ろしいまでの膂力を与えられたら……。  そんな仮定への一つの答えかも知れない。  主人公は滅亡寸前のある一族により召喚された。破壊神と崇められた彼はよく分からぬうちに戦争に放り出され……。自分にいつの間にやら与えられていた力の異常さに気づいていく。  安易に大きな力を振り回せばどうなる?  答えの一つがこの作品に描かれています。グロテスクな表現にご注意を。  是非ご一読ください。
氷雪の忍びと情熱の文学少女
投稿日:2014年6月9日
 雪野の力を扱うには、心を冷却せねばならない。そう信じて疑わない高校生、雪野灯輝。そのために気になる女の子ともある程度の距離を保って日々を過ごしている。彼女に何度誘われても文学部に入らないし、メールアドレスも交換していない。  そんなある日。彼女はとある幽霊部員について調べてみないかと持ちかけてきた。当初は相手にしていなかった彼だが、そうもいかない状況に呑み込まれていって……?  冷気を操るものの実力はさほどでもない雪野灯輝。  情熱の文学少女たる西塚沙織。  幽霊部員は一体……? 雪野くんの淡い恋の行方は……?  バトル、恋愛、どちらも楽しめる面白い作品です。ついつい電車でニマニマしてしまいました。  よろしければ是非、ご一読ください。
 かわいい系少年の主人公はある事件をキッカケに、高嶺の花とも言うべき学校のアイドルとお近づきになった。憧れのその先輩は積極的に主人公とコンタクトをとろようになり……。  そんな二人のラブストーリーです。  物語は二人の一人称視点から語られており、彼らの心情がしっかりと細やかに描写されています。  ストーリーは中盤まで順調に進んでいきますが、ある別の事件がキッカケで二人の関係に突如変化が訪れますが……。  続きは読んだ方にしかわかりません。  是非、ご一読ください。
現実的な魔法使い。
投稿日:2014年3月17日
 もし、現代社会に魔法使いがいたら……。  そんな空想をしてみた方は少なくないのではないかと思います。  では、仮に実在するとして。  そもそも魔法とはどのように行使されるのか。  魔法使い達はどのような境遇に置かれるのか。  その境遇から逃れた者は日常をどう送るのか。  疑問はまだまだ溢れることでしょう。  この作品は、それらに一つの回答を提示してくれます。  そして、その世界観の中で紡がれる物語はとても興味をそそられます。続きが楽しみで仕方がありません。  そんな我々読者にとっては嬉しい、安心の土曜更新。  是非、ご一読ください。
 読心能力者の少年は、とある少女に一目惚れをした。人の心を無断で読むのは褒められた行為ではないと自覚しつつも、つい彼女の心を覗くと――。  彼女は、被害妄想に苦しめられていた。  被害妄想ゆえにクラスメイトを信じることが出来ない彼女は、結果として孤立してしまう。そんな彼女をどうにかして救ってあげたいと思い立つ読心能力者の主人公は東奔西走して……。  主人公は彼女を救うことができるのか。  主人公の恋は実るのか。  実ったとして、彼の読心能力は彼女に受け容れられるのか。  是非、ご一読ください。
不思議過ぎる世界観。
投稿日:2014年3月17日
 ストーリーの整合性だとか、表現の巧みさだとか、キャラクターの魅力だとか。そういうものによって、色んな作品は面白さを発揮するのだと僕は思います。  しかし。  この『アババババババ……毒手ッ!!毒手ッ!!』は全く違うトコロに魅力があります。  とにかく意味不明なのです。 「うねお」 「ぽなんざはけんよりもつよし」  個人的にはにわしの追い討ちがツボにはまりました。  少しでも興味を持たれた方は是非ご一読ください。短編なので、時間を気にする必要はありません。出来れば、一文一文のおかしさを楽しみながらお読みください。