死体装飾家のシスター無花果、AIの三笠木、事務員の「手」、私生活配信所長…メンツが濃い! でも、話はちっとも破綻していないんです。視点の日下部が常識人(?)で、安心して感情移入できるから。
日下部自身がアーティストだからこそ、彼が探偵事務所の面々に不信感だけでなく興味を抱くという接続も自然にあるのが良いですね。
そして、ぶっ飛んだ(でも整然とした)推理パートの後にある「死体装飾パート」が、この作品の核だと感じました。生きた人間が、ふつうは忌避するであろう死体と向き合う…無花果さんの「死でもって生をたしかめる」自己表現、圧巻です。
「兄は、無事死にました……」
最後、この言葉で、こちらまで救われたような気がしました。
この作品は探偵ものであり、そして間違いなくヒューマンドラマです。