レビューした作品一覧全4件
死体装飾家のシスター無花果、AIの三笠木、事務員の「手」、私生活配信所長…メンツが濃い! でも、話はちっとも破綻していないんです。視点の日下部が常識人(?)で、安心して感情移入できるから。 日下部自身がアーティストだからこそ、彼が探偵事務所の面々に不信感だけでなく興味を抱くという接続も自然にあるのが良いですね。 そして、ぶっ飛んだ(でも整然とした)推理パートの後にある「死体装飾パート」が、この作品の核だと感じました。生きた人間が、ふつうは忌避するであろう死体と向き合う…無花果さんの「死でもって生をたしかめる」自己表現、圧巻です。 「兄は、無事死にました……」 最後、この言葉で、こちらまで救われたような気がしました。 この作品は探偵ものであり、そして間違いなくヒューマンドラマです。
「本当にいそうな誰か」の物語
投稿日:2025年6月23日
白木蓮を読ませていただきました。 主になるのは、中堅貝原さんと新人内田さんにフォーカスした、六花本舗人事部での出来事。「誰か」の日常をのぞいているような気分で読み進めました。 作者の笠原さん自身、主観の「私」と同じで、心の機微に敏感な方なのだと感じました。そして秀逸なのは、「私」の綺麗な感情ばかりでなく、人間らしい感情も隠さず伝えているところ。「他人と比べられた上で褒められた」のに、それを嫌悪しつつも優越感を覚えてしまう…なんて、繊細な感情を拾い上げる描写に惹かれます。 私は完全な「いい人」を今回の会社ではやめようと決意している。内田さんはできることに必死で空回りすることもある。そして内田さんを叱る平手さんも、完全に嫌な人ではない。 本当にみんな、“リアル“。でも物語ならではの温かみが微かにあり、それぞれに感情移入しました。
1章の終わりまで読ませていただきました。 フェイヴァを「ごみ」と称する人間の兵士たち。自分が人間でないことに絶望するフェイヴァ。 読み手の胸を締め付ける展開が続きますが、彼女の母親を自称するテレサ博士の存在が救いになります。 逃亡の間の心の交流が丁寧で、フェイヴァとテレサ博士を応援したくなりました。 フェイヴァに冷たいレイゲンに、テレサが服屋で行った小さな復讐には、思わずクスッとなります。 またフェイヴァの「人間に受け入れられたい」気持ちに、レイゲンが絆されていくところも見どころですね。 最後に作者の夏野様へ 残酷な運命の中に差し込む救いが何とも温かい、壮大なダークファンタジーをご紹介いただき、ありがとうございました!
更新分すべて読ませていただきました。 「怪物を探すザックの秘密」、「名前を呼ぶことのできないミアの友だち」など、序盤から気になる謎が多く登場します。 また07で明らかとなったミアの秘密には驚きました。 そして、その後の「夢から覚める」ような展開。「友だち」の正体に関する真実。盤面をひっくり返されたかのような衝撃でした。ネタバレに配慮して口をつぐみますが…。 キャラたちのセリフも物語調で温かく、ダークなのにどこか優しい世界観が好きな人には刺さること間違いなしです。 最後に作者の薪原カナユキ様へ 丁寧に紡がれた素敵な物語のご紹介、ありがとうございました。 ザックと少女(あえてぼかします)の物語の続きを、これからも楽しみにしています。