個人的に。「鉱石家の人々」や「礼装の小箱」を読んできた私にとって、「異能バトルものを書く」九藤さんがあまり想像できなかったので、こういうアプローチにはちょっと驚いた。
しかし読み進めると「純文学異能バトルアクション」という新しいジャンルを九藤さんが開拓しているのがわかる。ここに、純文学、がないとだめなんです。前作までと変わらない、美しく純度の高い文章が土台になり、異能バトルやキャラクターを支えている。「数字」が入る以上、数学的な逸話を外さないのもまた楽しい。
個人的にもっと新境地だなと思ったのは、キャラクター同士の軽妙なやりとりだ。シリアスな中でも真面目な話をしている時でもギャグっぽいやりとりがあったりしていて、遊び心を感じる。
ところでタイトルで、ライトノベルの最前線で純文学の新境地と書いたが、それでは作家にとっては何か。
きっとそれは最高傑作だ。