本作はラノベという括りに収まる作品ではない。
異世界に転生したからといって、直ぐ普通に活躍できるわけではない。生まれ変わったのだから、まず生まれたままの姿で世界に放り出される。そこに神の慈悲はない。
主人公我らがヤジンが挑む最初の試練は『生き残ること』。
このサバイバル描写や、後の格闘技、特に空手に関する描写や説明は下手すると衒学趣味になりがち(作者氏が乗ってくると多少その傾向があるのかも)だが、くどくなく作品世界を壊さないバランスを保っている。
また、人間関係、特にアンダーグラウンドに生きる人間の描写が魅力的で、一人一人に血が通っている。今時の記号のようなキャラ描写とは一線を画する表現力は見事。
所謂『スキル』や『レベル』が出てくるが、単純なゲームの焼き回しではない。独特の考察は面白い。
リアルファンタジー小説として今後の展開が非常に楽しみな作品である。