レビューした作品一覧全6件
最初の数話を見れば分かると思うが、本作の世界観には王道ファンタジーの闇がしっかり含まれている。恐ろしいモンスターや奴隷制度の存在など、ファンタジー作品における闇を最初に明示することで、主人公の生きる世界の厳しさを読者に打ち出す。それでも本作における拝読時の感情は、決して暗い者では無かった。危機的状況でも何処か冷静に周囲を観察出来る主人公。終始敬語で展開される彼女視点の地の文は、世界の厳しさを中和し、読みやすくしてくれる。 ピンチの中でも『何とかなるかもしれない』と思わせてくれる手腕には感服する他ない。 まだ彼女の物語は始まったばかり。一難去ってまた一難な彼女の人生だが、その秘められた多くの才能も含めて、彼女なら全て乗り越えてくれると信じ、安心して読む事が出来る。 そんな本作ならではの個性、是非ともその感覚を一人でも多くの人に感じて欲しい。
愛しの勇者から捨てられた主人公、ショコラが出会い、主従関係を結んでしまったのは、超イケメンの王子様。 ショコラ視点で描かれる天然タラシの王子様の行動へのドキドキがこちらにも共有され、悶えてしまう。 彼女の視点から語られる何処か可愛らしく、癒されるような世界観とキャラクターに惹きつけられる。彼女を追放した勇者の最悪な人格と能力を知るほどに、ショコラの幸せを祈らずにはいられない。 読んでいく内に、(勇者除く)登場人物も世界観も、作品を取り巻く全てが好きになっていくだろう。
平和の守護者と地獄の業火
投稿日:2020年12月24日
抜き身の刀の様な青年ジーク。邪魔をする者は上官だろうとお構い無しな彼の元にやって来た新たな上官、サムエル。周囲の人心掌握に長けた彼は、一見するとジークと正反対だが、その本質は何処か近いものがある。だからこそ二人は反発し合う。 片や失敗作の烙印を押された近接偏重の鉄人、片や米国の技術の粋を集めた広域制圧機。駆る戦略兵器『T-Mech』の性質さえ正反対な彼らは、敵陣営が同じくT-Mechを投入して来た事で協力せざるを得なくなる。 果たして、この出会いは彼らにとって吉か、凶か。砂塵と血煙の舞う戦場を駆け抜ける彼らの戦い。重厚な世界観と巧みな表現で彩られた力作。ロボットを愛するなら、読んで後悔はしないはず。
病弱な身体で何一つ自由無く死んだ主人公は、異世界で龍の息子として生まれ変わる。世界最高峰の魔術師さえ歯牙にもかけない力を手に入れた主人公は自由に生きようとするが、色々あって魔王の座に着いてしまう。 しかし、彼は魔王となってもなお世界を楽しむことを諦めず、元の世界の娯楽を布教するなど気ままに楽しみ、そして怒られる。 自分と同じ転生してきた『勇者』という外敵こそあれど、彼ならば大丈夫だろうと言う安心感の元、世界を楽しむ彼の姿を眺められる。 生まれ変わることで世界を見る事が出来るようになった彼の物語、お楽しみあれ。
純度100%のギャグ時空
投稿日:2020年12月21日
指を折られるのはおろか、熊に殴られたり高所から落下しても死なない。何故なら、そういう世界だから。 そういう世界だからこそ繰り広げられる、ドタバタハーレムギャグラブコメ。入学するはずの男子校と同名の女子校に、『偶然』同姓同名の女子がいて、初登校時に『偶然』女装していたことで始まる女だらけの学生生活。『全員気合いの入った女装だな〜〜』としか思わなかった程度に鈍感な主人公と、何処かネジの外れたヒロインズによるドタバタラブコメストーリー。仕事で、学校で、家庭で。嫌なことがあった日に読めば、笑わせてくれて気も紛らわせてくれる作品。
VRMMOを始めたものの、苦行オブ苦行なネタビルド『殴り魔』になってしまった主人公、鈴音。しかし彼女はそれでもとんでもなく強く、愛してやまない妹と一緒にゲームをやる為に奮闘する。 妹、雫はゲーム内でも有名なトッププレイヤー。表向きツンツンしているが、内心は鈴音に勝るとも劣らぬシスコンぶり。彼女の視点では様々な感情を垣間見れる。 素直になれないからこそ、時々彼女が本心を明かした時の破壊力は凄まじい。普段砂糖を入れて飲んでいるコーヒーをブラックでいきたくなる甘さだ。 途中から二人と(愉快な)仲間達との動画配信が行われるが、これが上手いこと考えたものだと感心した。視聴者コメントが彼女たちのやり取りのおかしさをより引き立て、読者の代わりに突っ込んでくれる。 ストレートすぎる姉と素直になれない妹の甘く、もどかしく、そして微笑ましい物語。拝読の際は、コーヒーを用意した方が良いかもしれません。