最初の数話を見れば分かると思うが、本作の世界観には王道ファンタジーの闇がしっかり含まれている。恐ろしいモンスターや奴隷制度の存在など、ファンタジー作品における闇を最初に明示することで、主人公の生きる世界の厳しさを読者に打ち出す。それでも本作における拝読時の感情は、決して暗い者では無かった。危機的状況でも何処か冷静に周囲を観察出来る主人公。終始敬語で展開される彼女視点の地の文は、世界の厳しさを中和し、読みやすくしてくれる。
ピンチの中でも『何とかなるかもしれない』と思わせてくれる手腕には感服する他ない。
まだ彼女の物語は始まったばかり。一難去ってまた一難な彼女の人生だが、その秘められた多くの才能も含めて、彼女なら全て乗り越えてくれると信じ、安心して読む事が出来る。
そんな本作ならではの個性、是非ともその感覚を一人でも多くの人に感じて欲しい。