レビューした作品一覧全3件
下の方と同様、これはレビューを書かざるを得ないと思わされた。 まず物語の進行はよく言えば丁寧に、悪く言えば遅い。しかし読みやすく洗練された文章が次へ次へと押し進める。主人公の不遇な待遇が続くため、人によっては途中で手が止まるタイミングがあるかもしれない。しかし読み進めてほしい。 具体的に言うと、70話まで読み進めれば貴方はブックマークを押しているだろう。カタルシスに勢い余って星5を献上するかもしれない。私はした。 特に感情移入のさせられ方に感動した。主人公が努力するも、なかなか芽が出ない。周りが無駄な努力はやめるよう促し、読み手側も無駄な努力ではないかと思わされる。しかし剣を振り続ける主人公に、諦める気持ちと、この主人公ならもしかしてと期待する気持ちが生まれる。そしてあるタイミングで、その期待が爆発する。 長文タイトル、追放モノで、こんなに応援したいと思ったのは初めてかもしれない。
――これはただのループものではない。 最初、私はこの小説を「何もできない主人公がループを経て成長していく物語」だと思った。 いや。実際にその通りなのだが、物語の始まりはすでに何十とループした後のこと。そこから主人公の目的や、『ムゲンループ』に主軸が置かれて話が展開されていく。 この話を読む上で感嘆させられるのは、作り込まれた設定とストーリー展開である。無駄な部分がなく、あの話や設定はここに繋がるのかと驚かされるばかりだ。 そしてもう一つ語るべきなのは、敵の存在。 主人公は有能だ。何度も『ムゲンループ』を経て成長している主人公が、カシコくないわけがない。 しかし拓二の前に立ち塞がるのは、そんなものを鼻で笑うような怪傑ばかり。 特に私のお気に入りである千夜川の存在は神がかっている。作中を読み進めればそれはわかるはず。 重厚な物語を探す人なら、ぜひとも一度手に取ってほしい。
この作品を語る上で必ず欠かせない存在となるのは、主人公のヒビキ・ミヤシロである。 彼は自分の欲望に素直だ。 女の子にモテたい。カッコつけたい。よく見られたい。人間が誰しも持つであろう欲を、非常にストレートに口にする。 しかし彼はそれを口にするだけではなく、努力と執念で体現する。 女の子の前ではカッコつけるが、陰では泥臭く努力している。けれどそれを人前では明かさないから、怠け者の天才に見えてしまう。そこがまたカッコいい。 そんなヒビキ・ミヤシロは、まさしく私が学生時代の時に描いていた理想でもあった。 だからこそ、応援せずにはいられない。次に彼が何をやらかしてくれるのか、期待せずにはいられなくなってしまう。 そんなヒビキが大きな世界――星雲をてのひらにするまでの道のりを、私は陰ながら見守っていきたいと思う。