『美少女架空戦記』という響きから受ける印象とは裏腹に、決して派手とはいえない作品。
それが『山本五十子の決断』だ。
『ミッドウェー海戦で勝利すること』を主軸に展開する物語には、超大和型戦艦も新型空母も現時点では登場しない。
そこにあるのは一人の少年の目を通して見る少女達の『現在』。
艦隊司令部で賑やかな日常を送る彼女達が『海軍乙女』でいられる時間は長くない。
そして軍人たる彼女達のすぐ近くにある、戦いと死。
戦争の実相から目を逸らすことなく、戦争の中でこその輝きを描き出す、戦争をテーマにした物語の王道。
海軍乙女はそれを具現化した存在のように思える。
戦争の中で懸命にいまを生きる少女達と共に笑い、共に泣き、その戦いの行方を刮目し見守る。
そして彼女達と同じ時を過ごす間に、いつしか『未来』の価値が見えてくる。
一人でも多くの人に、この体験をして欲しい。
これほど夢中で読んだ小説は久しぶりだ。