インターネット記事のライターの青年が、ワシントン公園で目を覚ました。
そこで彼が出会ったものは、草チェスに興じる人々だ。
なし崩しにチェスボードの前に座らされた彼は、将棋の奨励会で培われた経験とセンス、読みの力を生かして瞬く間に戦況を圧倒する。
もうこの出だしでやられてしまった。
格好いいし熱いし、言うことなしである。
また、その後の展開も実に見事だ。
チェスという日本人にはなじみの薄い競技の海外での扱いを、比較的近しい存在である将棋打ちの目を通して描いている。
戦いの火花を散らす登場人物たちも多種多彩であり、世界各国の天才秀才の立場視点から描くことで、さらにチェスというものの造形をはっきりさせることに成功している。
肝心要のチェスシーンも実にわかりやすく、戦況の推移とともにドキドキさせてくれる。
そして何より、この作品には夢がある。
読み手をわくわくさせてくれる何かが詰まっている。