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妄想は生きる力になり得るか
投稿日:2015年7月29日
本作は太平洋戦争時代、時代を先取りし過ぎたとあるオタクの人生を描いています。 の○くろの時代に墨絵でハイライト入りの目を描き、朱墨の濃淡で頬の赤みを表現するという萌の先駆者にして追求者の主人公、柿揚。 彼の妄想は戦地でも衰えず、ついに俘虜収容所で同人誌を立ち上げるに至ります。 美少女化した駆逐艦や戦車が戦うという(当時としては)新しすぎる旋風に、俘虜も米軍士官も萌の虜にする始末。 随所に仕掛けられた数々のメタネタに漫画やアニメが好きな読者は度々くすりとさせられるでしょう。 戦争という重い主題を扱いつつも、本作の雰囲気は終始軽妙でユーモラスなものです。 それは、いかなる時でも妄想しネタを拾い萌を探す柿揚のスタイルに由来するものでしょう。 彼の精神は以下の一言に集約されます。 「想像は自由である」 本作は過酷な状況下でも自由に想像の翼をはばたかせることの力を教えているように思います。