レビューした作品一覧全2件
読後に心地の良い余韻が残る作品
投稿日:2024年10月13日
主人公の置かれた境遇は物語の最初と最後でそれほど変わらない。 物語の中で主人公は大きな力を手に入れるが、それで成し遂げた事と言えば、幽閉されていた場所からいつでも抜け出せるようになった事くらい。 それだけなのだが、読み終えた後には心地の良い満足感が残った。 主人公は自身の不遇な扱いを最初は諦めに近い感覚で受け入れている。 だがやがてその境遇の中でも日々を楽しみ、前向きに生きる様になる。 その姿が読んでいてとても心地良かった。 物語の結末も、大袈裟では無く、穏やかでさりげない、とても気持ちの良い終わり方で、読み終えた後に読んで良かったと思えるような、さわやかな余韻の残る素晴らしいラストだった。 読後に心が穏やかになるような、そんな作品を読みたいと思っている方に是非お勧めしたい
小国の、少し天然の入った感じのお姫様であるカリーナと、彼女のもとに婚約者としてやってきた大国の王子ジュリアン。 カリーナは、まだ十歳ながら大人びた性格のジュリアンに。 ジュリアンは天然だけど、真っ直ぐな性格のカリーナに。 二人がお互いに影響を与え合いながら成長し、心を通わせ絆を深めていきます。 物語の本筋はカリーナの恋の物語なのだと思うのですが、別の視点で見ると、追放に近い形で国を追い出されたジュリアンが、おおらかな気風のマッティアで、温かい人々に囲まれながら日々を過ごし、やがて新しい家族を手に入れる、そんな物語でもあるように思うのです。 読みやすく軽妙な文章で、中心となる二人とそれを取り巻く温かい人々の交流が魅力的に描かれています。 愛する人々と過ごす平穏な日々、それがどれ程素晴らしい物であるのか、そういった事を感じさせてくれる作品です。