個人的かつ大雑把な分類なのですが、小説には二つの種類があると思います。
一つ目は出来事の面白さを伝えるお話。二つ目は人間や世界の美しさや、あり方が書かれたお話。
この小説は、なろうでは珍しい後者だと思います。作中で起こった出来事は、端的に書き表せば四行くらいの些細なことです。
世界の危機も、戦いもありません。ですが、その中には時に残酷な世界の中で、それでも生きている人間の心が描かれています。生々しい心が。
そんな小説であるにも関わらず、一人称の瑞々しい筆致のためか、思わず笑ってしまうような会話劇のため、決して読みづらいということはなく、スッと心に沁みてくるようです。
これは仏頂面の少年が少女と出会い、何かを得て、失い、それでも生き続ける大人になるまでの物語。
「鯖の水煮は、飲み物ではありません」、味付け無しの素材の味だから、生臭くて、しょっぱい。
でも、栄養は、抜群。