レビューした作品一覧全10件
語り口調の面白さ
投稿日:2017年5月20日
語り口調の面白さ。キャラクターは個性抜群で、ストーリーは読み手の興味を存分に引き寄せる。 だから、これはぜひとも多くの人の目に触れて欲しいと思い、レビューを書く。 作者の実茂 譲さんは多くの作品を執筆されているが、個人的に面白いと思える作風のものが多い。クスリと笑わせてくれる、ウイットに富んだ作風だ。では、初期の作品は一体どんなだろう。 そこでこの作品を読んだ。 いつもの実茂作品だった。文句なしに面白い。もう7年も前の作品だのに、その頃にはすでに実茂ワールドは完成していたのか。なんてこった。 ……作品よりも作者をレビューしてしまった。 この作品がうずもれるのは勿体ない。5分で読める。これを読まないのは勿体ない。
ひだりの螺ちゃんに愛された
投稿日:2017年2月10日
本作に登場する螺は、脆弱な存在として描かれている。 自分の世界のなかでは勝気で、傲慢で、捻くれている。しかし、ひとたび心の内を覗いてみれば、そこにいるのは儚く繊細なひとりの乙女だ。 (……あれ? この螺、ツンデレじゃね? それともヤンデレ?) とにもかくにも、強烈な個性を発揮している。 夏の太陽が照りつける海。その水面を走る汽車のなか。 そこで繰り広げられる悲恋。 ほどよく説明的で、かつ幻想的なことば選び。 キャラ良し、世界観良し、文体良し。 傑作だ。
たかだか5千字強の作品なので、あらすじに共感したなら読むことを強く勧めたい。10分くらいで読めますから。 この作品は素晴らしい。 さりげなく綴られることばの表現力がとことん素晴らしい。 挙げればキリがないのですが、個人的には「行間に漂う彼女の幻影」という表現に、特にシビれました。 (作者さま。勝手な引用をお許しください。) 若干の誤字/脱字がありますが、それは些細なこと。それらの修正は簡単にできます。 しかし、この作品にみられる秀逸な表現の数かずを、新たに生み出そうとするのは難しいものです。 作者さま。御作を読ませてくださりありがとうございました。
あらすじを読んだ時点で、この作品は面白いに違いないと予想した。その理由はふたつある。 ひとつは、あらすじにある月面基地の設定が実際に構想されているものと一致するので、作者さまには相当の知識があると判ったから。 もうひとつは、オカルトチックで興味を引かせる書き方だったから。答えを知りたいという探究心をくすぐられた。 下地となる知識があり、上手い文章が書ける。あらすじだけでじゅうぶんにそれらを感じた。面白くないわけがない。 予想どおり、面白かった。読んで良かった。 あらすじって大事だな、と思った。 作者さま。ありがとうございました。
夢見心地な雰囲気が素晴らしい作品である。 ふたりの男女が少しずつ距離を縮めていく物語だが、劇的な展開はないものの退屈さを感じさせない。文章量と展開のバランスが良いからであろうか。 落ち着いていて優しい文体がふたりの世界にぴったりあて嵌まり、また悪いストレスがない。読みやすい。 このふたりを静かに応援したくなる。 作者様に感謝したい。
レビュー作品 白いカラス
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SFジャンルを漁っていて見つけた作品である。 1000字強の短い作品だが、作品のよしあしは文字の寡多とは無関係である。 楽曲のプロモーションビデオを観ているような印象を受けた。 長くはないが、作品に奥行きがある。筋の通ったテーマがかる。 (あくまで私個人が受けた印象である。) この作品のような美しいSF作品がもっと読みたい。切にそう願う。
レビュー作品 銀河ラジオ
作品情報
キーワード「アッツ島」で検索し、偶然発見した作品である。 一件しかヒットしなかった。が、この一件が素晴らしかった。 アメリカ人の目線で、戦前から戦中にかけて、日本人との交流を軸に語られる。 偏った思想を感じさせないので非常に読みやすい。 また、軍事モノだが事前知識は不要。アッツ島がどこにあるかなんて知らなくても読める易しい作品である。 作品を読み終えた後、興味があればアッツ玉砕戦を調べてみると良いかも知れない。 素晴らしい作品を公開してくださっている作者さまに感謝したい。
レビュー作品 流れ星
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ファンタジーとはこういうものだ
投稿日:2016年12月28日
ひじょうにファンタジックな物語である。 月夜に黒猫の組み合わせ。これだけでもう幻想的である。 神。愛。死。幻想的である。 この作品に会話はない。それがしっとりとした雰囲気をつくりあげている。 月夜の晩に、黒猫がワルツを踊る話である。幻想的だ。 神がいる。愛がある。死ぬ。ファンタジー的要素がふんだんに盛り込まれている。 作者は活動報告で、これが人生初の作品だと述べている。信じられぬ。 初めて執った筆で、ここまで情緒豊かに世界を描けるとは。
レビュー作品 黒猫のワルツ
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ひだりの螺ちゃんに愛されたい
投稿日:2016年12月21日
心地好い作品である。 構成、世界観、そしてキャラクタ。そのいずれもが心地好い。 一、構成。 文章のリズムが好い。苦しさのないリズムだ。また展開が好い。少しずつ謎が解けてくる。 ひだりの螺が微笑みかけてくるようだ。心地好い。 二、世界観。 救いがあるような、ないような。たぶんない。不思議な世界である。 ひだりの螺と会話しているような、夢の世界だ。心地好い。 三、キャラクタ。 ひだりの螺が魅力的だ。恐怖、嫌悪、絶望を体現したようなキャラクタである。だがそれが心地好い。 ああ。ひだりの螺ちゃんに愛して貰えるのならば。死んだって構わない。
ありふれた世界の優しい物語
投稿日:2016年12月10日
マジパナい。書き出しからぐっと惹きつけられた。 この作品の書き出しは「似たり寄ったりの民家が並んでいる」ということを描写しているのだが、その表現が滅茶苦茶面白い。比喩のセンスがピカイチだ。 だからといって龍頭蛇尾、というわけでもない。書き出しと同様の面白さは随所に散りばめられ、最終盤まで色褪せない。 この作品はありふれた世界の優しい物語だ。ありふれた世界がこんなに面白いだなんて。