レビューした作品一覧全21件
シンナゴヤという一定世代以上の名古屋人には懐かしい響きのタイトルに惹かれて開いて見ると、気がついたときには一気読みしてしまいました。 名鉄など名古屋地域の鉄道を擬人化したシンデレラ・ストーリー。作品の中にはディープな鉄ネタが随所に溢れ出し、さらに名古屋ネタがこれでもかというたたみかけてきます。まるで八丁味噌を溶き入れてじっくり煮込んだ老舗のどて煮を彷彿とさせるほどの濃度です。 そんな濃度でありながらもサクサクと読めてしまうのは作品が持つテンポの素晴らしさあってのもの。特に登場人物たちの会話のリズムが本当に心地よく、まるで声が聞こえてくるようです。 名古屋の若手落語家さんである登龍亭獅鉄さんの作品ということもあり、演芸場で創作噺を聞いているかのような気分に浸ることができました。名古屋ネタや鉄ネタに詳しくない方でもきっと楽しめる作品です! 
レビュー作品 シンナゴヤ
作品情報
一見普通の異世界転生モノ、しかし本作は決して“普通”の枠には収まりません。 異世界に飛ばされた主人公たちが目指すのは「現代世界の帰還」。 はぐれてしまった仲間たちを探すところから始まった道中は、「強力なキャラクター」として並み居る敵をバッタバッタと薙ぎ倒す爽快感と「オッサンプレイヤー」としての地に足がついた判断の老獪さが織りなす一種のリプレイやTRPG実況を見ているような面白さが随所に溢れています。 そこにマニアックな小ネタや妙なところでリアリティの高い演出がエッセンスとなり、ついついニヤリとしながら読み進めてしまいます。 今回も南野節が光る本作を読めば、きっと“温故知新”な異世界ファンタジーの良さを改めて感じて頂けることでしょう。
「新米冒険者の俺がA級パーティーから追放されたお荷物を押しつけられたわけだが、とんでもない美少女ですごい強かった。あと、ちょっと頭おかしい」の続編となる本作品。 中堅どころの「C級」に昇格した主人公たち一行が、今回もドタバタ冒険活劇を繰り広げます。 C級のかれらに降ってわいた依頼は少々ヘビーなもの。さらに陰謀渦巻く(?)王城のトラブル(?)にも巻き込まれ、さらにはある土地の一大事の解決にまで乗り出す羽目に。 災難続きの主人公ですが、持ち前の厚い義理人情と的確なリーダーシップに「王道ヒーローここにあり」と唸らされます。 TRPGのキャンペーンを思わせるようなテンポの良い展開にいつもの南野節が合わさり、スカッと爽やかな仕上がりとなったこの一作。ぜひ前作と合わせてご覧いただくことをお勧めします!
独特の語り口に定評がある南野雪花さんの最新作。 珍しく追放ものという流行を追いかけたのかな?と思わせるタイトルから思わせぶりに振られてきたのは、実に軽妙でそしてハートフルな王道冒険ファンタジーでした。 いわゆる補助職がメインの主人公フレイ。そこに集う仲間たちは幼女エルフに男の娘な幼馴染、さらには狂信者となたドエムな半裸戦士に豪胆な異種族まで……。 一癖も二癖もある仲間たちがフレイをリーダーとして認め慕うのは、やはり「ぶれない芯を持ったリーダーシップ」の賜物でしょう。 冒険とは戦いの身に非ず。目的の場所への旅路を安全に進むことこそ実は難しいことであり、それをしっかりと担えるフレイはやはり冒険者パーティーのリーダーにふさわしいということでしょう。 まぁ、その分フレイくんは苦労をしょいこむのですが、それがまた面白いから仕方がない(笑) 完結済み作品。この夏の一気読みがお勧めです^^/
とある王国を守る見目麗しい白騎士様が、兄妹のように育ったご令嬢様に恋をする ―― こう書いてしまうと普通の恋愛もののようですが、本作はそんな期待を最初から裏切ってくれます。 ぽっちゃり系ヒロインであるご令嬢メイリーはなかなかの天然ぶり。何とも可愛らしくはあるものの、一方で「主人公、がんばれ」とつい応援したくなってしまいます。 そして、彼女の魅力がもう一つ。それは類稀なるメシテロ力です。あっという間に一財を成すほどの素晴らしい料理は、うっかりすると国まで支配できるのではないかと思えるほど。著者の見事な飯テロ描写とも相まって、深夜に読むと大変「危険」な作品となっております。 一方主人公ウズベルもまたなかなかに「鈍感」。さすが兄妹。ただ、それがゆえに「色恋がらみ」でいろいろ引き込んでしまったりもするのですが……まぁ、色男なので已む無しでしょう(笑) 今後の展開も注目の一作です!
一人と一匹の異世界世直し旅(ただしハードモード)
投稿日:2017年6月28日 改稿日:2017年7月13日
本作品はいわゆる『異世界転移モノ』でありながら、『異世界転移モノ』とは一線を画した作品です。 主人公が転移したの中世風ファンタジーな異世界には、先達の転移者がいました。彼が広めた知恵により大陸は豊かになり、子孫たちは王族として君臨します。 しかし、その副作用として生じたのは『世界の緩慢な自殺』。主人公の使命はその『尻拭い』をしろというものでした。 チートな能力を与えられなかった主人公。代わりに授かったのは強大な力を持つ一匹の竜との凸凹コンビによる世直し旅が始まります。 そして主人公は自らの命と引き換えに、世直しを達成します。めでたしめでたし。 ……と、ここまでが29話までのあらすじ。無論、これでは終わりません。 29話で明かされるのは、緻密に練られた伏線からの衝撃的な展開。 まずは30話まで一気読みしてほしい。そして続きも引き続き追いかけてほしい、今読んでほしい珠玉の一作です!
歴史ある温泉街の一角にある不思議な旅館を舞台に、女子高生若女将の主人公と一応イケメンな稲荷神がドタバタしながらも仲良くお客様をもてなす、あやかし系王道作品です。 この旅館を訪れるお客様は『神様』。人間味があふれ、そしてちょっと破天荒な神様たちを主人公のJK若女将が健気にもてなしています。 そんな主人公をあの手この手で攻めるのは自称?パートナーの稲荷神。そのちょっかいに主人公は手を焼きつつも、どこかその状況を楽しんでいる所もあったり、かわいらしさ満点です。なんだかんだで困っている人(?)を放ってはおけない世話焼き気質はさすが旅館の娘といったところでしょう。 そして、物語のキーワードとなっているのが『桜』。美しくもはかなさを含んだ桜を絡めた人情溢れるストーリーが、読み手の胸にぐっと響きます。 短編として終わらせるのがもったいない一作と感じます。ぜひ多くの読者様に読んだ頂きたい作品です。
本作品は、ツイートをきっかけに生まれたとのこと。 小説家になろうには数多の作品がありますが、「車内」を唯一の舞台として描かれた飯テロ作品というのは間違いなく稀有な存在でしょう。 しかし、その飯テロ度といえばまさに強烈の一言。 最初に『匂い』で思い起こさせ、そして『会話』で心を揺さぶり、最後に『食べ方』で喉を鳴らさせる。 “食”を描くというのは、まさにこういうことなのだと改めて痛感させられました。 今回の作品自体は短編とのことですが、叶うことであればぜひ連作として別のお話も読んでみたいと感じました。 最後に、本作品を読まれる方は何かしらの食べ物、できればハンバーガーをお手元に用意しておかれることを強く推奨させていただき、推薦の言葉とさせていただきます。
レビュー作品 ベンツ飯
作品情報
本作品は、自信家の実力派人形遣いルチアと、王子の側近であり自身も将来を約束された守護騎士ヴァンツァの二人が織りなす、笑いあり涙ありのラブロマンス作品です。 ……と書くと聞こえはいいのですが、頭の中に人形が詰まっているルチアは超鈍感、そして一方のヴァンツァは奥手な上に呪われてるかと思うほどの間の悪さを有しています。 そんな二人により紡がれる物語は、もちろん一筋縄ではいきません。 ルチアに振り回されるヴァンツァの姿は、まるでコミカルな人形劇を見ているようです。 しかし、話の本質は不自由な王族だったり、権力にも絡むどろっとした陰謀だったりとなかなかにシリアス。 このシリアスとコメディのバランスは、まさに作者田井ノエルさんの真骨頂といえるでしょう。 異世界転生もチートも悪役令嬢もない、いわゆる“なろうテンプレ”ではない作品ですが、ぜひ多くの方に読んでいただきたい一作です。
「お天道様はちゃんとみている」 日本流にいえばこの言葉に集約されるでしょうか? この童話は、両親を亡くし叔母の家に引き取られた少女ルーツィンデが、決して恵まれたとは言えない環境に身をおきながらも、その優しき心で人々を助け、そしてまっすぐに育っていくお話です。 ルーツィンデが表現しているのは『利他』の精神。 苛酷な運命の中でも自分の出来ることを精一杯に行い、そして惜しみなく他人のために力を尽くすその姿は、とても美しく、そしてとても眩く感じられます。 そして、尽くすための“力”の源を失っても、彼女はなおもしっかりと自分のできることを見据え、努力を重ねていきます。 最後に幸せを得た彼女の姿からは、「まっすぐ生きる」ことの大切さ、そして「まっすぐな努力」を続けることへの勇気をもらうことが出来るでしょう。 これぞ童話という心温まる一作。ぜひ多くの方の目に留まることを願ってやみません。
本作品は、「小説家になろう」の数多くの作品の中でも群を抜いて異色の作品です。 “ついのべ”とはtwitter上で書かれる『140字以内の小説』のこと。 極めて限られた字数制限で物語を描くには、徹底的に言葉のムダをそぎ落としながら、かつ明快に場面を描かなければならないという非常にハイレベルな文章力が求められます(この難易度の高さは実際に一度試していただくときっと体感いただけます)。 そんな“ついのべ”を集めた本作品集に収載された作品はどれも傑作ばかり。 140字の中でしっかりと構成されたそれぞれの物語から、時に不意を打たれ、笑いが生まれ、涙を誘われます。 何よりすごいのは本作品が『一人の作者』により1年近くに渡って投稿された集大成であるということ。日々これだけの傑作を生み出せるその筆力、まさに脱帽です。 “140字の世界”に潜む奥深さを、ぜひ多くの方に感じて頂きたいと願っております
悪行の挙句に刺されること7回、悪役だった前世で殺される記憶を持った女の子が今度こそ幸せになりたいと健気にドタバタする物語です。 主人公のルイーゼやヒロイン(?)のエミール君はもちろん、周りを取り巻く個性的なキャラクターたち(ドM、ドM、オネェ、女装家、露出癖持ちと誰もが強烈……あれ?まともな人は?)も生き生きと動いております。 そんな魅力的なキャラクターが織りなす物語は、シリアスでシビアなもの。 突き抜けたキャラクターの個性から生み出されるコミカルさと、複雑に伏線が編み込まれたストーリーラインが織りなすシリアスさのバランスが極めて秀逸。 最後の最後まで目が離せないワクワクとした展開は、王道のラブロマンス冒険活劇としてきっと読者の皆様の目を離さないことでしょう。 一気読みでもきっとよろしゅうございます! かなりの長編ですが、ぜひ多くの方の目に留まっていただきたい作品です!!
最初に、この作品を一言で表すと『末永く爆発しろ』です。 それ以外に思い浮かびません。 それくらいの甘さてんこ盛りのこの作品。 しかしながら、表面上の甘さとは裏腹に、しっかりと骨太の軸が刺さっております。 舞台は中近世の欧州を思わせる世界の、とある王宮。 そこに生まれ育ったお転婆皇女様が、政略のため連れてこられた地方貴族と婚約結婚させられる羽目になるところから物語は始まります。 本作品の見どころは、主人公二人の心の動き。 お転婆だけど優秀でかわいい皇女様の成長&デレっぷりや、天然かと思いきやテライケメンの、でもやっぱりどこまでも天然な地方貴族の旦那様の活躍が、大いに読者の皆様を楽しませてくれることでしょう。 途中から始まるシリアスな展開から、最後の“様式美”まで、甘さもほろ苦さも全部ひっくるめてじっくりと堪能できるこの作品。 ブライダルシーズン真っ只中の梅雨のひと時に超お勧めです!
この世に恨みを抱えた強大な力を持った勇者が、再転生した100年後の世界で復讐の魔王と化し、世界を蹂躙する異世界“殺戮”ファンタジー作品。 殺戮系ファンタジーには様々なパターンがありますが、この作品では人々が本質的に抱える“闇”を見事に描いております。 この作品で注目すべきは、主人公を含めた個性的なキャラクターたちでしょう。 パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない的にいい感じで壊れたお姫様に、とあるキツ目の能力を得てしまった王子様、ヤンデレアイドルな悪魔っ子など、殺伐とした世界の中でキャラクターたちが生き生きと躍動しています。 殺戮される側の脇役の一人に至るまできちんと個性が伝わってくる描写力は、物語へとぐいっと引き込む力となり読者を楽しませてくれます。 周りの環境が主人公を“魔王”に変え、世界への復讐へと導くこの作品。 日常のストレス発散に、カタルシスを得たい方に超お勧めです。
私より先に死んでください ――。 最初にこの作品と出会った方は、おそらくこの刺激的なタイトルに目を引かれたのではないでしょうか? この僅か12文字の言葉に込められた想いを主軸として、夫に対する妻の想い、そして妻に対する夫の想いが甘く切ない物語として紡がれていきます。 内容はぜひ本編をご覧ください。 本作品のテーマとなっているのは、最愛のパートナーと結ばれた後いつかは必ず訪れる「別れ」。 この作品は、この難しいテーマに果敢に挑みながらも、大人の夫婦の深い愛情を見事に描ききっている、大変に完成度の高い作品となっています。 良作のショートストーリーを求めている方はもちろん、これまで“大人の作品”に触れてこなかった読者の皆様にもぜひ読んで頂きたい作品です。
北海道のとある街を舞台とした異能力者バトルファンタジー、ほのぼのタイトルとは裏腹にジャンプ王道作品ばりの「友情(恋愛?)、努力、勝利!」が描かれた熱い物語です。 ストーリーの主軸は、特殊な能力を持つ高校生や大人たちが『いたって真面目に』行う街おこしへの取り組み……というレベルではなく、チートクラスの能力を背景にほぼ独立国家を作ってしまいます(笑) 日本政府や謎の勢力を相手に回す壮大なストーリーラインは圧巻の一言。彼らとの“策謀の駆け引き”や“能力全開のド派手な戦闘”は読み手の心を実にワクワクさせます。 さらにそこへ、甘々なラブコメあり、強烈な飯テロあり、『人間の弱さ』を考えさせられるシリアス展開ありと、緩急自在の面白さてんこ盛りです。 個人的にはかつての名作「明稜帝 梧桐勢十郎」が思い出されました。 ぜひもっと注目を集めて欲しい作品です!
元将棋喫茶・現ゲーム喫茶を舞台に、ゲームを楽しむ高校生たちの日常を描いたほのぼの作品です。 この作品で出てくるゲームはボード・カード・ダイスといった誰もが名前は聞いたことがある“非電源”ゲーム。単なるルール紹介に留まることなく、ゲームの駆け引きや展開といった『本質的な面白さ』が存分に引き出されています。 しかも、ただ懐古的なだけではなく、新しい遊び方を提案しているのも大きなポイント。高さの概念を取り入れた3D将棋や、TCG風のデッキ構築型対戦将棋など、今風の“新しい遊び方”でさらに魅力を高めています。 “原点”と“進化”の合わせ技で、実際に手に取ってやってみたい!と思わせる作品です。 さらに、話の途中で出てくる魅惑的なお菓子たちの美味しそうな描写も秀逸。お茶とお菓子を楽しみながら遊ぶ姿は、とてもほっこりさせられます。 読んでいるだけで心を弾ませられる作品、おすすめです!
異世界へと全裸で転移した主人公吉田修太ことシューターが、文字通り裸一貫から成り上がっていく成長物語です。 全体としてはコメディタッチのこの作品ですが、芯となるストーリーラインは緻密に積み上げられており、シリアスあり、爽快なバトルアクションありといった怒涛の展開は続きが早く読みたい!と強く感じさせます。 その中でも、個人的な注目点はシューターの背景。凄腕バイト戦士だったという経歴設定はこの作品に独特の楽しいリズムを与えてくれております。 また、この難しい設定を存分に生かす様々な分野に対する作者の造詣の深さにも感服です。 毎日続きが楽しみになる作品。これからも続きを楽しみにお待ちしています!
異世界に転移したバーテンダーが生み出した“ポーション”をお酒と見立てたカクテル。これを主軸に、主人公と異世界の人たちとの交流をコミカルに描いた作品です。 バーを舞台にした話だと酒を絡めたしっとり系ヒューマンドラマに寄りがちですが、この作品は個性的なキャラクターたちが織りなす楽しくライトな味わい。 カクテルで例えると……すいません、そこまでカクテルに精通していませんでした(笑) 登場するカクテルはメジャーなものが多いですが、その分「カクテルとは何か?」がしっかりと理解できるように丁寧に描写されています。丁寧に描写されすぎて呑みたくなって辛いです(笑) また、異世界という舞台でポーションやカクテルを“魔法”に絡めるというアイデアは秀逸!異世界&グルメ作品の中でも、他に類を見ないテイストへと仕上がっています。 作者さんが生み出すオリジナル“カクテル”ストーリー。おすすめの逸品です。
転生前の記憶(ただし主に食べ物)が蘇り、自身が“乙女ゲーの悪役令嬢”であることに気づいた主人公が、将来の“BAD END”を回避するため、周りの人たちと縁を結びながら努力を続ける青春ラブコメ物語。 ―― こう書くと少女向けの王道作品といった感じもしますが、この作品はそれでは納まりません。 初っ端から頭の整理をしている最中に“それはともかく”と良い香りのするキッチンへ向かう主人公。 衣食住とカレー(娯楽)の保証された生活を求め、とある公務員職業を夢に描く主人公。 出前のラーメンを食べたいがばかりに“ご褒美”に策を弄する主人公。 ―― こうした主人公の“食い意地”が、なんとも愛らしい“等身大の令嬢像”となり、生き生きとした動きと、コミカルな笑いを演出しています。 出てくる料理も馴染み深い“庶民派グルメ”ばかり。お腹がすくこと請け合い。元気を出したい時にお勧めでです!
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