こんなに美しくて、怖くて、悲しくて、切なくて、温かくて、泣ける話は無いのではないだろうか。
このお話は、薬の魔物の解雇理由、継続理由の世界観の一部のお話として描かれている。勿論、解雇理由を読んでから本作を読むとまた深く感じ入ることは間違いないだろうが、単体の作品としてもとても完成度が高いとおすすめできる。
文章はどれも怖いほどに美しく、まるで目の前に情景が浮かび上がってくるような描写が素晴らしい。そしてサラという女性視点の話しながら、他の登場人物の心情までみごとに表現されている。そしてまれに挟まれる他者視点の物語が、それを完全に補完してくれる。
切なく、悲しく、そして美しいこの物語を是非たくさんの人に読んでほしい。きっと読後には“魔法”や“願い”という言葉から受ける印象は、すっかり変わってしまっていることだろうと思う。