レビューした作品一覧全9件
 繊細かつ重厚な文章が印象的な作品でした。ゆっくりと休日の空いた時間に腰を据えて向き合いたくなる読みごたえです。  さて、物語は異世界、そしてTS要素に百合も。  この時点で無条件に読みたくなる層は確実に存在するのではないでしょうか?  僕もそうでした(笑)  そして、この作品には紹介したいシーンが沢山あるのですが、やはりエルフの少女「サラ」の登場。この部分が非常に印象的でして。  正直、この「サラ」という子……「やべーやつ」です(笑)  詳細は避けますが、まずはこの子の登場を目指して読んでみませんか?  損はさせませんよ!  このサラと主人公クロエの出会いによって物語が動いていきます。個性豊かな登場人物とスリリングな展開と、見逃せない要素満載。  まだ第一章ですから読み始めるなら今!  少しでもピンとくる要素があったなら是非!
 まず物語を綴る言葉選びが良い。どこかジトっとしたものを感じる文章は読むだけで作品の世界にあっさり落とし込まれる。  二人の対比も素敵。 「モーツァルトとサリエリ」「アダムとイヴ」  作品を深める効果的な対比は人物像をガッチリと読み手に掴ませてくる。  そして、ラストにきちんと腑に落ちる展開を持ってくる。これが秀逸。  短編のため読了に時間はかからないけれど、読み終わったあとに少し尾を引く感じ。この余韻までが作品だと思う。  舌に味が残るものを食べた時みたいに、今日はもう他の作品には触れられないなって思った。  
 一章完結記念!  読むならこのタイミングだと思われます!  ある一つの単語を禁止ワードに設定すれば普通の異世界転生と読み間違えるのではないかと思ってしまうくらいに王道の展開。  そう――、  主人公は「ハンバーガー」である  ありがちな展開を連ねる物語。しかし、テンプレートな異世界転生の王道もハンバーガーが歩んだ途端、道は歪むし見える景色も大違い。 「っていうかそもそも食べ物であるハンバーガーに転生してどう話を進めるの……って何だかんだで進んでるーっ!?」  こんな違和感の消失に一度振り返ったが最後、もうきっと何が普通とか分からなくなるでしょうね。  読み進める内にハンバーガーを食べたくなるか、食べ物として認識できなくなるか……それは分かりませんが、少なくとも、  ハンバーガーは主人公足り得る。  この事実を見届けるだけでも十分価値のある作品ですよ!
語弊を恐れずに言うならば、この物語に決まった主人公はいない。 それは読み進めた上で感じたこの作品の魅力であり、作者の豊かな想像力を感じた故の率直な感想なのだと思う。 誰にとっても今立っている場所が世界の中心であるのだから、全ての者は主役になり得るのだ。 常に少年「ロト」を中心に語られてはいる。 しかし、ロトの運命に関わる者達全てに人生があり、だからこそ交錯して思いをぶつけたり、重ねていく彼らは「脇役」や「引き立て役」といった枠に留まらない。 各々が胸に灯した正義は、壮大な物語のピース。 欠くことはできない断片が交錯し、紡がれる運命。 誰もが中心であるからこそ、誰かを中心にはできず、だから波乱に満ちた世界に彼らは各々の物語を抱えて生きている。 ならば、そんな世界で読者は一人の傍観者。数多の心に寄り添い、見届けるべき物語の数こそ――この作品の主役と言えるだろう。
作品を一言で表したタイトルでしたので、見かけた時点で気になりました。 温かい雰囲気の中に経営、商売のリアリティが溶け込んだ物語で主人公がお客さんの要望に答え、試行錯誤する流れが個人的によかったです。 物語のボリュームとしてはちょっと控えめで、読み終わった時には物足りなさはあるかも知れません。 読み手側が「こういう要望のお客さんが来たり、こんなトラブルに巻き込まれたら……」などという想像の余地が残されているからでしょうかね。 読み終わってもし、このレビューのように感じられたら作者様に要望を出しましょう。 まだまだ彼女らの物語は描かれるべきだと個人的には思います!
普遍的な人間社会をベースとした世界観の中に、溶け込んだ天使という存在。そして、天使達に付随する親の概念。二人の天使にスポットライトを当て、描かれる本作の中で彼らが交錯して紐解かれるは一人の少女の真実。 空虚、がらんどうな存在として――或いは、茫漠として霧がくした謎めいた抽象性を伴った人間像をもって読者に語られる「佑」という少女。 そんな彼女の秘密がパズルのように組み上がり、そして描き出される真実とは――? 繊細かつ丁寧な心理描写は人物の心を巧みに映し出し、ふと立ち止まらせる言葉は読み手の心を共振させる鏡にもなる。ガラス細工にも似た壊れやすい儚さを伴って、緻密に織り込まれた「心」の物語が伝えるメッセージは貴方にもきっと、届くはず。 確信をもってここにお勧めする。
レビュー作品 天使の血管
作品情報
人間にとっての不幸、その頂点が死であるとは限らない。 恐怖、絶望からの解放を考えれば生きている事の方がずっと恐ろしいのだ――と、教訓めいたテーマを内包した学校の怪談的物語はシニカルに人間心理を切り出し、描き出す。 夢を追う人、諦めた人に、持たざる人。 それぞれに、多様な解釈を許す本作を読み進めれば、突きつけられる共感はまるで鏡。 共感して泣き、自己嫌悪の末の憎らしさ。 夏の夜に、ノゾミちゃん 語りたくなる読後感こそ、ホラーの神髄。
レビュー作品 ノゾミちゃん
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某有名RPGから伴う既視感――そこから少しのズレが生まれるだけでこれほど圧倒的な完成度の作品が生まれるのかと驚愕した本作。 腹筋崩壊は必至なため、手軽に読めるもののTPOをわきまえて読み進める必要のある、なかなかに憎らしい一作として是非ともお勧めしたい! さて、物語の筋書きを理解したゲームに、圧倒的な力を持って入り込む事が出来たら――貴方はどんな妄想を膨らませるだろう? メーカーが用意した舞台で遊ぶはずの「ゲーム」に一石を投じられるシチュエーションは、これほどにもワクワクするものなのか、と感じた衝撃を一人でも多くの人に共感してもらいたい。 かつて、一度でもコントローラーを握った事がある人間ならば必ずその思い出に寄り添い、擦れ違い、「共感」と「驚愕」――二つの反した感情と共に読む手が止まらなくなる。 そんな、読み手に「再会」と「邂逅」をもたらす、エンターテインメントの決定版!!
もしかすると本作を語る上での論点としてずれている、と作者を含めた数多の人々から指摘を受けるかも知れない。 しかし、数あるレビューの中の一つとして、筆者の圧倒的表現力について特筆したものがあってもいいと思っている。 「むらさきひめ」 この作品について、本レビューのタイトルにあるように「読み進める事が困難である」と書いたのは、筆者が等身大の少年少女にありがちな心境、境遇をあまりに巧み、緻密に描きすぎているからだ。 感涙し読む手は止まる。 誰しも経験がある。 だからこそ――共鳴して打ち震える。 そんな共感をもたらす描写。独特の緩急、リズムは実に洗練されていて、抵抗なく読者の中に入り込んで炸裂する。こういった感動に打ち震えるのが僕だけかどうかは、これから本作に触れる読者によって千差万別であろう。 しかし、個人的な感想を述べておく。 読み進める事が困難であった、と――。
レビュー作品 むらさきひめ
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