これは、『すべてとある人に捧げる詩』である。
では、ここに記されている《貴女》はいったい誰なのか?これが、この詩集を引き付ける最大の魅力である。詩の断片から少しずつ見えてくるが、雲を掴むかのように実像としては現れてこない。
彼女なのか、母なのか、娘なのか、それとも片思いの相手か?
いつの出来事なのか?
生きているのか、死んでいるのか?
はたまた、実在しているのかしていないのか?
最初はそんな疑問符とともに、読み進めていくが、日常の一ページを切り取り、二百文字程度の言葉で思いを綴っていく、橋本氏の繊細な言葉遣い、文字の息遣い、世界観に吸い込まれ、そんなことは些末なことの様に思えてしまう。
そう、これは詩という形式の、一つの恋愛物語である。
そして、徐々に見えてくる関係性。予想される結末。
現在、約90篇。100篇の詩が捧げられたとき、一体どんな結末を迎えるのでしょうか?