レビューした作品一覧全32件
実に読後感が爽やかでした。 Sランク剣士と、未熟な冒険者。 その2つの視点から一つの事件を描きつつ、登場人物の一人一人に厚みを持たせた物語は、展開を追うごとにキチンと謎が解けていく爽快な物でした。 その上、登場人物全員にきちんとした欠点を持たせることで、事件を解決していく過程が実にドラマティックになっていて、それぞれの足りない物をそれぞれの協力で補う姿は実に面白いものでした。 後日譚があればぜひ読みたい作品ですが、綺麗に終わっている作品なのでそれを望むのは蛇足になるのか?などと、色々と悩ましい思いを、今このレビューを書きながらしています。 素敵な作品だったと思います。 未読の方にお勧めしたくなる良作です。
大河ドラマ的な三国志だと、私は完結した本作を読み返して思った。 テーマはなんだろう?「人の個性とは」という着眼点からの「人間愛」だろうか? 許靖という後漢末期の政治家がいた。 三國志の時代を記録した歴史書ではその名声や篤実さを賞されているが、 逆に物語として庶民に愛された方の三国志では、仕えた主を見捨てて城から逃げ出した虚名の人として描かれた人物である。 この真逆と言っていい評価を持つ2人の許靖を本作では上手く融合し、その上で現代人が好感を持ちやすい「慧眼であるが争いごとを好まず、家族愛にあふれた」某局の大河ドラマの主役のごとき人物に仕上げている。 また本作は、三国志の予備知識に乏しくても十分に楽しめる作品である。が、知っていればより楽しめる点もまた大河ドラマ的だと感じる。 特に三國志に興味がおありの方は読んで損はないと思う。 どことなく吉川永青の戯史三國志に似た読後感が好みだ。
とある「らあめん屋」の店主が綴るブログの形式の本作。 このレビュー記入時点で72日目が更新されているが、 1日ごとに訪れる「明日はどうなっているんだろう?」という期待と不安が、地味に読者に効いてくる。 また、一気に過去ログを読むと、じわじわと店主の首が絞まるのと同じ感覚を、読者も味わうことになるだろう。 小説において、結論の決まった100日の経過を追うというシステムが、 これほどボディーブロー的な効果をもたらすとは正直思わなかったので、 最後まで気合を入れて読んでいきたい。 そして、100日目のタイトルの日。 結末は決まっているのだろうが、そこに少しでも「らあめんや店主」が救われる未来が待っていることを 期待したいと思う。
展開を知ってても「泣けた」ボーイミーツガール
投稿日:2018年12月17日 改稿日:2018年12月18日
現実世界で精神的に独りぼっちになってしまった主人公が、 灰色になってしまった世界で「不思議」で「無邪気」で「一途な」少女たちと冒険し、 現実世界を取り戻す為の「記憶のカケラ」集めに奮闘する物語。 多くを語ってしまうと読む楽しみが減っちゃうので、 ざっくりと抽象的なレビューにさせていただきますが、 私は2周読んで2周目もウルっと来るぐらい楽しませていただきました。 孤独だった少年は、「記憶のカケラ」集めの最後に何を得たのか。 そして少女たちには、それぞれどんな結末が待っているのか。 その答えは、是非ハンカチを準備してから確かめてみてください。
メディアで取り上げられる際に、 「自然の美しさ」「スローライフ」や「牧歌的側面」のみをクローズアップされがちな 『田舎』の現実的な側面をわかりやすく切り取った本作。 決して長閑なだけではない日本の過疎化地域の閉鎖的な景色と、 農業という「生活環境と職場環境が同一の業種」で、 隣人トラブルが起こったらどうなってしまうのか?という、 都会に住むと察しづらい事実を、 Iターンした家族を中心に鮮やかに描いている本作は、 最後まで一気に読んでしまいたくなる勢いがあって、とてもおススメです。 特に田舎暮らしに興味がある方には、是非読んでいただいた上で、 慎重に田舎暮らしを検討していただきたいと思います。
「国士無双」や「背水の陣」などの語源となった、 古代中国で実在の人物「韓信」を描いた本作は、 「小説家になろう」では珍しい、実に正しい時代小説である。 マニアックな個人的感想を言えば、宮城谷作品に似たものを感じる。 古典の主人公に上手く血肉が通っている印象、と言ってもいい。 ライト層の多い現在の「なろう」に、本作は最もそぐわない硬派な作品と言えるかもしれない。 作品中で主人公は、不遇の生まれから自分の生きる道を探して転々とし、 思わぬきっかけで大出世したかと思えば、第三者から見れば魔術的ともいえる大勝利を挙げ続け、 色々と葛藤しながら王になり、強大な敵を打ち倒す。 こんな風にあらすじをざっくり書くと、 妙に「なろう」的な感じの主人公に見える題材なのも、個人的にはちょっと面白い。 正統派の歴史小説がお好きな方には是非、お勧めしたい。
コメディ色豊かな登場人物達が、しっかり取り組む戦国IF戦記。
投稿日:2018年8月25日 改稿日:2018年8月25日
最近の歴史ジャンルで、個人的に最も「楽しく」読んでる一作です。 メジャーといわれるには今一つ逸話がなく、 だけどずっと織田信長の近くにいるからイベント事には事欠かない、それでいて最後が不遇、 そんな戦国武将「池田恒興」を転生IF戦記モノの主役に持ってくる絶妙なチョイス自体も凄いのですが、 主人公に「ニャーニャー」言わせたり、とにかく主人公が信長と女性に弱かったり、 上杉家が序盤からラスボスの風格を醸し出していたり、といった予想外の味付けをしたかと思えば、 数々の歴史イベントに「無理のない新解釈」をサラッとぶち込んで、 読者の予想をいい意味で裏切る展開を演出したり、 それでいて歴史ジャンルにありがちな「説明不足・説明過多」を感じさせなかったりと、 いろんな所が「巧いなぁ」と感じます。 歴史ジャンルに日頃興味がない方にも楽しめる作品だと思いますので、お気軽にどうぞ。
「作品に批判的な感想」を書き込むことはアリか、ナシか。 その葛藤が本作では描かれています。 その葛藤は同じ一読者として非常に共感できるのですが、 本作はその「回答を出すことをあきらめがちな問題」に対しての「自分なりの答え」を作品に追記していて、 その答えに筆者側への愛があるところがとても素晴らしいと思います。 たくさんの小説家の卵さんたちにぜひ読んでもらい、そして感想について考えてほしい一作です。 あと余談ですが、本作の感想欄も色々な人の意見が出ていて興味深かったです。 本文、追記、感想と、一粒で三度おいしいエッセイでした。
一言で言うと、なんかほっこりする。 そんな感じのエッセイです。 筆者さんの日常に突如現れた珍客である「ツバメの雛さま」をめぐる、 どこかユーモラスでありつつも大変な日々。 そして痛感する自然の過酷さと、某検索サイト様の偉大さ。 そして何よりも、読後には何となく空を見上げたくなるような、本作の愛らしい「ツバメの雛さま」の描かれ方が個人的にはツボでした。 ぜひ皆様にも読んでいただいて、梅雨の6月、雨空のひと時に、 晴れ間を待ち望むような気持ちになっていただければと思います。
今作に、ハリウッド超大作風のキャッチコピーをつけるなら、 「遂にその世界は、パンの海に沈んだ。」 みたいな感じになりそうな本作。 「パンとワインとフライパンで魔王討伐」という誰がどう見たって出オチっぽい設定で、 コメディ展開だけでなく、バトルシーンはもちろん、仲間との出会いや別れをも丁寧に描いているのは、実にお見事でした。 作品のテンポもよく、あっという間に読み終わった50万字だったように思います。 肩の力を抜いて読める痛快娯楽活劇として、ぜひ皆様にも読んでいただきたい一作です。
実体験者にしか書けない、簡潔にして救いの感じられないエッセイ。 未体験者にはおそらく正しく推察することはできない恐怖を本作品ではじわっと感じることが出来ます。 音もなく忍び寄る恐怖の白い悪魔。 楽観からの絶望。 勇気ではなく必然性から、敵わぬまでも強敵にスコップ一本で立ち向かった勇者という名の筆者の嘆き。 北方民の雄々しくも切実な戦いの記録をぜひご覧あれ。
レビューとして紹介するにあたり、とりあえず最初に書いておかなければならないことは、 『この作品は通勤・通学中に読むな』です。 この作品は全力であなたの涙腺を襲います。 基本的に1話辺り前後編の2部構成で非常に読みやすくなっているのですが、 その1話1話の破壊力たるや相当なもので、恥ずかしながら私もあっさりやられました。 本作では定食屋を舞台に、キャベツの千切りも出来ず、妹に呆れられる有様だった主人公が、 神頼みで料理の上達などを願う度に、料理に込もった想いや思い出に触れ、 少しずつ成長していく様が丁寧に描かれています。 もちろん他の「なろう」料理モノ同様、料理は毎回美味しそうに描かれていますし、 読後には登場したメニューを毎回食べたくはなるのですが、 料理に込められた想いに触れた満足感を毎回味わうことができるのは、本作ならではないでしょうか。 皆様もどうぞ、めしあがれ。
レビュー作品 神様の定食屋
作品情報
ひょんなことから、現代社会に隠れ潜む魔術師たちの世界に足を踏み入れ、 闘争と修行に明け暮れる羽目になってしまった男子高校生の物語。 ……とだけ書くと誤解を招きそうですが、 主人公は巻き込まれ物語にありがちな愚痴っぽい人物ではなく、 少年漫画の主人公のようなカラッとした性格でとても好感が持ちやすく、 望まず入った魔術師の世界で頻繁に訪れるトラブルにも実に前向きに立ち向かっていきます。 魔術師としての修行やバトルも実に武術的かつ、ファンタジー漫画的なので、 格闘ゲームや少年漫画が好きな方にはおススメです。 作品としても毎日更新、すぐに修正される誤字と、非常に読者にやさしく読みやすい仕様ですので、 ちょっと長めの作品ですがお時間のある方は是非気軽に読んでいただければと思います。 個人的にも毎日更新を楽しみにしている作品です。
おそろしくレビュータイトルがグチャっとなりました、スイマセン……。 つぶれかけの食堂「陽だまり亭」で、詐欺師オオバヤシロが「嘘がつけない」制約をものともせず、 パッ!と口八丁で知的にさまざまな問題を解決していく爽快さが魅力的な本作ですが、 いろんな登場人物たちが本編や大量のSSで丁寧に描かれていることも、また特徴的な作品です。 おどろくほど長文の後書きやSSが毎回読める本作の中で、 つぎつぎと主人公の周りに登場するヒロイン達は、単に章ごとに問題を運んでくる存在ではなく、 パロディ回や日常回の度に深く掘り下げられていたり、後に物語のキーパーソンになったりと、 いろいろな場面で生き生きと描かれていますので、そちらにも是非注目していただきたい作品です。 乳についての主人公と作者のこだわりは……、そっとしておきましょう。
戦国+転生+ほのぼの
投稿日:2017年10月14日
戦国時代に転生する話はそう少なくもないですが、 本作はそんな作品たちの中でも突出して「ほのぼの」しているのが特徴。 史実では若死にした織田信長の兄弟に転生した主人公は、 転生モノらしく知識チートをしながら生きていくのですが、 その生きざまが妙な感じに戦国時代の血生臭さから乖離していて、 主人公が作品中では実に愛らしく描かれているのが面白いです。 ちなみに私の勝手な本作の主人公のイメージは 「シェパードやドーベルマンばかりが走り回るドッグランの中で、妙に堂々としてる豆柴」だったりします。 ……と、話が多少脱線しましたが、 史実をキチンと押さえた戦国モノなのにどこかコミカルな本作。 歴史モノがお好きな方も、そうでない方も楽しめる良作ではないかと思います。
読み専の作者さんが「なろう」のオススメ作品を、1話1作品ずつ紹介文付きでお届けしてくださる本作。 ものすごく簡単に言うと、超便利です。 本作の作者さんが書かれる紹介文は、とてもスッキリと纏まっているうえに、 なろうレビューにたまにあるネタバレ含みや、作品への批判なども一切ありません。 また点数による細かい評価で、作品を端的に表すこともされており、 こちらも良作を掘り起こす事にあまり時間を使いたくない私のような怠慢な読み専にとっては、 非常にありがたい仕様になっています。 ブックマークして時々覗くだけで、良作に巡り合う機会が増えるのではないかと思いますので、 とりあえず読む作品が無くなって困った経験がおありの方は、一度ブックマークされるのをオススメします。
目から鱗……といいますか。 非常に簡潔な短編なのですが、非常に読んでいて面白かった作品です。 実に馬鹿馬鹿しく、それでいて最後の2行が妙に心に響きます。 レビューで内容に触れてしまうと、本作の面白みが減る気がしますので、あえてここでは触れませんが、 選挙管理官の苦悩と悲哀、現代日本の縮図を見るような内容になっています。 是非、皆さんに読んでいただいて、その上で皆さんが選挙に行った際には、 選挙管理官の方を優しい目で見てあげてもらえるといいかなと思います。
「母親の手料理」という誰もが感情移入しやすい題材で、ただ安直に懐かしさを語るのではなく、 そこにほんの少しのSF要素を加えることで、過ぎゆく時間の無常さや、 相手を思いやるが故のすれ違いから生まれる切なさなどの、複雑な味付けがなされている作品。 短い文章で簡潔にまとまった本作に、後日談を求めるのは蛇足なのでしょうが、 登場人物達のその後が、お互いに幸せだったと思えるものになってほしいと思わされた作品でもありました。 新社会人や、家族と離れて暮らしている方などには、とくに読んで何か感じていただきたいと思います。
超能力バトル物の白眉、わかりにくいのはタイトルの読みぐらい
投稿日:2017年5月22日 改稿日:2018年12月18日
超能力が認知されている現代風世界を舞台に、 少年少女能力者達の活躍と成長を描いた作品。 主人公は、様々なトラブルに巻き込まれるのですが、 持っている能力は、汎用性こそ多少あるもののスペック的には弱く、 そこを個性的な仲間の能力や、知識や作戦で補いながら乗り切っていきます。 その様子は爽快でバラエティに富んでおり、読者を飽きさせません。 また、本編完結済でボリュームもかなりある作品なのですが、 話数がきちんと区切られていますので、読みやすい作りになっています。 もっとも、私は一気に読み進めて中断しどころを見失った記憶がありますが……。 なにはともあれ、完結済作品をまとめ読みされたい方にはオススメの一作です。 余談ですが、本作のタイトルの読みは第一話冒頭に記述がありますので、ここではあえて触れません。 こう書いておけば、より読者増に貢献できるでしょうか……?
レビュー作品 J/53
作品情報
新しく始めるVRMMO内の職業を、モンスターを使役するテイマーにし、 最初から手に入るモンスターを強化しまくって、スタートダッシュを目論んだ主人公。 ところが、手に入れたモンスターは可愛くて優秀なんだけど、戦闘には全く不向きな生産型。 主人公は戦闘をモンスターに頼る気だったんで、自分自身の能力も低めで、 結果、初期の敵にも大苦戦のありさま。 さて、どうする? ……というところから始まる物語は、激しいバトルや進行速度の早さとは全く縁のない感じで、 実にのんびり進んでいくのですが、 喋らないモンスター達と主人公の触れ合いや、ゲーム内でのキャラクター達との会話風景は、 とても楽し気に描かれていて、読者を飽きさせません。 無双もしませんし、ヒロインが大量発生したりもしない本作ですが、 愛らしいモンスター達と運に愛された主人公の生活をあなたも覗いてみませんか?
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