レビューした作品一覧全4件
読むんじゃなかった
投稿日:2019年4月3日
そんな気分になるホラー掌編集です。 物語は著者の回想形式で綴られます。語られる子供時代は、私たちの記憶とも重なるどこにでもあるような一場面。口調は淡々として事件にも派手さはありません。怨霊も血飛沫もありません。ただ、日常のなかの違和感や異物が嫌なリアリティをもってひたひたと迫ってくるのです。目に見えるように。目の前にあったように。 「あれ、私もこんなことがあったような」 「そういえばもしかしたらあれは」 …………記憶の境界線を侵食するうすら寒さ。 読むんじゃなかった。特に「誰の足?」、とても怖かったです。
近未来コメディで、すらすら読めました。 ブラコン気味な妹ちゃんもやっぱり可愛らしいです。 ですが、「ごめん無理マジでごめん」と思わず謝るぐらいに怖かったです。読み終わるなりブラウザを閉じ、ひと呼吸おいてブックマークするために再立ちあげしました。 わかってた……わかってたのに……!! 新崎氏のホラーは、独特の余韻があるように感じています。 オチも謎解きもあるのに、「あー、怖かったー!」とすっきり現実に戻らせてくれないような――、怖さの持っていき場がないまま、喉元からみぞおちになにかが残りつづけるような――。 後味の悪さのとも違う、この奇妙な感覚の正体を知りたいと思っています。
夢の国から永遠に
投稿日:2018年7月28日
タイトル以上の表題が思いつきませんでした。 八月の眩い陽光の下、妹思いの兄と、病弱で怖い話が大好きで、そして「お兄ちゃん」を大好きな妹が、誰もいない廃園となった遊園地を探検します。 『裏野ドリームランドの7不思議!廃園した遊園地に潜む怪異!』を目当てに。 都市伝説、廃墟、レトロ好きにはわくわくするテーマでした。ミラーハウス、コーヒーカップ……ノスタルジックな舞台に、兄妹というキャラクターがしっくりはまるのです。 妹ちゃんは結構大胆です。くっついてきて、あてててきて、発言もきわどい。でも、なんとなく、彼女の行動には理由があるような気がしていたのです。なにか理由があって、彼女はふだんより大胆に振るまっているのでは…………。 8000字近くが、一気に読めてしまいました。 夏の夕暮れにお勧めしたい作品です。
名前が左右対称のかたへの呪い
投稿日:2018年7月24日
「鏡に映っても名前が変わらない。そういう奴の鏡像は、特殊になる。  たまに鏡から出られるようになる。同格の力が備わるんだ」 もし、私に子供の知りあいがいたら、この話の冒頭部を語って聞かせたい。 その子の学校にこの都市伝説の種を撒きたい。 そして、世の中の名前が左右対称のひとびとに、鏡を覗きこませたい。 大人になってからも、救急車のサイレンに指が動きそうになるような、 夜に合わせ鏡をすると腹の底が疼くような――小さな棘を残したい。 そんな、ディティールのもつ奇妙な引力を強調したい小説です。 また、文章表現も魅力的でした。 語り口は抑制されて硬く、意識して過度な描写を控えているようにみえました。 ドライな筆致なまま、ああいった場面を描写されて――ぞくぞくしました。
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