レビューした作品一覧全2件
美しく優しい文体に魅了され、一気読みさせていただきました。 下町や長屋の描写も繊細で、読んでいる時は勿論、読後もしばらく、自分がまるでその世界で生活しているような錯覚を覚えるほどでした。 主人公の雪は、とにかく不幸な生い立ちを持つ少女です。そんな彼女がある日、手傷を負った浪人と出会うことで運命が開かれる。 この雪という少女にかなり感情移入しました。その不幸な過去によって形成された、自分に全く自信を持てない性格にも納得出来ました。 だからこそ彼女には幸せになって欲しい、そう願わずにはいられませんでした。 読み終えた時、「終わってしまった」という強烈なロスに襲われました。 このロスを埋めるには次の作品を読むしかない。そう思い、作者様の次作品をブクマさせていただきました。 しばらく夏野さんワールドにはまりそうです。 恐らく今年一番心を動かされた一冊、是非お手に取ってみてください。
生まれた時に1~999までのナンバーを刻印された者がいる近未来。彼らは異能の力を持ち、将来を約束されたエリートである。 数字がテーマということもあり、少し苦手なジャンルだと思ってましたが、冒頭から一気に引き込まれました。 物語の世界観が簡潔かつ丁寧に描写されていて、どういうスタンスでこの作品を読んでいけばいいのかという指標を示してもらい、安心して次へと進んでいけます。 一節一節が熟成された美しい日本語で紡がれていて、展開が気になると同時に、もう一度読み返したいとの思いが強くなっていきます。情景描写も繊細で、目を瞑ると色鮮やかに映し出され、その世界に魅了されている自分を感じます。 作中にあるイラストも優しいタッチで、自分の中にあるイメージとぴったりだったことに驚きました。 異能バトル物で血なまぐさいシーンがあるにも関わらず、読後に不思議な清爽感を感じる九藤ワールド、是非ご一読下さい。