レビューした作品一覧全1件
タイトル、あらすじで強調されているように、リアリズム溢れる学園サスペンスです。 『イジメ』が横行する教室という、陰鬱かつ普遍的な舞台。ここだけですと、リアルで生臭い『だけ』のブンガク作品かと思われそうですが、さにあらず。 イジメの恐怖と屈辱に心が折れる寸前で、大事な人のために立ち上がる主人公はまさに、『かつてイジメに屈した/見て見ぬふりした』読者が『こうありたい』と願った姿。 こうした主人公は確かにフィクションでしかありえないのですが、『等身大の高校生』という設定を忠実に護っているため嫌味はありません。このバランスは実に素晴らしい。 そんな主人公が最後に辿り着いた真実は、やっぱり現実でしかありませんでした。 しかし読者(私)の心に残るのは『所詮現実なんてこんなもん』という虚しさ……だけではなく、主人公の戦いそのものから得た感動でした。 がっつり心に喝を入れたい方におすすめします。