レビューした作品一覧全12件
『5分で読めるブラックユーモア』は、タイトル通りサクッと読めるショートショート集です。 どんなティストのお話かは、ページの最初に「苦味」「酸味」「フルーティーさ」など、ブラックコーヒーの味に例えて表記してくれています。 2023年2月現在、私が1番好きなお話「20231231」は酸味とスパイシーが効いたお話でした。私事になりますが酸味の効いたコーヒーが好物なので、ちょっと嬉しい。 そうそうコーヒーといえば、コーヒー豆はマメ科じゃなくて、サクランボのような果実の種なんですよね。だからコーヒーは、ものによってはフルーティーな酸味が味わえる。 なにが言いたいかというと、慣れた人なら「苦い」だけでなく「ほのかな甘味」「コク」とも表せるようなお話もあり、バラエティに富んでいます。 イチオシは「ブラッククリスマス」「本日到着予定」そして「20231231」!
異世界×流行スイーツ。旅気分でめしあがれ
投稿日:2021年8月30日 改稿日:2021年8月31日
2021年現在、流行のお菓子といえば、マリトッツォですね。 パン生地にたっぷりのクリーム。イタリアらしい茶目っ気と美味しさがギュッとつまった、魅力あるスイーツです。さてこのマリトッツオ、レビューしている『王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~』の世界でも、大流行しています。 主人公の女性は連日勤務のさなか、騎士団のウィリアムからしどろもどろデートに誘われ、一緒にマリトッツオを食べます。欧州風情の城下町、凛々しい騎士さま、さらにカフェスイーツと、この恋愛短編は素敵なものがたっぷり。読むと幸せな気持ちになれますよ。 それから激務の主人公に共感する女性も多いはず。仕事疲れしているあなた、甘い物語を読んで、リフレッシュしませんか。こちらは香月よう子さま主催の「夏の夜の恋物語企画」参加作品です。
時計塔の鐘が心地よい、ファンタジー短編。
投稿日:2021年1月24日 改稿日:2021年1月24日
『マルコと12人の精霊』は、時間が止まった異国を舞台にした、ファンタジー短編。 ジュニア文庫や図書室のファンタジー棚を愛読した方に、おすすめしたい一作です。 なぜ物語上で時間が止まるのかというと、それは時計塔にいる時の精霊たちが、ストライキを起こしたから。主人公のマルコは時をもとに戻すため、町をかけまわり、精霊たちを説得していきます。 時の精霊は町のどこにひそんでいるのか。マルコの祖父の故郷とは――と、ちょっとした謎解きもあり、読み手をひきつける構成です。ラストはぐっと感動的。 そして物語の元凶ともいえる精霊たちが、みんな個性的でかわいらしい! 読んでいて心が踊ります。また、異国情緒ある町の描写も、とても魅力的です。 寒い冬にぴったりな心温まる童話を、どうぞお楽しみください。
『魔女の使いは戦わない』は、ボーイ・ミーツ・ガールからはじまるファンタジー小説です。2019年12月現在、ほぼ毎日更新で第3章連載中。 舞台は50年前に天変地異があった魔法の世界。主人公の少年が破壊兵器『アレクシス』を追って、徐々に世界の秘密を知っていく――という展開です。 卓越した状況描写とリズミカルなセリフ回し。緩急自在な文章が、物語を巧みに構築しています。 そして登場人物がいきいきと描かれているのも、実に魅力的です。 主人公の少年はまっすぐで応援したくなるキャラクター。おまけに作中で説明が続くと「それどういうことだよ?」と、理解が遅い読者の代弁もしてくれます。彼がいるので『実はファンタジーのカタカナが頭に入ってこないデス』という私のような方でも、安心して読めるかと。 『魔女の使いは戦わない』は、少年少女や謎を追う冒険が好きな方へ、おすすめしたいファンタジーです。年の瀬にぜひ!
秋の夜長に読みたい、美しい恋愛ファンタジー
投稿日:2019年9月22日 改稿日:2019年9月23日
『出会いの窓は南の塔に』は姫君エセルと、彼女の危機を助けた剣士ラキスを巡る、恋愛ファンタジーです。 約7万6千字で完結しており、2019年現在は続編『光と闇の間にありて』が連載中です。 主人公のエセルは高貴な身分ながらも、目的のためには農作業ブーツを履きこなす、たくましい女性です。 はねっかえりなエセルと、少年の面を隠したラキスの恋模様。ふたりの関係は時に辛く、時にほほえましくて、応援したくなります。 それから情景描写が素晴らしく、ひとつひとつの場面が絵で浮かびます。 クライマックスはとても叙情的で、心震えるものでした。 『出会いの窓は南の塔に』は秋の読書に、おすすめしたい物語です。 中世の景色に憧れる方、逆境をはね返す恋がお好きな方、どうぞお読みください。
味の違いがわからないゴミに食われたくない、という気持ち
投稿日:2019年8月7日 改稿日:2019年8月8日
なんで就職できないんだろう、とか なんで赤文字通知が来ないんだろう、とか そんな気持ちになるときは「こんなに努力したのに」「もっと俺を見ろ!」という気持ちも同時に、沸き上がってこないだろうか。 「ぶどうの気持ち」はそんな、隠しておきたい感情を赤裸々に、ユーモアたっぷりに、どこか淫靡に書いた700文字少しの掌編だ。主人公はひと粒のぶどう。 この作品が心に残ると、ぶどうを食べるときに、きちんと手を洗って、なるべく優雅に食べてやりたくなる。なので、昨年十月に投稿された作品であるが、ぶどうが出回っている今の季節にレビューを書くことにした。 作者さんはそう作品を書かれていないし、もうなろうさんを覗いていないかもしれないけれど。 執筆時期は人生の節目であったと思うので、レビューを書くことで「One of themではない」とお伝えしたい。私は皮つきぶどうを食べるたびに、この作品を思い出す。
『お隣さん』の主人公・愛華は、大学進学をきっかけにひとり暮らしをはじめた、若い女性です。 彼女は冒頭、見知らぬ男に襲われそうになります。このシーン……とても怖いです。未遂なのにおぞましく、愛華が感じた恐怖が、まざまざと頭に浮かびます。 しかし事が未遂に終わり、309号室の『お隣さん』である女性が出たあとは、ほほえましい場面が続きます。 また、事件処理や経過の描写が丁寧で、現実味があるので、読者も安心して読めます。 そしてホラージャンルに大切な、肝が冷える『転』も用意されているのですが……『結』は心温まるものでした。現代社会に欠けてしまったものを届けてくれるような、穏やかな怪奇が、物語最大の魅力です。 ジャンルはホラーですが、現代ファンタジーと称せるくらいのホラーです。ほんと冒頭の犯罪未遂シーンが一番怖い。 すこしだけヒヤリとしたいかた、優しい怪奇に会いたいかたに、おすすめの短編です。
レビュー作品 お隣さん
作品情報
失っているひとへ
投稿日:2019年6月24日
『だから 神様は私に「雨」という涙をくれた』は、梅雨の今、挫折している人に読んでもらいたい一遍です。 作者さまも、あらすじに「挫折している人に読んでいただきたい」と書いておられました。 この詩では失望と、そしてひとしずくの希望が、熱意をもって描かれています。 やや冗長だと思う人もいるかもしれない、それくらいの長さの詩です。物語性があります。 失望の中にあっても、自然界からの優しさを感じられる主人公。私はそんなところに胸を打たれました。 投稿されたのは6月末。じとじとしていて、なにかと落ち込みやすい季節です。 元気がないひとに届くことを願い、このレビューを終わらせていただきます。
メルヘン&コント。ロボと人間のあいだのズレが肝。
投稿日:2019年1月20日 改稿日:2019年1月20日
コミュニケーションとは得てして難しい。 「え。そんなの。人と話すのが苦手なお前だけだよ」などと言わず、どうか話を聞いてほしい。 このレビューだけでいい。 『炬燵の中は機械の国』は題名どおり、主人公は機械の国に行く。そしてそこで速攻、意思疎通がきかない連中に囲まれて、いらないもてなしをうける。 この連中こそ物語の副主人公、ロボットたちだ。このロボットたち、人間が大好きなのである。 ……だがやること成すことズレている。このやりとりが読んでいて面白い。ウケる。主人公には悪いが。 そしてこの、人間に喜んでもらおうとする機械たちは、ズレていても愛らしい。 コミュニケーションとは得てして難しい。 だが案外、この憎めない機械たちのように。ズレていても微笑ましく思えてもらえるかもしれない……。 つい心情が漏れてしまったが。 笑いたい方に、読んでほしい短編童話。ロボ、不条理、少年好きはぜひ!
この物語ではトイレに立て籠もった犯人と、その犯人を完全包囲した警察によるやりとりが、終始、繰り広げられています。 登場人物たちは全員いたって真剣。その分、読んでる側は笑いが止まりません。 この世界の警察官は、普段から何をしているんだろう……。 タイトル、あらすじ紹介、冒頭。 情報開示がスムーズで丁寧です。全自動水洗のごとき流れです。 おかげで一行目から 「いやいやいや。立て籠もりの理由ってアレだろ、アレ」 とツッコミたくて、仕方ありませんでした。 警察モノといえばコレだね! という台詞も、ばんばん出てきます。期待を裏切りません。 一行目でクスっときたら、終わりまで楽しくて一気に読めますよ。あらすじから読むことを、オススメします。
井戸の竜、その吸引力
投稿日:2018年8月12日 改稿日:2018年8月12日
田園、井戸、水遊びする子供達などが、情景豊かに描かれています。そしてのどかな日常にスッと入り込んでくる『竜』が、とても魅力的です。 この作品の登録ジャンルは、ホラーなのですが、竜が好きな方や、日本童話が好きな方なども、楽しめると思います。 『あまりホラーは読まないんだよね』という方にもオススメしたく、レビューを書きました。 日本古来の風習も存分に出てきますので、和ホラーの魅力もばっちりです。 私は作中に出てくる歌が好きなのですが、ネタバレになるので割愛します。どうぞ本編で。
と、タイトルで宣伝しないともったいないくらい「短い」ことが魅力的なssです。 もう気になったらレビュー閉じて、読んでほしい。 なんといっても503文字。すごいすごい。   たんたんたんと教えてくれるので、 ふんふん。ああそこはそうだったの、と読めて。 締めの一文に「だよね」と言ってあげたい、リナちゃん? のお話。ふわふわ、こわい。
レビュー作品 夢と同棲。
作品情報