レビューした作品一覧全509件
帯も襷も使いよう
投稿日:2024年5月1日
関係悪いハルぺリア王国とサングレール聖王国の間にある小さな村に生まれた主人公モングレル。 国としては険悪でも民間レベルでの交流は多少あって。 モングレルの両親はまさに別の国の出身だったみたいですが……戦争勃発によって、亡き人に。 その後いろいろあって、冒険者になったモングレルはいくつかの秘密を持っていた。 転生者であること。画期的な発明に通じる現代知識を持っていること。強力なスキルを持っている事。 けれど彼はそれらを秘匿し……冒険者としても実力がありつつも、長年ブロンズランクに留まっていた。 それは、ハーフであることが明らかな彼を軽視する輩もいて、変に注目されたくないといった理由もありますが。 自分の楽しさを追及していくために、欲張りすぎない彼の生き方が楽しい作品。
自己研鑽の果てに見た境地とは
投稿日:2023年8月27日
大陸中央にある巨大迷宮を核として発展した迷宮街。 富と名声を求めて多くの挑戦者が迷宮に挑む中、珍しくソロで活動していたのが主人公のギデアだった。 単独で迷宮深部に挑めるはずが無い、と他の探索者からは『ホラ吹き』とすら呼ばれていましたが……。 ギデアはそんな風評には目もくれず進み続け、ついに前人未到の三十一層に到達。 しかし、一つの偉業を達成したことで彼は軽く燃え尽きてしまって……活動ペースを抑える半引退制度を申請。 そして余暇の時間を作ったギデアは、これまで足を運んだことのない場所を訪れ、良い食事をしたり、新しい出会いを経てさらに成長していくことになります。 武骨で派手さはないですが、だからこそ面白い。短くまとまっている良作です。
辿り着いた彼の居場所
投稿日:2023年8月27日
兄姉の結婚などで目出度いながらも出費が続き、家を出る決意をした9歳の少年キリ。 村に来ていた行商人を頼って街で稼ぎ口を見つけようとしたものの……奴隷商に売られそうになって。 文字が読めるキリは直前でそれに気付いて逃走。 冒険者ギルドに登録し、自らの食い扶持を稼ごうとします。 しかしギルドに登録できるのは12歳からとなっていて……彼は年齢を誤魔化して申請したわけです。 キリは知識も経験も乏しいために失敗することもありますが、生来の性格としては真面目な方で。 冒険者は自己責任という風潮があり、先輩たちにも変人が多いんですが……。 そんな彼ら彼女らからの教えを受けて、意欲的に活動して少しずつ成長していくキリを見守りたくなる作品ですね。 どんな障害でも打ち破る勇者の剣が無くても、泥臭かろうと道を切り開くことは出来ると証明してくれます。
認めて、認められて
投稿日:2023年8月27日
TS転生者のクロエは、前世で見たチート転生者のようなあり方ではなく、一部の人だけに良さが通じるいぶし銀な「自分だけが良さを知ってる」冒険者になりたいと願った。 そこで、受ける人の少ない不人気依頼を片付けてギルドからの覚えを良くしようとしたりしていくわけですが。 あまりにも堅実に実績を重ねてきたことで、クロエの予想以上に評価が高まってしまって。 後輩冒険者と交流が増えていく過程でどんどんとファンが増えていってるので、クロエの望みからは少しずつズレている感もありますが。 そこに悪意はなく、慕われてきた結果ではあるのである意味では当然の報酬と言えるでしょう。 彼女の良さを知っている人の輪が少しずつ広がっていくのが面白いです。
クロゥレン子爵家の次男、フェリス・クロゥレンに転生した主人公。 兄と姉がそれぞれ武術と魔術において、世界で五指に入る実力者として名高く、それに届かぬフェリスは侮られがちだった。 けれどその実、実戦形式で訓練してみれば兄姉に本気を出させる腕を持っていて。 兄姉を信頼していることもあってフェリスは領地を離れ、職人として自立しようとしますが……。 人生はままならぬもの、とでも言いますか。めぐり合わせによって、様々なトラブルに遭遇していくことになってしまって。 貴族として生まれたものとしての義務、職人としての矜持。そういった軸を持ち合わせたフェリスの在り方は好ましいですね。 ……だからこそ、そんなフェリスが彼自身に責のない問題に対峙していく羽目になるのは思う所がありますが。 逃げずに超えていくからこそ、フェリス・クロゥレンなんだろうなという信頼もあります。まだ途上の彼が行き着く先が気になる作品。
一歩ずつ絶望を超えて
投稿日:2023年8月27日
40年前に滅亡したルデク王国出身の主人公、ロア。 平文官であった彼は戦乱の火から奇跡的に生き残り……流浪の果てに命を落とした。 しかし気が付いたときには、滅びの42年前の時点に若返っていて。 そんな少年ロアが、未来の知識や培ってきた経験を駆使して、滅亡を回避するために行動する物語。 いかに知識があっても、ロア自身に地位と信頼というものが無く、救えないこともある。 ロアの行動によって歴史が変化し、読み解けないことだってある。 そもそもが戦乱の最中であるために、どうしたって血は流れていく。 辛く厳しい戦いにも負けずに、悪夢を回避するために努力していくロアの姿が実に格好良かったです。 そんな彼に影響されて、仲間が増えていくのも良かったですね。本編完結済みですので、ぜひとも最後まで見届けてください。
新世界を駆けぬけろ
投稿日:2023年8月27日
世界初のVRMMOゲーム『アルカディア』が発売された世界。 あまりにも革新的な仮想世界が生み出されたことで、世界の常識すら塗り替えられた。 唯一の難点は、ゲームと同じ名前を与えられたプレイ用の機体がその性能に恥じない三百万という値段を誇ったこと。 その初期費用の高さゆえに主人公は初期からプレイできず……。 高校生活の全てをバイトと、周囲を納得させる学力を確保するための勉強に注いだ。 『アルカディア』の情報を絶つため各種情報媒体を絶つ徹底っぷりで、それまでの三年を取り返すかのようにテンション高くゲームを楽しんでいく主人公が、新たな境地を発見していく物語ですね。 変革著しい世界の新星となりうる主人公から、目が離せませ
ありえたかもしれない居場所
投稿日:2023年6月15日
書籍化記念として書かれた『不遇皇子は天才錬金術師』の番外編。 本編で描かれていないエピソードの補完ではなく、完全にIFの世界線について描かれています。 もし別の選択をしていたら、果たしてアーシャはどう動いたのか。 立ち位置が変わることで、アーシャに対しての反応も変わっていきますし、本編では見えなかった表情などが見えて面白いですね。 IFルートだからこそ救われた人もいるし、踏み外してしまった人もいる。 そのままならなさもまた番外編ならではの味わいで、別ルートも見てみたいな、と思いました。
気付けば魔法のある世界の帝国の第一皇子、アーシャとして生まれ変わっていた主人公。 前世は家族に恵まれず、今世では父は可愛がってくれるが、生まれの問題などもあって政治的には隔離されていた。 けれど、アーシャは前世の影響もあり思考が庶民的で……皇帝の座を目指すことはせず、弟妹と仲良くしたいと考えていた。 閉ざされた離宮で出来る趣味として錬金術に打ち込む中で様々な発見をしますが、帝位争いの火種になりそうなネタは秘匿したり、皇帝の功績とするよう相談したり。 政敵からはどこまでも警戒されて、妨害工作も入ったりしますが。アーシャの功績を家族は評価してくれて、穏やかな時間を過ごせているのが良いですね。 アーシャはどこに行ってもやっていけそうな安心感がありますが、課題が多いのも確かなので、彼がどんな未来に至るのかを見守りたい。
紡がれた因縁が未来を築く
投稿日:2023年6月4日
魔獣という怪物が現れ、それに対抗する神様に選抜された魔法少女が存在する世界。 主人公はある日魔獣に襲われ命を失いかけていたところを、神様に救われて。 その対価として彼は魔法少女「葉隠桜」としての活動を行うことになります。 男子高校生「七瀬鶫」との二重生活を送る中で、様々な出会いと経験を積み、避けられぬ過去の因縁について知っていく物語ですね。 魔法少女たちにも神様にも、願いや思惑があってそれらが交差した結末がどうなるのか、見守りたい。
発想の翼を広げ改革を
投稿日:2023年6月4日
所持スキルが『錬金術』だけだったために、戦闘スキルを重視する父から公爵家を追われることになった主人公のトール。 そのまま魔王領へと生贄の如く差し出されてしまったわけですが……そのことでスキルが『創造錬金術』に覚醒。 そのスキルを活用し、異世界の勇者が持ち込んだ『通販カタログ』のアイテムを作っていくことになるわけですが。 カタログらしい少し誇張された謳い文句をストレートに受け取り、マジックアイテムとして成立させてしまうトールの発想力がコミカルで面白い作品ですね。
その技術は道を開く灯
投稿日:2023年6月4日
ダンジョン生まれの魔物、ニア。 彼は鳥型のフォニアという種族で、人類からも歌声が綺麗なだけの無害な魔物と認識されていた。 ある時小さな村で錬金術に魅了されたニアは人化の術を覚え、寂れた街で錬金術師として活動を行っていくことに。 一人で生きてきた魔物であるために、魔物にも人間にも味方意識を持っていなかったニアですが……。 拠点の近くにダンジョンが出来て、王都から調査隊が派遣されてきたことで新たな交流が発生。 環境が変わることで少しずつニアの心境にも変化が生じていくのが良いですね。
外の世界に飛び出して
投稿日:2023年6月4日
主人公のレイジは、スキルオーブという貴重品を産出する鉱山で働く奴隷だった。 契約主である貴族が鉱山を視察に来た際に死に、自由を得た彼は鉱山の脱出を決意。 同じことを考えた奴隷たちによって混乱する鉱山で彼は、鉱山でスキル枠を10個も使うレアスキルを発見して……。 スキルオーブをはめるための枠は通常1人8枠だが、主人公は前世の記憶がある関係か倍の16枠を所持していたことが発覚。 レアスキル『森羅万象』のお陰で無事に脱出成功し、逃亡奴隷となった上に、この世界では忌み嫌われる黒髪黒目のレイジでしたが。 彼を受け入れてくれる冒険者と出会ったり、異国のお嬢様と交流を持つことになったり。少しずつ彼の世界が広がっていくのが面白いです。
自由の体現者たちの物語
投稿日:2023年4月21日
神は直接世界に干渉してはならない、という法則があるために異世界から呼ばれた主人公。 色々と便利なスキルを与えてくれた神様は、チュートリアルと称してラスボスをボコボコにするんだから自由です。 「チュートリアル」という言い訳が出来たことで目的が達成できたので、主人公は手続き上必要だったとかなんとか。 そして神様の目的を達成した後は、主人公に自由を与えてくれるんだから気前が良い。 この世界の身分証もないためトラブルが起きそうな時とか、折に触れ神様がフォローしてくれることもあって、主人公が本当に気ままに生きていくんですよね。 タイトルの「あとはご自由に」という文句に恥じない、フリースタイルな異世界ライフをご堪能ください。
確かな絆がそこにはある
投稿日:2023年4月21日
とある辺鄙な村で生まれた主人公のアイビーは、神様から授かるスキルが「星なし」と呼ばれる最低ランクだったことで家族や村から迫害されて。 一人だけ助けてくれる人は居たけれど、その人がなくなってしまったことをきっかけにアイビーは旅に出ることになります。 最弱のテイマーながら、道中でスライムをテイムすることに成功して、寂しい旅とならなかったのは良かった。 テイムしたスライムとは良好な関係が築けているし、特殊な能力に目覚めたことで助けられる場面も多いです。 ……まぁ助けられるってことは、それ相応のトラブルに遭遇していってるということでもあるんですが。 スタートから厳しかったアイビーには穏やかな旅を送ってもらいたかったものですが、なかなかうまくいきませんね。 でもアイビーの味方はテイムしたスライム達だけじゃなく、旅の中で出会った良き人々との縁もあるので、なんだかんだ乗り切ってくれるのが良い感じです。
悲劇の可能性を打ち破れ
投稿日:2023年4月21日
ゲーム化もされた人気小説の世界へ転生した主人公。 前世は男ながら、今世では可憐な少女・美羽となった彼女が、ゲーム時代のようにレベルを上げてアレコレすることで、物語は原作とは違う方向へ進んでいきます。 魔法や貴族が存在し、私たちがする歴史とは違う流れを辿った日本が舞台となるわけなんですが。 小説やゲームでは「そういう設定だった」で通る部分が現実となったことで肉付けされ、表向き快活な貴族も交渉で相手を取り込もうとする狡猾さを持っていたり。 原作主人公の辿る物語の裏側に陰謀が張り巡らされていたことが明らかになったり。 仮に美羽がいなかったとて、原作準拠のエンディングにはならなかったとは思いますが、彼女や他の転生者がいることでより予想がつかない方向へ転がっていきそうです。 暗躍してる勢力は多いですが、負けずにハッピーエンドにたどり着いて欲しいと願っています。
異世界のエルフの姫から頼まれて、その体を60日ほど貸し出すことにした主人公。 その代わりとして彼女の体を借り受けることになり……面白半分どころか、面白全部で配信をスタートすることに。 普通の男子大学生だったのに、突然エルフの少女姿になって困惑するのではなく配信を選ぶあたり、あまりにも強すぎる。 ハイスペックエルフ姫の身体と、強メンタルと高い行動力を持った中身が合体したことで、驚きのハイスペックモンスターが爆誕してるのは面白事故すぎる。 他のVTuberとの縁が出来たと思ったら「中の人」ともバッタリ遭遇したり、どこに行っても取れ高を生み出す主人公からは、その無防備さもあって目が離せません。 TSエルフ姫ちゃんねるのワチャワチャ具合がとても楽しいので、いつまでも見ていたいのですが、期間限定ということだけが惜しい。
その羽ばたきは世界を揺らす
投稿日:2023年4月20日
全ての人が精霊を宿して生まれるはずの世界にある、高天原という島国に生まれた主人公の晶。 彼は雨月という名門に生まれながら、精霊を宿していなかったために親族から疎まれて故郷から追放されてしまうことになって。 ……辛くも生き延びて故郷から離れた南方の地で、細々と暮らしていたみたいです。 けれど、実は「精霊を宿していない」晶の体には秘密があり……その事実を知る御方との縁が出来たことで、彼の生活は変化していきます。 これまで知らなかった事や縁遠かった世界へと踏み込んでいく中で、晶も少しずつ成長していくのが良いですね。 傷ついていた雛がその傷をいやし、羽ばたくことになる物語ではありますが……まだまだ課題も多いようにも思えるので、今後とも見守っていきたいですね。
秘めたる想いは甘やかに
投稿日:2023年4月20日
メルティナ侯爵家の令嬢フィオナ。 彼女の婚約者アルフレッドとは王命によって結ばれた政略結婚の関係ではあるが、彼女は恋をしてしまった。 慕っているからこそ、同じように想って欲しい。 けれど始まりが王命であるし、周囲の友人からも政略結婚に愛を期待してはいけないという。 そんな板挟みの状況で迷っていたことや、アルフレッドが忙しいことを知っていたため、個人的に会う時間を減らすことになって。 ……そうしたら、なぜか家族総出で事情を聞かれ、婚約者の職場を訪問することになったわけですが。 そこでフィオナはいつも彼女の前で見せてくれるものとは違う顔をした婚約者とであって……。 少しすれ違いこそありましたけれど、互いに互いを大切に思うからこその行動だったわけで。ただお幸せに、とだけ伝えたくなるお話でした。
君臨されし陛下を称えよ
投稿日:2023年4月20日
ハーフとして生まれ、他と違う容姿ゆえに向けられる好奇の目を嫌った少女、凛音。 引っ込み思案で引きこもり気味になってしまっていた彼女に、親族がVTuberとして外と交流する方法が提案されて。 魔王ヴェルチェラ・メリシスという名義でデビューした主人公は、魔王らしい振る舞いをする中で自分が本当に異世界で魔王をやっていた前世を思い出すことになります。 それによって自信を取り戻した彼女は、現実ではウィッグなどで隠していた容姿を表に出すことにして。 個人Vとして始めた活動でも、魔王様ロールプレイがハマって好評を博することになります。 急に環境が変わったことでトラブルも飛び込んではきますけど、魔王としての知識と一緒に色々と異世界流の対処法も思い出したこともあって、割と安心してみていられますね。 彼女の物語はまだ始まったばかりですが、これからも強く輝き続けてくれるだろうと信頼できるのが良かった。