物語の世界にあって、白馬の王子様は飽和状態だ。
現状に不満を持つ女の子を、颯爽と素敵な世界へ連れ去るトレードマーク。なるほど、実際それは『夢』たりえるのだろうが。
だが、この作品の主人公はそうではない。
「私、幸せになると死ぬ呪いにかかってるの」
真実を告げた『呪われ少女』を救えるだけの力も、積み重ねも、何も。彼は特別、持ち合わせてはいない。ただその少女が好きなだけの、等身大な男子高校生なのだ。
故に彼は躓くし、間違えるし、颯爽なんて言葉は似合わない。自分の感情と向き合いながら、やれることをやっていくのみ。
彼はひたすら、『現実』の中で闘っていくのである。
そんな彼の心情に共感するのは非常にたやすい。作者により計画された展開は我々の心を揺さぶり、その静動に引き込まれていく。
はてさて、不幸になりたい呪われ少女と、主人公は果たして、どのような幸福を掴むのか(文字数