レビューした作品一覧全2件
 数々の美しい宝石も元は原石。  輝くためには相応しいカットと研磨が必要です。  この物語は原石のような若者たちの群像劇であり、衝突したり摩擦が生じたりする過程で散らす激しい火花の奥に、宝石の輝きの一端を見出す喜びが魅力の作品です。  思春期の繊細な感性は、マイノリティを受け止めるには時に脆すぎます。  それ故に傷つき傷つけあいながら、彼らは自らを、そしてお互いを受け止めねばなりません。  その繰り返しによって、きっと原石は徐々に輝きを増し、やがて本物の美しい宝石となるのでしょう。  静かな語り口で紡がれるこの物語は、水盤の表面のようにとても繊細で美しい透明感に満ちています。  目を凝らせば、その透明な世界の住人である少年少女たちの不器用な優しさに心を締め付けられたり、逆に優しく癒やされたりするかもしれません。  このナイーヴで透明な世界をぜひ覗いて見てください。それはとても美しい。
 恋プリを読むと決まって思い出す言葉があります。  それは「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりし」という林芙美子女史の有名な言葉。  『恋するプリンセス ~恋をしてはいけないあなたに恋をしました~』というキャッチーなタイトル通り、主人公の恋は決して容易なものではありません。その恋は禁断……。  生まれの違いという運命に翻弄されながらも愛しあおうとする二人の前には「苦しきこと」が嵐の後の倒木のように立ちふさがります。  その運命を乗り越え強く引き合う二人を結び合わそうとする力があるのなら、それもまた運命の力なのでしょう。  乙女の花を咲かせたことのある女子であれば、恋愛の王道を威風堂々歩みゆくこの物語を読んで身を捩らすことに躊躇はいらないでしょう。  乙女心など縁のない男性も、この物語を読んで乙女の花蜜を味見してみるがよろしい。  きっとその甘い蜜を再び味わいたくなることでしょう。