レビューした作品一覧全15件
これは一人の女性の苦しく辛い――そして救いのある半生の話。 痛ましい某事件で世間に再浮上した『宗教二世』の問題。 この女性はまさしくその『宗教二世』であり、親から信者から長老から、信仰という名の鎖でがんじがらめの生活を送らされます。 そのためいじめに遭ったり、家族から猿以下とののしられたり、およそ人間らしい扱いを受けることなく日々を過ごしていきます。 この辺りは読んでいるこちら側も苦しくなるぐらい、彼女の不幸が胸に突き刺さってきます。 しかしそんな中でも、彼女は創作という居場所を見つけ、今の旦那さんと出会い、逆境から幸せを掴んでいきます。 ぜひ多くの方にお読みいただき、生きることの意味と指針を得ていただければ、と願ってやみません。
ハーレムは夢である。男なら誰だってモテたい、女にちやほやされたいと念願するだろう。 だが残念ながら現実は非情だ。一夫多妻が許される国の富豪でもなければ、夢は夢のまま終わる。というか、そもそも心身ともによほどのイケメンでもない限り、夢すら見られないであろう。 さて、本作の主人公イソネは、そんなハーレムを築き上げるに足るイケメンである。スキル『チェンジ』で次々体を変えながら、その純粋な心は決して腐らない。むしろヒロイン(実に多彩だ)が増える度、責任感を増して、より輝いていくのである。 読者はそんなイソネに魅了されるだろう。矢継ぎ早に訪れるピンチや、それを潜り抜けていく彼を、いつしか応援したくてたまらなくなってくるはずだ。 サクサク読めるのも素晴らしい。これはそんな不思議な、ハーレム冒険物語である。 個人的にはギルドマスターのティターニアさんがいい。早くイソネと結婚してくれ。
歴史物の小説数あれど、これはその中でも特にオススメです。 主人公・陽葉(ひよ)は昭和の女子。近くのコインシャワーでひとっ風呂浴びようとしたら、なぜか『戦国武将ゲーム』に参加させられ、見知らぬ田舎に飛んでしまいます。 何とそこは戦国時代。彼女は歴史を遡ってしまったのです。そして彼女に与えられた役目が面白い。 木下藤吉郎。のちの豊臣秀吉です。 又左なる男に導かれて織田美濃こと乙音――知り合いの女子――に会った陽葉は、彼女もまたコインシャワーでタイムスリップした、『戦国武将ゲーム』の参加者であると告げられます。 昭和と過去とを行き来するうち、陽葉はこのままでは美濃が最悪の最期を迎えると知って、積極的に動き出すことに…… これから先は、読んでのお楽しみ! きっと素敵な読書体験があなたを待っていることでしょう。
新感覚恋愛ラノベ、爆誕!
投稿日:2018年12月5日
高校2年の夏。読者諸賢は甘酸っぱい恋の思い出をたくさん作り出したことだろう。そうではないという方も、それはそれで味のある青春である。女子同士の恋愛トークに興じたひと時を、立派な財産として懐かしく思い返す人々も多いのではなかろうか。 さて、本作の主人公・凡人の倉瀬聡は、新体操部の美貌のヒロイン・渡井愛佳に告白して見事OKをもらう。しかし、それは条件付きだった。「キスもそれ以上も、結婚するまでおあずけ」――。 これはきつい。異性への興味津々な年頃の聡にとって、ただただ部活の手伝いで奉仕するだけの毎日は、生き地獄そのものだった。この辺り、作者の心理描写は卓越している。 で、聡はどうしたか。爆発することなく、祖父の寺に修行に出かけ、煩悩を脳裏から追い払う修行に身を投じるのだ。それがどんな効果をもたらしたかは、ぜひ御一読して爆笑していただきたい。 愛佳視点も織り交ぜて、今後が気になる作りである。
ゲーム紳士・ゲーム淑女の皆様方におかれては、やはり長い電脳遊戯人生の中で、様々な作品との出会いがおありだったであろう。心の底より歓喜する名作、まあまあ元は取れたかと納得する凡作、ふざけんな金返せ壁に叩きつけるぞゴルァな駄作、一体何が起きたんだと呆然とする珍作。そこには悲喜こもごも、人生の喜怒哀楽が詰め込まれているといっても過言ではない―― さて本作品では、著者が出会ったレトロゲームについて毎回一作、斬新な視点と独自の切り口で論評している。 ――いや、違う。著者はどのソフトに対しても、なるべく平易で理解しやすい文章で紹介を試みている。ゲームに特に興味ない人でもすんなり入っていける、そんな優しい解説だ。 感嘆されるのはその詳細さで、実際に遊んだ人間のみが語れるような長短所、そのゲーム独自の特徴なども極められている。著者の豊富な知識とそれを生かす文才がうかがえるではないか。 必読である。
ニチアサといえば、ご存知ヒーロー・ヒロインの活躍するテレビ番組群のこと。おいらも時々観ます。いい年して何してるんだって? でも、面白いし憧れるし、別にいいじゃん。子供心はいつまでも手放せないものなのだ。 さて、この作品は、そんなヒーローに憧れ、そうありたいと願う主人公が、転生先で手にした力で活躍する冒険譚である。 最初はメートル法やテレビ、携帯電話など、こちらの世界とあまり変わらない環境に戸惑うかもしれないが、あくまで異世界。ただ全てが魔力により運営されている点が違う。 そうした街でフィセントメイルなる鎧をまとったソウタは、美人魔女ライム、可愛い剣客少女イブキらと共に、魔人や魔女相手に壮絶な闘いを繰り広げる。 その迫力溢れる描写たるや! 思わず手に汗握り、矢継ぎ早のアクションにグイグイ引き込まれることだろう。 もちろん肝心要の心理表現もしっかり書き込まれている。 渾身の傑作、是非ご一読を!
小説家になろうは、デジタルの巨大な図書館である。そこには何万もの小説が並び、ページをめくってくれる人間を日々黙然と待ち構えている。 しかし、人によって好みは千差万別。気に入らない作品を手に取ってしまった時の残念感は疲労となり、次の一歩を躊躇させる。 何か違う。どこか変だ。読んでいてしっくりこない色々な不快感は、舞い落ちる雪のように降り積もり、せっかくの読書意欲を覆い隠してしまう。 で、ひょろ様のこの名作紹介である。 そこには読み専ならではの鋭い観察眼と、「他人にもこの一作を楽しんでほしい」との真摯な情熱とが込められている。それは氷の結晶を溶かし、埋もれた物語群の中から選りすぐりの作品を見つけ出す手がかりとなってくれる。 なろうを散歩して見識を広めたい、文章のパズルに熱中したい、とにかく燃え上がりたい。そんなあなたに、このエッセイは正確かつ最善の道標となってくれるだろう。 ぜひご一読を!
人は旅に出る。それは単なる観光旅行でもあれば、密林の奥地への決死の冒険でもあったり、贅を尽くした世界一周でもあったりする。死出の旅、ということもあるだろう。 本作『アマノクニ』は、神と人が争う戦地の大陸を舞台とした、二人の男女の旅物語である。といっても、普通のそれではない。一方はカカシの神様、もう一方は訳ありの気の小さい少女なのだ。 しかも、何しろ尋常でない。神の世界に攻め込むのは、VRMMOを楽しむごく普通の地上の人間たち。彼らはあまりにも残酷に、ゲームとして神やその信者たちをなぶり殺していく。死んでも生き返るから始末に負えない。一方やられる側は必死に応戦するが、こちらは死ねばそれまでである。 この戦争状態を終わらせるために、一柱と一人は決死の戦いに身を躍らせるのだ。 にしてもこの作品、エンターテイメントとして抜群の面白さを誇る。読者は次の展開が楽しみで、時間を忘れて没入するだろう。
レビュー作品 アマノクニ
作品情報
ファンタジーと一口に言っても、書く人間は千差万別。一人一人に独特の世界観があり、その数だけ物語が存在する。面白さも多種多様というわけだ。 それを踏まえてこの作品を読むに、きっとあなたはえも言われぬ魅力に夢中になることだろう。古今東西の名作に通ずる、完璧なまでに構築された世界が、主人公ジュン・モーリスの手で紹介されていく。それは通貨であったり、ギルドであったり、魔法の数々であったり…。 特にこだわりを持って描かれているのは食事だ。「飯テロか?」と作者の真意を疑ってしまうほど、読者の空腹を刺激する数多の料理描写はきめ細かい。読んでいる最中、登場人物たちを何度うらやんだことか。 ジュンの転生から始まる物語は、タイトルにもある石ころテント(欲しい!)を相棒に波乱万丈に富んだものとなる。新たな人生を歩むジュンを待つのはどんな事件か? ぜひあなたの目で確かめてほしい。きっと素敵な旅が待っているはずだ。
能力バトルものの傑作現わる!
投稿日:2017年7月5日
能力バトルものといえば、人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』がその嚆矢とされている。 あれからこのジャンルは傑作・名作を次々と世に輩出してきた。 さて、今回紹介するこの作品は、その中でもトップクラスの面白さを包含していると言えよう。 舞台は『ブレイク』と呼ばれる能力が普及した世界。 相手の動きを1秒間だけ止められる、というあまり高い性能とはいえない能力の持ち主、大威石火は、ある晩『ラスター』と呼称される化け物と出会う。 石火の力では怪物を一瞬止めることしかできない。 万事休す……と思いきや、突如現れた黒づくめの人物に助けられる。 だがその人物は、なぜか石火に何かを注射、その場を立ち去るのだった。 ……実に面白い。 文章はくどくなく、会話主体で流れるように読み進めることができる。 ヒロインの夢宮も凛々しく好ましいキャラだ。 まだ物語は序盤で、これからどうなるのか興味は尽きない。 是非ご一読を!
皆さんは「運命」を信じるだろうか。偶然に思える必然が訪れたなら、信心深い方は胸ときめき、心躍るかもしれない。おいらは……どうでもいいか。 さて、本作の狂言回しである新橋尚弥は、街で見かけた絶世の美女――白夜叶愛と「運命的に」巡り会う。そしてとある事件に首を突っ込むことになるのだ。 この主人公たる叶愛の人物造形は面白い。とにかく毒舌家で、常識人の尚弥を情け容赦なく言葉責めにする。そして頭が切れる。彼女の言はまっとうであり、その推理は快刀乱麻を断つがごとくだ。こうした叶愛の活躍が物語の芯を貫き、事件は思わぬ展開を見せていく。 彼女以外にも、喫茶店の怠惰なマスターや、探偵事務所所属の桜井結など、脇を固める人物たちも一癖ある。会話主体の作品なので、読書ははかどるだろう。 メッセージ性の強い本作は、必ずやあなたの心に訴えてくるはずだ。清々しい読了感を覚えながら、強く推薦する次第である。
幼い頃、僕らは「誰よりも強くありたかった」。正義の味方を気取り、テレビのヒーローを真似て遊ぶ。正しいんだから負けてはいけない。ブラウン管の向こうのウルトラマンのように、悪い怪獣を倒して颯爽と宙を飛び去っていく。その格好いい勇姿を、あどけない憧れと共に模倣したのは、自分一人ではないだろう。 『キリエス』は、そんな懐かしい英雄の活躍を現代に蘇らせた秀作だ。主人公の和泉は不思議な少女ナエと出会い、雄々しい巨人へと変貌を遂げる。対する怪獣は、毎回趣向を凝らして彼らに襲いかかってくる。その迫力は、作者である須瓦さんの流麗極まる筆致で描かれており、読者は容易く情景を想い起こすことができるだろう。 ちっぽけな人間では到底及ばない「強さ」の象徴。それはまさに幼少時の夢の具現化である。読者はそれを前にした時、老若男女を問わず、等しく本作の虜となるに違いない――深い畏敬を抱いて。 必読である。
心が和む展開と、そして……。
投稿日:2017年4月25日
キャラの強い仲良し女子高校生四人組。彼女らは「睡眠部」という一風変わった部活に所属する。目的はみんなで昼寝する、ただそれだけ。 三年生三人が卒業するため、睡眠部も残り一週間でいよいよおしまい。名残惜しくも思い出を語り、いかにこの部活が好きだったかを話し合う……。 実にほのぼの。皆楽しそうである。読者は心が和むだろう。 しかしこの話、変わった着地点を有する。 かなり面白いので、ぜひ読んでみてほしい。
おいらは他人の活動報告を読むのが好きで、その日もなんとなしに目を通していました。そこで赤井さんの記事を読み、「なんか面白そうだ」と、このエッセイにたどり着いたのです。軽妙な語り口と、ご自身の体験及び伝聞を元にした話は面白く、「いいもん見っけた」と感激したのを覚えています。 基本的に野郎が読んで楽しむものだと思いますが、女性の方にもオススメしたいとおいらは思いますね。優れた文章力・構成力で綴られた本作は、社会に潜む「変わった方々」のリアルを丁寧に描写し、読者の見聞を広めるのに必ずや役に立つと考えます。 読み始めたら止まらない、とにかく素晴らしい本作。ぜひブックマークをつけて、時間を見つけて楽しんでください。
無気力が世界を救う!?
投稿日:2017年1月16日
無気力は悪いことだろうか。否である。無気力な人間は生産的ではないが、同時に悪事も働かない。人畜無害。それこそが無気力者の素晴らしい真髄である。 本作の主人公は、まさにその無気力を体現する、ちょっと変わった名前の男――十諸だ。彼は何より寝たい。全てを放り投げて眠りの世界へ転げ落ちたい。だが皮肉な運命は、彼に勇者たることを欲する。 異世界よりきたアイリ――タラ子は、十諸を導く可憐?な美少女だ。天使であり女王である前に無気力ガールな彼女は、十諸の無気力ぶりこそ勇者の素質として評価し、魔王討伐を依頼するのだ。 この辺りのやり取りは実に面白い。小気味いい笑いとツッコミも見事。読者は肩がこることなく物語を追っていけるだろう。 果たしてピューエントを越えレシミラ王国に渡った十諸は、そのやる気のなさで数々の事件にどう立ち向かうのか? それはここでは語るまい。読んでのお楽しみである。