レビューした作品一覧全5件
選び抜かれた言葉で語られる、不思議な妖(アヤカシ)たちの物語。 薄靄が立ち込める森の奥、紅蓮が咲き乱れる池の畔に建つ『紅蓮荘』。 女子高生の雪村華鈴(ゆきむら・かりん)は、不思議な白狐にいざなわれ、妖(アヤカシ)の棲む森へと踏み入ります。それがきっかけで、妙に訳知りな同級生の少年たちと共に『紅蓮荘』に集い、その主である白狐の妖(アヤカシ)と共に、身辺に漂う不思議な妖(アヤカシ)たちの出来事と関わるように… 『紅蓮荘』に現れるさまざまな妖(アヤカシ)たちが語る願いごと、訴えごと、追憶、心残りのくさぐさ。 端的で読みやすい文章。折節に挿入される季節の情景。スッとストーリーに引き込まれます。 とりとめもない思いに浸る静かな時間に、ページを開いてみてはいかがでしょうか。 きっと、時の片隅に置き忘れられていた宝箱を、そっと開いたような、めくるめく不思議な世界と出会えるでしょう。
レビュー作品 紅蓮荘奇譚
作品情報
山奥の不思議な寄宿学園が舞台。ウソのように広大な敷地の中、レトロな雰囲気と謎がいっぱい。夜中に音楽が鳴り響く古いお堂、動かない時計台、妖怪や幽霊の伝説…「七不思議」という、奇妙な因縁があるそうな。 過去には死人も出たという、その七不思議とは何なのか。訳ありの美形な学生の登場など、ジワジワと気になっているうちに…何故か、毒が盛られ&血が飛び散る連続殺人事件が発生! このままじゃいけない!グルグルしている探偵と警察を差し置いて(!?)、早くも七不思議の謎と事件の真相を調べ始めた三人の女子高生たちから目が離せません。ゆるやか展開ストーリーですが、並行する学園ドラマが細やかです。意外に大長編なミステリ。
紅葉の秋から始まるオープニング、ストーリーの進行を彩るクリスマスから年末年始にかけての季節感が印象的な、風情のあるミステリ小説です。 探偵&推理モノならではのカッチリとした仕立てと、警察モノならではの少しハードボイルド風な雰囲気とが合流しているのが特徴的。 理知的な推理ドラマを楽しみたい、でも、それだけじゃ少し物足りない…という贅沢な読者に、お勧めの一品と申せましょう(種々の恋愛心理ドラマとしての味わいも有り)。 仙人ヨロシク浮世離れしている不思議な人物「胡麻博士」の、ユーモラスな達観ぶり、妙に謎に至る要素をズバリと指差している言動は、まさに絶品の味わい。なおかつ、暗い秘密と哀調をたたえたミステリ・ドラマの中の、秀逸なバランサー、癒しであります。これは、「読んでのお楽しみ!」なのです。
『鵺(ぬえ)』なる、ひとつの形無きモノ、いわば"禍ツ神"が人知れず立ち上がり、人間の業と共に、生と死の交差するひとときを荒れ狂い、変容していくその姿… 凍て付くかのような虚無をのぞき込みつつ、ギリギリの処で、温かく赤い血の通う人間本来の美しくも危ういバランスを取っている…生々しい血の匂いをたたえながらもキンと冴えわたっているような雰囲気が、印象的です。 一見して「日本昔話」風でありながら、神がまだ「(畏怖すべき)モノ」と呼ばれていた頃の、神さびた、いにしえの空気感を濃密にまとう物語です。そういう意味では、有り得たかも知れぬ「日本神話&民話」の中の、一エピソード…とも言えるかも知れません。
レビュー作品 鵺の哭く夜
作品情報
意外に頭脳派の、剣と魔法のファンタジー
投稿日:2017年5月13日 改稿日:2018年1月8日
王道ファンタジーですが、商取引・政治的交渉の類のインテリジェンス要素が少し加わっており、ちょっと独特なストーリー運びであります。 序盤で放り込まれたSF的・摩訶不思議な展開、それに続く異世界の第1日目…数々の奇妙な出来事に振り回される主人公の、目となり耳となって「?!?!?!」な気分を体験できる事ウケアイ! 「地道に見聞&経験を重ねる」という主人公の行動に立脚した密な語り口であり、読み解いていった後の怒濤のクライマックス展開では、むしろミステリー・サスペンス物の謎解き編に近い、ハイテンションな感動を覚える筈です。 過去の職歴もあって、主人公はタフネゴシエーターの素質を秘めているようです…その力量は、まだ未知ですけど。主人公は数々の試練を乗り越えて、果たして汎世界の究極の謎に辿りつけるのか… 純粋な思いも打算もある現代日本社会人の、異世界ワールドでの活躍に期待です!