レビューした作品一覧全17件
大河ドラマの舞台となり、一躍有名になった埼玉県深谷市。 この物語は、そんな深谷市に隣接する本庄市、美里町、上里町が合併してできた架空の市が舞台である。 街全体がプロジェクションマッピングに照らされた実験都市であり、街に住む人々に豊かな暮らしと安らぎを提供する夢のようなシステムなのだ。 だが、夢のような話には影の部分も存在するのが常。 エモーショナルバグ・通称エモバグの存在である。 エモバグは街を破壊する。 しかも、考えがやや偏った人間が言いそうな台詞を吐きながら。 エモバグに対抗する手段は、変身した女子高生の戦士たち。 主人公の葵上あおいもその一人。 名前の通り、青色担当のプリジェクションソーダなのだ。 あおいの歯切れ良い口調がくせになる。 ときどきみせるツッコミもいい! 『キレキレ攻撃』などのネーミングセンスもサイコー! すべてがわたしのツボに入るんです!
物語の始まりは青春ドラマ風。 主人公のセイヤ視点とヒロインのスズミ視点で交互に読ませるプロローグが秀逸。 セイヤはいわゆる陰キャで、いじめられっ子。 そんな彼がスズミと出会い、少しずつ距離を縮めていく。 そして二人で行く夏祭り―― いやぁー、青春っていいなぁー。 と、羨ましがりながら読んでいくことをお勧めします。 主人公のセイヤは熱血漢でもなければ、極端に弱者という訳でもない。 いわゆる普通の男の子。 だからこそ、小さな勇気を振り絞り、少しずつ自信を付けていく。 そんな等身大の成長物語として楽しめる。 その一方で、この物語の主軸は人魚伝説にまつわるミステリーである。 セイヤとスズミの前に謎の多い美大生が現れるところから、物語は大きく動き始める。 夏祭りの場面から冠島を舞台に移してサスペンス! 少しずつ明らかになっていく人魚の謎。 ストーリーがよく練られていてとても面白いです。
 これは人が乗り込む産業用ロボットがある世界の物語。  主人公の伊澄はロボット乗りに憧れていたが、夢破れてエンジニアになっていた。  そんな彼が、第6話で登場するエレクシア王女に〝さらわれる〟ことで事態は一変する。  彼女はストーリーの核心を握るキャラなのだが……  ああっ、これを書いてしまうと重大なネタバレになってしまう。    ラブコメ大好きなわたしは、ついつい主人公とユカリのいちゃいちゃを期待しながら読んでしまうのだが、そういう読み方もできるぐらいに、登場人物の心情が丁寧に描かれているのもお勧めポイントの一つ。  現実世界と異世界が繋がっていて、行き来できるという舞台設定の面白さも見逃せない。  そして何と言っても、この作品の一番のお勧めポイントは、迫力のある戦闘シーンである。  文字を追っていくだけで、映像が頭の中に浮かんでくるのだ!  今すぐ読んで、確かめてみてほしい。
色鉛筆でお絵かきすることが大好きなゆきちゃんは、物語の中で幼稚園児から大人へと成長していきます。 それと同時進行で、童話的な世界観の中で、色鉛筆たちも成長していくのです。 人間界の『ゆき』と、色鉛筆の『しろ』。 両者はそれぞれの世界で、自分自身の存在意義を見いだすことができずに悩みます。 自分なんて何の役にも立たないのではと悲しくなります。 でも、ゆきちゃんと白鉛筆には他には真似のできない強い力があったのです。 それが何であるかは、作品を読んでご自身の目で確かめてください。 きっと感動で涙が止まらなくなるでしょう。 ぜひ、最後の一行まで気を抜くことなく読み終えてください。
 文芸部に所属する主人公は恋愛経験がないのだが、一念発起してラブコメの執筆に挑戦する。しかし、恋愛経験ゼロの彼はうまく書くことができない。そこに救世主が現れる。部長の口添えで女の子を紹介してもらえるのだ。  目の前に現れた女の子は、なんと中学時代の同級生、しかも当時の学級委員長。そして美人さん。なんとうらやましいラブコメ展開!  しかし、この物語の魅力はそれだけではない。ほぼ毎話ごとにチラチラと見え隠れするミステリー要素。これが堪らない!  まずはラブコメ作品として気軽に読んでみてほしい。そうすれば、ボクの言わんとしていることが分かってもらえるはずだ。
 兄のことが好き過ぎてヤンデレの領域にまで達してしまった妹。その猟奇的なまでの妹の愛を真正面で受け止めようとする兄は、ゲーム世界が融合したような世界で幾度となく失敗し苦しむことになる。  ゲームの概念と『死に戻り』要素をうまく取り入れた緩急のあるストーリー展開は、一度読み始めたら最後まで読ませる勢いがあります。  さあ、あなたも勇気を出して禁断の兄妹愛の世界へ飛び込んでみましょう。
ミュージックバーで偶然に出会った彼女。 彼女はボクをペキちゃんと呼んだ。 ボクはベッドで、彼女はソファーで別々に寝る同棲生活。 どうですか? やや刺激的とも思わせるこの冒頭部分。 でも、二人の関係はずっと平行線を描くように進展はしていきません。 しかし確実に心情の変化はある。 その部分を読み取ることが出来る読者にはたまらなく面白い作品です。 そしてなんと言っても、作品全体に漂うミステリー感。 最後の種明かしを読んだら、もう一度最初から読み返したくなること必至です。
「やっと目覚めたね、逢坂玲人君」 絶世の美女である如月沙奈会長の一言から物語は始まる。主人公の玲人は高校1年生。入学早々に沙奈会長に拉致されているという衝撃的な場面。そして数々の誘惑を巧みな話術と機転ではね除け、玲人は生徒会室から脱出する。  沙奈会長の玲人への一途な思いはどこから来るのか、なぜ執拗に彼を狙うのか。その謎を探りながら読み進めていく。その過程でミステリアスな銀髪の少女や幼馴染み、そして公園の猫という登場人物(?)との絡み。幼い頃から女性に絡まれることに慣れているという玲人の羨ましすぎる設定と、回を追うごとに楽しめる物語構成となっている。  このレビューを書いている時点で第19話まで公開されているが、まだまだ先が読めない展開となっており、私は毎回ドキドキしながら読んでいる。
レビュー作品
作品情報
 『ギルド』といえば荒くれ冒険者たちが集う場所。『スライム』といえば、細かな描写がなくとも大まかなイメージは伝わる。それが異世界テンプレ作品の良さでもあるが、この作品はそこにひと味違う調味料を加える。  ギルドに入った途端に主人公は汚臭と冒険者達の体臭を感じ、宿屋ではトイレの匂いに閉口する。さらには、現世でひきこもりだったケイトは異世界でも視線に恐怖し、仲間へのお礼の言葉かけもままならない。転生した途端にコミュ障が直ってモテモテ君になっちゃったりはしないのだっ!  これは元ひきこもりの主人公ケイトが転生先で得た2つのスキル【人見知り】と【ペット創造】で無双する物語――どろどろのスライムが意外な方法で大活躍する。元ひきこもりの主人公が異世界で様々な仲間と交流し、コミュニケーション力を身につけていく成長物語という一面もあるこの物語の今後の展開に目が離せない。
 レイトーマ国の姫・マナは、国王を殺され波瀾万丈な幼少期を過ごしてきたが、素直な女の子。マナの周りにいるのは人間味あふれる人々。彼らは所属する国や組織の違いにより対立し戦うのだが、みんなそれぞれに信念をもって行動している。  世界には4つの国が存在し、龍族は滅び人間は半数が死滅した。その歴史を知ることは禁忌とされた――これは隠された世界の記憶を知りたいと願ったマナが、護衛の緋媛とともに波乱の人生を送る人生ドラマのような物語である。  マナを始め、登場人物たちの人間模様をドラマチックに演出することをベースとして、隠された歴史を紐解いていくミステリーとしての面白さ。それをしっかりと楽しむためには、ネタバレを怖れずに0章を先に読むことをお勧めする。そして本編を読み進めながら、時々0章に戻ってみる。すると、最初は分からなかった情報が少しずつ解明され貴重なヒントになっていることに気付くだろう。
 プロローグには2人の老人が登場するが、実はこの2人はただ物語の世界観を伝えるための(現段階では)ちょい役なのだ。なぜこの場面から物語が始まるのか? そこから見えてくるのは、この異世界の世界観を大切にしたいという作者の意図である。  第1話でようやく主人公の糸場が登場する。バイト先の更衣室から道具屋LIBERAの店先まで移動する場面があるのだが、その描写力にただただ圧倒される。幻想的なまでのリアリズム。そこに異世界が実在する『普通』の世界――  糸場が魔法を習得する場面では、その本があれば自分でも魔法が使えるようになるのかと錯覚させるほどに丁寧に描かれている。果たして異世界で暮らす彼らは何を食べ、それがどんな味のするものなのか。凛とした空気感で語られる異世界の中の普通の生活。異世界を舞台にする作品は数あれど、これほどまでに精密に計算された世界観は他に類を見ない。
 ヒロインのティピカは古代魔法アポーツの使い手。それ故に、幼少期から研究所に監禁されて、日々実験動物並みの扱いを受けるという悲劇の少女だ。注目すべきは冒頭のシーン。実験を開始するとティピカは「はわ! はわぁ!」とおろおろする。すると、研究員が総統に向かって「はわついてきましたね」と言う――この場面、萌えるでしょう?  研究所を脱走したティピカは、山の上で学者のバリーと出会う。2人で逃亡するうちに、ティピカはお腹が空いてしまう。そこでバリーの提案で魔法を使ってお菓子を出そうとするのだが、彼女はお菓子がいっぱい置いているという巨大なお城を出してしまう。結局、お菓子を食べることなく逃亡を続ける羽目に――この残念ぶりにも萌えるでしょう?  その後、ティピカはドーナツを魔法で出そうとして失敗し、あるものを出現させてしまう。それが何であるか本編を読んでのお楽しみに! あなたがぶっ飛ぶことを保証します。
 宮廷魔法使いが『聖女の残り湯』で作ったホムンクルス(人造人間)の女の子が主人公の冒険話。     本作には個性豊かで気の良い仲間や、少しおっちょこちょいな魔神の少女など、魅力的なキャラクターが多数登場する。人間からすると獲物でしかない、やられ役のモンスター達ですら、魅力的なキャラクターに仕上がっている。彼らの小気味よく、ユーモラスな会話がとても心地よい。  しかしそれらの脇役達も、主人公のシロノの魅力と比較したとたん、すべてが霞んでしまうだろう。シロノは躊躇うことなく魔銃で獲物を撃つ。敵対する人間も撃つ。周囲の仲間が唖然とする場面が幾度となく描かれている。あれこれ考えずにまずは行動してみる。そんなシロノに私は大いに魅力を感じるのだ。それは『あれこれ悩んでいないでまずはやってみなさい!』という作者からのメッセージでは? ――と思うのは私の考え過ぎだろうか。
 時代は幼稚園教諭氷河期、男が資格を取るには女装するしかない。冒頭部でさらりと触れられているが、つまりはそういう設定なのだ。読者諸君には「えっ?」という気持ちを一足飛びに乗り越えて欲しい。  2人のヒロイン(友人)が登場する。1人は同じ寮で生活する胸の大きな女の子。可愛い女の子との夢のような共同生活も、女装を悟られてはならないという緊張感でかき消されていく――と思いきや、ちゃんとご褒美シーンもある。主人公も彼女も鈍感系キャラなのだ。もう1人は成績優秀だがどこかに陰のある女の子。彼女に関してはネタバレになるのでここでは触れないでおく。  主人公(女装)と2人の女の子との笑いあり涙ありの友情物語――世の男性諸君に贈る、女性目線のはらはらドキドキのハプニング。男性はこういうシチュエーション、好きでしょ? みたいな小悪魔的な作者からのメッセージ性も感じる――というのは私の考え過ぎか。
幼馴染みの二人が思いを寄せ合う数秒前……そんな物語です。
投稿日:2017年7月21日 改稿日:2017年7月21日
 登場人物は幼馴染みの男女のみ。2人は互いに惹かれ合っているようであり、そうでないような……そんな冒頭のシーンから物語は始まる。  2週間学校を欠席した女の子を心配して主人公の男の子は部屋を訪れる。この場面の2人の会話がすでに面白い。キザな台詞をいとも簡単に吐きまくる主人公に対する女の子の切り返しがうまい。そして甘い! このリア充共め! という嫉妬心を覚えつつ読者は読み進めることだろう。  続いて、女の子が学校を2週間休んでいる理由に思わず吹き出してしまうだろう。ネタバレになるからこれ以上は書けないのが残念!  主人公は最後までキザなセリフを吐いてくるが、それを自然とやってのける彼に魅力を感じずにはいられない。そんな気持ちにさせられる物語です。
これぞホラーの王道! という感じの作品です。
投稿日:2017年7月19日 改稿日:2017年7月20日
 冒頭部分からハラハラさせる、これぞホラー小説。主人公は大学生の高橋大地。大学の超常現象・オカルト研究会のメンバー。サークルメンバー8人で、廃園となった裏野ドリームランドへ調査に出かける。  冒頭部分は調査開始後のハプニングシーンからスタートする。なぜ彼らが裏野ドリームランドの調査に向かったのか、その理由が次第に明らかになっていくにつれ、謎が謎をよぶ展開に……  物語はクライマックスに向けてスピードを加速させていく。ジェットコースターも加速していく!  ラストもぞわっとした余韻が残る、ホラーとして完成度の高い作品です。暑い夏の夜はホラーを読んでスッキリしましょう!
主人公の語り口が面白い!
投稿日:2017年7月8日
高校1年生にして不登校生(ひきこもり)の主人公が仕方なく登校を決めた日、イケメンの有徳と偶然に出会った。それが主人公の愉快な(?)高校生活の始まりだった。聲質研究部の個性あふれる面々との絡みも楽しいが、なんといっても主人公の語り口がユニークでテンポも心地よい。第1話から引き込まれました! とにかく面白い。