レビューした作品一覧全3件
物語を綴る物語りたち
投稿日:2018年7月31日 改稿日:2018年7月31日
ある時は現世の狭間にあるとでも表現すべき、どこか妖艶な古書店の店主が。 ある時は自らを神様と名乗る生意気そうな金髪の少年が。 ある時は自信満々、スカートのフリルを揺らしエナジードリンクを片手に立つ少女が。 数多ある実在のWeb小説をその手に、作品を物語の中で扱い、取り上げ、紹介してゆく不思議な物語。 この不思議な登場人物たちが織りなし、心惹かれる世界の中で語られる物語の中の物語は、様々な形で読者へとその存在を愛のままに語られる。 紹介作品は只の添え物などではなく、確かに感じられる深い読解力と考察力からその魅力を彩り語られ、綴られ、この世界を取り巻く物語を繋げていく。 この小説を紹介する小説は、何とも愛に満ちている。 その愛に充てられた時、貴方はこの古書店に並べられる本を手に取りたくなる筈だ。 それが本作の堪らない魅力だと、心より想う。
美麗な挿絵と精細な銃器のイラストが絡み合いリアルに描かれる多岐に渡る銃器の数々が奏でる情景。 その弾丸が向かう先にあるのは"異世界からの来訪者"。来訪者が振るう力は、まさに我々が見慣れた異世界そのものだ。あるいは魔法、あるいは怪物に立ち向かう主人公達に、チート等の安直な力は与えられていない。 では何を以て立ち向かうのか―それは現代が誇る様々な重火器、そして熟達した戦闘術である。 一度は夢想した事があるだろう。 夢描いていた異世界譚の中に存在する力と、現実に存在する鉄鉛が切り結び交差した時、生き残る資格を得るのは果たしてどちらなのか。それをリアルに、時に生を、時に死を纏い綴られる重厚な物語は圧巻の一言に尽きる。 この物語―いや闘いは、必ずや貴方の闘争本能を満足させてくれるに足る作品である。
ありきたりな異世界転生もの…等では無い。 かと言って奇をてらい、難解な印象を与える作品でも無い。まず感じるのは唸らせる緻密なバランスと、全体を通した完成度の高さだ。 基本一人称で進んでいく本作。 当人の視点、内面を重点的に描写している本作だが一言で言い表すと"視野が広い"と、感じる。 当人の心の内はもとより周囲の状況や動き、他の人物の表情やしぐさ。それらが非常に丁寧に描写されておりその情景がまさに目に浮かぶ。 登場人物も当然魅力的だ。 主人公はぶれない紳士としての魅力を湛え、リーゼロッテの凛としながらも可憐でいじらしいその姿に思わずにやりとしてしまう。 日常/戦闘回の起伏も読み進める上で飽きさせない。 手に汗握るものから、思わずにニヤついてしまうものまで、面白いの一言に尽きる。 未読ならば、一読の価値は十二分にある。 是非一度、この世界をその目で味わって欲しい。