2019年11月30日 (土) 04:03
◆シラノ・ア・ロー◆
趣味は獅子丸(脇差し)の手入れ。
この世界への不満点は味噌汁が飲めないこと。醤油がないこと。時代小説が読めぬこと。
前世はソウルフードとは無縁の土地で育ったが、それはそうとして時折無性に蕎麦が啜りたくなる。ざる蕎麦啜りたくなる。勿論噛まずに喉越しすべき派。
蕎麦の実自体は寒冷地や痩せた土地でも育つために(現世で言うポーランドは世界有数の消費量)ドラカガルドにもあるのだが、つゆが作れない。
そば打ちしてもつゆがないので泣く泣く諦めた。
トラウマは『おっきくなったらおにぃと結婚する』『おにぃとずっと一緒にいる』と言ってた妹が、
小学校高学年でやや反抗期に入り、『そんなんだから兄さんはモテない』『兄さん彼女もいないの?』と言ってきたこと。
呼びかけが変わったことで三日は呆然とした。切腹も考えた。
好きなヒーローは、伝奇時代劇によく出てくる隻眼イメージの柳生よあの人。
あとは野菜由来の名前を持つ、戦いになると黒髪が金色に変わる地球育ちの宇宙人。
常に心優しく克己に励み、敵に対しても命を奪うことに固執せず己に負けぬように限界を極めていくその姿に感銘を受ける。
どちらのヒーローも『彼さえいてくれれば』という人の期待を背負える力強さを持っていることに憧れているらしい。
好きな歴史上の偉人は、「鳥居 強右衛門(とりい すねえもん)」。
武田軍に包囲され兵糧も焼け、落城寸前の長篠城から危険を顧みずに抜け出し徳川軍へと救援を要請。
援軍を得られるというその吉報を伝えるために僅か二日で往復数十里を駆けるも、長篠城目前で捕縛された。
武田方に城を見える位置に磔にされ、命の庇護や身分の保障とは引き換えに「援軍が来ない」という虚偽の情報を伝えるように強要されるも、
磔にされたまま「あと数日で援軍が来る」と叫び城内を大いに勇気づけ、怒る武田勝頼に処刑された。
彼の功績により長篠城は落城せず、救援までを持ちこたえたという。
◆フロランス・ア・ヴィオロン◆
触手使いの大家の一人娘。
一子相伝の技ではないのだが、父の兄が出奔し悪しき触手使いとなったために「世に疎まれぬように」子は一人。
幸いにして触手使いは疾病が発症しづらく、寄生により外傷の治療・触手液で消毒や滋養もまかなえるために、
流行り病などの心配もなく多産の必要も薄かった。
姉なるものへの奇妙なイメージは、近所にやたら仲の良い姉弟がいたため。もしも自分に兄弟や姉妹が居たら……とかの妄想で辛い修行や生活を乗り切っていたらしい。
一応、一通りの家事や裁縫・刺繍もできる。そうでもないと触手使いと結婚するような相手も出てこないためだ。
こんなぽんこつが一人旅でシラノの元まで向かうのはどう考えても無理があるため、どうやら触手使いはワープめいた技が使えるらしい。
好きな食べ物は肉。そして甘味。わりと健啖家の方。
栄養は胸に行く。
実は絵を描く趣味もある。
恥ずかしさからこの旅の間はしていないが、触手を使って同時に何枚の絵を描くことをしていたらしい。
ただし風景画が専門で、人物画や動物画は描かない。というより描けない。触手使いは嫌われているためだ。
◆セレーネ・シェフィールド◆
シラノが転生しなければどうやら世界を救っていたらしい剣鬼。
淫魔特攻とも呼べる異常な愛情表現、第一形態のエルマリカなら完殺できるなど、どう考えても第一部クリア可能な異常な能力を有する。
まだ二つほど変身(剣の技)を隠しているらしい。
愛剣を取り戻す際には、雪に隠した地面に刻印を刻み飛翔斬撃を氷の壁を身代わりに封じ、その上で正面から剣技で打倒した猛者。
剣の師は“剣の一族”出身のもの。魔術の師は半森人の賢者。
婚約者がいたらしいが、顔の傷により当然の如く破談になった。
実は動物が好きであるのだが、立ち振る舞いからかまったく近寄られない。
そのことでフローと愚痴を言い合って更に絆が深まったらしい。
なおシラノは動物にあまり嫌われないので密かに解せないと思っている。
◆エルマリカ・ア・リューシア・エ・マグナ・エスタルシア◆
フローとセレーネからぬいぐるみを貰っており、お気に入り。
つけている名前は…………酒場の喧騒で宿が揺れてぬいぐるみ同士が重なって倒れただけで死ぬほど赤面したので、触れずにいておくのが吉。
本当は二人とももう少しおしゃべりしたいが、人見知り気味の性格もあってあまり打ち解けられていない。
趣味は読書。
それと意外にも活発なたちで、野山の散策などを好んでいる。
秘密の花畑などを見つけては仲間に伝えようか踏み荒らされないようにすべきか地味に悩む。
宮廷にいたときは口数も少なく表情も乏しく、常に部屋の隅で膝を抱えていた。
それを気にしたアレクサンドと長女が、童話や騎士物語を差し入れたようだ。
兄三人(アレクサンド・エセルリック・ウィルフレッド)、姉三人(ヒルデガルダ・ルイトエーデ・ベルトレーデ)の末っ子。
現・天地創世の魔剣使いの次男とはあまり会話をしたことがない。
リューシア/リューカは“光り輝くもの”。
マグナ/マグネルは“大いなる(王)”。
エスタルシア/エスタルスは“エスタルス(地名)出身の”
“リューシア・エ・マグナ・エスタルシア(エスタルス出身の大いなる輝く者)”だけで王家を指す姓名。
本来なら庶子であるため彼女は名乗れぬが、執行騎士となるに伴い、改めて名乗りが許された。
王の正統となると“リューケマグナ・エスタルス”と名乗るらしい。
将来の夢はお嫁さん。
無事に生き残られればセレーネを抜く高身長に、フロー並みの胸部戦闘力を持つようだ。生き残られれば。
◆メアリ(或いはアマルメリア・ラクサン・ウィルメシア)◆
魔剣の王の汚染と虐殺により、エルフは一部を残して竜の大地を去った。
死んだ骸が汚染を生み生物が魔物に成り果てるいわば“バイオテロ”のような土壌を嫌ったためだ。
エルフの大脱出時に純血はまだ多少居たが、概ねが戦乱や奴隷化により命を落としている。
彼女の母はそんな中、魔剣の王との諍いの最中に虜囚となったもの。伏撃猟兵の中で、魔力に優れた子を産まされ続けた。
およそ百六十歳ほどの頃、今の王家の元となる家に仕える。
帝国の昔に失われた魔術の復興を試みているという話から潜入させられた彼女は、そのまま執行騎士の前身となる“隠密部隊”の立ち上げの中の一人となった。
なお伏撃猟兵は実は密かに魔術を伝えていたが、排他的な土壌からそれが外部に漏らされることはなかった。
そんな間に王家は天地創世の内の二振りを手に入れ、魔剣に選ばれたという正統性によって、戦火を逃れた神殿から秘されていた〈浄化〉他の魔術を受け継いでいる。
得意な魔術は虫に類するもの。
その出身のために、拷問や見せしめなど残虐な技が多い。
半森人はおおよそ十年で人間の一歳相当。
純血の森人となると、更にその十倍歳を取りにくくなるらしい。
好きなものは読書。雑談。
五人とも実は読書は嗜むことができるのだが、約一名は周囲から“それだけはない”と思われている。
なおメアリの読書ジャンルは職場恋愛もの。悲恋もの。バッドエンドもの。
「ははは、羊さんがたは幸せそうでやがっていいですね」とは当人の談。全て微笑ましい喜劇として歪んだ形で読んでいるらしい。
執行騎士時代、うっかりエルマリカ秘蔵の甘味を食べてしまった際に「メアリさんとはしばらくお話したくないわ」と言われたショックで三日くらい食事が喉を通らなくなった。