【小咄】幼い三人のお話(シルヴィア+レイハルク+セシル+α出演)
2017年07月05日 (水) 19:40



「でね!!その時アリシアってば…――」
「――なのよ!?公爵家の令嬢としてありえないわ!」
「あの子、ニシンのパイを食べて目を輝かせて…――」
「――あんなに分かりやすいなんて…――」


「うんうん(…また始まった)。」
「…はあ。」

「ちょっと!ちゃんと聞いてるの!?」

「「聞いてる。」」
「だからね!!アリシアが…――――」


今日も今日とて王宮の庭園でお茶会を開いていたレイハルクとセシル、シルヴィアは最初は近状報告程度だったが、気づけばシルヴィアのシルヴィアによるシルヴィアのための「妹アリシアへの愚痴」ならぬ「アリシアが可愛すぎてつらいから話を聞いて!!」大会へと発展していった。


そろそろ終わらないかな、と誰もが思っていた時。シルヴィアの従者であるランドの元へ王宮のものが何かを耳打ちし、それを聞いた途端普段はポーカーフェイスなその顔を驚きに染める。
そして足早に未だ熱弁しているシルヴィアの元へと駆け寄って言葉を遮る。

「―――っでね、それで」
「シルヴィア様」
「え、なによランド?」
「アリシア様が風邪を引かれて寝込まれたそうですが…」

いかがなさいますか、と続こうとしたランドを遮って、音を立てて立ち上がったシルヴィア。なんだ?と耳を傾けていた二人はその音にビクリと体を跳ねらせる。

「ど、どうしたの…?」
「ごめんなさい、二人とも!急いで帰らなきゃいけなくなったの!」
「いや、シルヴィア様が急いで帰っても何も変わりませんが。」
「煩いわよランド!!と、兎に角急用なのよ!失礼するわ!」

お辞儀だけ優雅に行ったシルヴィアはそのまま早歩きで駆けて行った。
その様子をポカーンとみていた二人はその後視線を合わせて、ぷっと笑い出す。

「全く…シルヴィアは本当に…ふふ。」
「はあ、何であれで素直になれないんだか…。」

シルヴィアに振り回され慣れている二人のことだ。もうすでに他の話へと移行している。その前にシルヴィア宛に風邪によく効くとされるものを届けるように従者に言うことも忘れずに。

なんだかんだ言いつつも二人は、シルヴィアのことを大事に思っているのだろう。セシルは自分の主人の婚約者候補としてではない、一人の友人として。レイハルクは例え政略で婚約者候補にさせられたとしても、一人の愛おしい、唯一の女の子として。


また次のお茶会でシルヴィアが永延とアリシアの話をするだろう。けれど、またかなんてため息を吐いたり、呆れを隠さない表情をしたとしても。二人は何度でも、シルヴィアの話を聞くことだろう…―――。






婚約者候補というのはまだ婚約をしていないため書かせていただいてます。ちなみにシルヴィア以外の婚約者候補はいません。ですので事実婚約者でいいのですがなんせまだ幼い設定なので…。
フィクションなのでどうか適度にツッコミつつ…笑

感想や指摘等ございましたらどうぞコメントに書いていただけたら…。あ、ですが何卒ご容赦くださいませ…。

悠子
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