レビューもらいました! 新作短編、どうすればいいかご教授ください(ノД`)
2025年04月21日 (月) 05:19
レビューもらいました!!
王太子は、傘を傾けた
宝月 蓮 さんと
水渕成分 さんにいただきました!
もうもう、いつも嬉しいレビューを本当にありがとうございます✨✨
これ、実は1位取る気満々で、いけるって思って書いてたやつだったんで(結果はお察し)、こんな風にレビューをいただけてめちゃ嬉しいです(T ^ T)
本当にありがとうございましたー!!
お二人にいいことありますように!!
新作についてお聞かせください!
そして今年の短編6作目。
婚約破棄されたら聖女になりました。今さら破棄は誤解と言われましても。
こちらも1位狙いたい!
と思って書いたんですが、滑り出しを見る限り1位はきつい。
で、ちょっと相談に乗って欲しいんですが。
これから読むからネタバレが嫌って人は、飛ばしてくださいね。
私なりにどこがダメなのか考えてみました。
・王子がラズロを踏んじゃうのとかやりすぎ?ダメ?
・セリアが背負い投げした後、結局やられちゃっているのがスッキリしない?
ぶん投げた後、すぐ王子が来て、ラズロを処分した方がいい?
(でもそれだと、ラズロの処分が甘くなってこれもスッキリしないかなぁとか)
・セリアの性格をもっとカラッとさせた方がいい?
直した方が良いのか直さない方が良いのかわからなくなってるので……
反映するかどうかわからないんですが、一個人の意見として、適当に発言しちゃってくれると嬉しいです。
他にもなにか気になることがあれば。
設定ガバガバなんで、色々言われそうですけれども(;´∀`)
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
改稿前作品はこちら。
色々間違っててひどいっす(笑)
興味のある方だけどうぞ(;´∀`)
「セリア・アーデン。君との婚約を、ここに破棄する!」
舞踏会の華やかな空間に、突如響き渡ったその声に、会場が静まり返る。すべての視線が私に集まり、空気が一変した。
(……やっぱり、こうなる運命だったのね)
私は静かにグラスを置き、ドレスの裾を整える。これほどまでに堂々とした裏切りを目の当たりにして、むしろ清々しささえ感じる。
「理由をお聞きしても?」
私の問いかけに、ラズロは冷徹な笑みを浮かべた。
「お前のような冷たくつまらない女では、将来が思いやられる。僕の婚約者にふさわしいのは——」
ラズロの目が示した先、私の視界に入ったのは、彼の隣に立つ金髪碧眼の少女、メリアナだった。平民出身でありながら魔力の才を持つと噂され、彼女の指にはすでにラズロからの婚約指輪が輝いている。
「……そう。貴方が選んだのは、この方だというのね」
私は微笑む。薄く、そして冷たく。
メリアナは恥じ入るように私を見つめていたが、その視線の先には、もはや私の存在は無かった。ラズロに選ばれた彼女が、私の代わりになったのだ。
(もう、すべて決まっていたのね)
貴族としての誇り。
どれだけ尽くしても愛されなかった悲しみ。
怒りも、憐れみも、一瞬で胸に渦巻いて——
私の中でなにかが吹っ切れたその瞬間、会場の空気が一変した。
突然、まばゆい光がフロアを包み込み、私の体が浮き上がるような感覚に襲われる。
「なんだ、この光は!?」
「ま、眩しい! これは魔力か?」
周囲の驚きの声が響き渡る中、私の頭の中に、ひときわ明晰な声が響いた。
『祝福された乙女よ。汝、聖女として選ばれたり』
(……聖女?)
神話で語られる、百年に一度、神に選ばれ魔を浄化する力を持つという存在。私はそれを夢物語だと思っていたけれど——まさか、私がその〝聖女〟だなんて。
光が収まったその瞬間、私は純白のドレスに身を包まれていた。輝きがまだ少し残る中、会場内は騒然となり、次々と貴族たちが私に膝をつく。
「聖女様……!」
誰かが声を上げ、それに続くように他の貴族たちも次々と頭を垂れた。私を侮辱していた者たちが、今や畏怖と尊敬の眼差しを向けているのが感じられる。
「な、なんだって……セリアが、聖女だと……!」
ラズロの顔が見る見るうちに蒼白になる。
「いやだ、冗談よね……私が、聖女になるはずだったのに!」
メリアナが慌てたように叫ぶが、誰も彼女に構わない。私に向けられる視線はただひとつ、畏れと驚き、そして少しの嫉妬で満ちていた。
そのとき、突如として扉が開かれた。
「——下がれ」
低く、よく通る声。その一言が、すべてを変えた。会場中の視線がその人物に集中する。
「カイン・レオンハルト殿下……!」
この国の第一王子、現王の後継者である彼が、鋭い目を光らせて私の前に歩み寄る。漆黒の軍服を纏い、まるでその存在そのものが圧倒的であるかのように、王子は私に向けて語りかけた。
「聖女セリア・アーデン」
彼の目を見た瞬間、心が引き裂かれそうなほどの強い感情が湧き上がる。鋭く、冷徹な瞳の奥に、なにか深い哀しみを感じ取った。
「貴女を、王国直属の守護騎士として俺が守る」
「えっ……?」
王子の宣言に、私は言葉を失った。
「神託はすでに伝えられている。貴女はこの国の要。よって、俺の直属に置く。異議は——ないな?」
最後の一言は、ラズロに向けられていた。
ラズロは言葉を詰まらせ、結局、膝をつく。涙を浮かべているようにも見えるが、それがなにを意味するのか、私は知る由もなかった。
「……は、はは……っ、冗談だろ……僕の婚約者が……王子の守護対象に……?」
皮肉な運命だ。私を捨てたその瞬間に、すべてを失ったのは他ならぬラズロ自身なのだから。
「俺が導こう。聖女を──この国の光を」
カイン王子が手を差し出す。その手に触れた瞬間、運命が私を完全に飲み込んだことを感じた。
(これから、私は——ただの〝捨てられた令嬢〟ではなく、聖女として、この国を、未来を動かすことになるんだわ)
その予感をひしひしと感じた私は、王子の手を握りしめ。
一歩、踏み出す。
新たな運命へと向かって。
***
翌朝。
分厚いカーテンが開けられ、黄金色の陽光が豪奢な客間を照らし出した。
まぶしさに目を細めた私の視界に、ありえない光景が飛び込んでくる。
ベッドの脇に立っていたのは、まさかのカイン王子。
「な、な……なんで……ここに……っ!?」
「聖女は王直属の存在だ。ゆえに、警護は最優先。これからは四六時中、俺がつく」
(し、四六時中……!?)
耳を疑った。いや、それ以前に、朝起きたら枕元に王子がいるってどういう状況なのかと。
「たしかに護衛騎士がつくとは聞いてましたけど……まさか、殿下ご本人とは……」
「問題か?」
「問題しかありません!」
「……ああ。だが、こうでもしないと、私は動けないんだ」
カイン王子は視線を落とし、ふと遠くを見るような目をした。
「王族は、己の意思で動けない。私もまた、〝王子〟という立場の中に閉じ込められている。だが——貴女の警護という名目があれば、私は私として動ける」
「……え……?」
「俺には、聖女の力を見極め、守り、育てる役目がある。だから、傍を離れるつもりはない」
それだけじゃない、とその瞳が語っていた。
けれど彼は言葉を繋がず、ただ私の手を取る。そして、甲にそっと唇を落とした。
「……っ」
「三か月後、貴女は神殿に迎えられ、国家の柱となる。その時が来るまで、俺のもとで準備を整えてもらう。訓練も、実務も」
「訓練……ですか?」
「聖女はただの象徴ではない。魔物を浄化し、人心を導く力が求められる。その素質が、貴女にはある」
昨日、私の中に灯ったあの光。あれは確かに、〝なにか〟が目覚めた感覚だった。
「……わかりました。殿下のご期待に、応えてみせます」
「そうか」
わずかに笑ったその顔は、王子としての仮面を脱ぎ捨てた、一人の人間としての優しさを宿していた。
それからの日々は、息つく間もないほど忙しくなった。
朝は魔力制御の訓練。昼は礼儀作法と戦術。夜は、王宮の政務を王子と共にこなす。
カイン王子は厳しく、冷徹なほど理路整然としていた。けれど——
彼は、絶対に私を見捨てなかった。
私がつまずけば手を差し出し、言葉を失いそうな時には、黙って隣にいてくれる。
感情を大きく見せないだけで、誰よりもまっすぐに向き合ってくれる。
心を誰にも明かさないようでいて、その奥に、静かで確かな温もりを持っている人だった。
そしてその温もりに──少しだけ、近づきたくなる自分がいた。
***
一ヶ月後。
王都北方の黒霧の森で、魔物の群れが出没したとの報せが入った。
「出るぞ、セリア。初陣だ」
「……えっ、私も!?」
「貴女の浄化の力が必要だ。俺が守る。心配はいらない」
そう言って、カイン王子は私の手を取ると、迷いなく馬車へと導いた。
初めての任務。不安と緊張が、胸の奥で波のように揺れる。
「……王子様」
「なんだ?」
「怖いです……」
正直にそう告げた私を、カイン王子はじっと見つめていた。
彼は私を裏切ることはしない。ならば、私も王子の心に応えたい。
勇気を振り絞って、私は言葉にする。
「でも……貴方と一緒なら、戦える気がします」
その瞬間、彼の瞳が僅かに揺れる。
「……必ず守る。命に代えても」
カイン王子の言葉に、胸の奥がふるりと震える。
彼にとって私はただの任務なのかもしれない。
それでも——ほんの少しだけ、この人の特別になりたい……そう、願ってしまった。
黒霧の森に到着して馬車を降りると、空気が一変する。
名の通り、森は黒い霧に包まれ、ひやりとした風が肌をなぞった。
足元からはじわりと魔の気配が滲み出してくる。遠くでは、唸り声と蹄のような足音が混ざり合っていた。
「セリア、気を抜くな」
「わ、わかりました……!」
王子は剣に手をかけながら、私の前を歩く。
その背中は、まるで軍の指揮官のように頼もしく、まっすぐだ。
私はその背に引かれるように、必死で歩を進める。
怖いはずなのに、今はそれ以上に、胸の奥に熱を帯びる感覚がある。
それは〝力〟の兆し。
私の中に、確かに息づく光が——呼ばれている。
「来るぞ」
その言葉の直後、茂みが揺れ、魔物が姿を現した。
「きゃっ……!」
鋭い牙、唸り声、真紅に光る目。
凍りつくような恐怖に、私はその場に固まってしまう。
「セリア!」
王子が私の前に立ち、剣を抜き切り裂いた。
魔物を睨む眼差しは鋭く、それでいて、背中からは揺るがぬ安心感が伝わってくる。
「私……ちゃんと、戦えるでしょうか……?」
「できるさ。貴女の力を、俺は信じている」
その声に背中を押されるように、私は目を閉じた。
胸の奥にある光を、そっと掬いあげるようにして祈る。
「神よ、この邪なるものを清めたまえ……」
私の手のひらの上に丸い光が現れる。
まるで天から降りた一条の光が、森を照らすようにほとばしり、魔物を包み込む。
「ギャアアアッ!」
魔物の悲鳴が霧の中に消えていく。
残されたのは、透き通るような静寂だけだった。
「これが……私の力」
呆然と立ち尽くす私に、そっと囁く声が届いた。
「すごいな、これは……」
カイン王子が、信じられないものを見るように私を見つめている。
「……貴女の力は間違いなく覚醒している。予想以上だ」
「でも……これで終わりじゃないんですよね?」
「もちろん。群れはまだ森の奥にいる。気を緩めるな」
私が頷いたその時、再び気配が押し寄せた。
「もう一度、力を使ってくれ。今度は広く、全方位に」
言われるまま、私は力を集中させ、両手を前に差し出すように広げる。
光の球体が現れ、力を練るとさらに大きくなった。そしてそれを周囲へ広げるように解き放つ。
「……神よ、浄化の光を!」
私の祈りに応えるように、光が四方へとほとばしる。
瞬く間に、霧の中の魔物たちが悲鳴を上げて消えていく。
それはまるで、奇跡のような光景だった。
「浄化が終わったな。貴女のおかげだ」
王子が小さく笑ったその顔に、優しさが滲んでいる。
その笑みに、胸の奥が高鳴った。
「……私、ちゃんとできてましたか?」
「もちろんだ。……よくやった、セリア」
思わず顔が熱くなる。心が、じんわりと温かくなっていく。
自分の中に眠っていた光。
そして、それを信じてくれる人。
王子がそばにいてくれる限り、私はきっと、どこまでも強くなれる。そう、思えた。
魔物を浄化した後、私たちは森を抜ける。そして王都へと帰る馬車に乗り込んだ。
「セリア」
その声に、私は自然隣に座る王子を見上げる。
「……なんでしょう、殿下?」
王子の表情は、いつもと違って真剣で、どこか深いところを覗き込むような眼差しだった。
「貴女は……本当に聖女として、国を背負っていく覚悟があるのか?」
その言葉には、重い意味が含まれている気がして、私はしばらく黙ったまま考え込む。
心の中でぐるぐると考えが巡った。
聖女としての使命、王国を守る覚悟——それらがすべて、私の力になるのだろうか?
でも、確かに感じる。私は、この国と人々を守りたいと心から思っている。
「……あります。私は、これからもこの国を守るために、力を尽くす覚悟があります」
そう言った瞬間、胸の奥でなにかがはっきりと定まった気がした。
王子は、しばらく無言で私を見つめた後、ゆっくりと頷く。
「そうか。ならば、共に戦おう」
その言葉には、私のすべてを受け入れてくれるような、温かさが込められていた。
心の中で、小さく頷く自分がいる。
これからも、王子と共に。
胸が高鳴り、空気が少しずつ変わるのを感じた。
この国を守るために——私は、聖女としての道を歩むことを。
王子の隣で、共に戦い、守り続ける。その覚悟を、今、心に深く刻んだ。
***
それから二ヶ月後。
数々の試練を乗り越えた私は、王都の神殿で正式な浄化儀式に臨むこととなった。
白銀の装束に身を包み、神官や王子に見守られる中で儀式を終える。
そして部屋に戻る途中の回廊に、見覚えのある影が立っているのに気づいた。
「……セリア」
——ラズロ。
背筋に冷たいものが走る。
そこにいたのは、かつて私の婚約者だった男、ラズロ・ヴェイン。
貴族の次男で、今は王城の文官を務めている。私が聖女としての力を覚醒する前に、あっさりと婚約を破棄した張本人だった。
「久しぶりだね。……驚いたよ。こんなに立派になって」
「……なんの用ですか」
できるだけ冷静に返す。
けれど、心のどこかで、まだこの男の存在が私の傷を抉るのを感じる。
ラズロは、懐かしさを装ったような笑みを浮かべながら、私の間合いへ平然と足を踏み入れてきた。
「いや……当時はちょっと焦ってたんだ。誤解だったんだよ、あの破談は」
「誤解?」
「そう。お前がここまでになるなんて、本当に思わなかった。だから、今こうしてな……もう一度、お前の隣に──」
「黙って」
胸の奥で、何かがぷつりと切れる音がした。
「〝価値がない〟と切り捨てたのはあなたでしょう。なのに今さら、都合よくすり寄ってくるなんて」
ラズロが言葉を継ぐより早く、私は彼の胸倉を掴み上げた。
「もう一度言ってみなさい。〝お前の隣に立ちたい〟って!」
そのまま、三ヶ月の鍛錬と試練の成果を込めて、肩口から思いきり投げ飛ばした。
「ぐああああっ!?」
鈍い音を立てて床に叩きつけられ、うずくまるラズロを見下ろしながら、私は冷ややかに言い放つ。
「〝つまらない女だ〟って、あなたが言ったこと、忘れてませんから」
ラズロをその場に残して歩き出す。
けれど、背後から足音が迫ってくるのがわかった。
「ま、待ってくれ、セリア! 今はもう——」
「近づかないでください。……でなければ、もう一回投げますよ?」
睨みつけると、ラズロは一瞬怯えたように足を止めた。
その瞬間、ようやく私の中でひとつの過去に決着がついた。
(もう、私はあの頃の私じゃない。過去なんかに、縛られてたまるもんですか)
——そう、思ったのに。
「ふざけるなッ……!」
「!?」
突然、ラズロが顔を歪めて、叫ぶように私へ飛びかかってきた。
「お前が! 俺を投げた!? くそみたいな女のくせして、澄ました顔しやがって!」
「やめ——っ」
避ける暇もなかった。
腕を掴まれ、強引に引き寄せられた体は、そのまま背中から壁に叩きつけられた。
「っ、痛っ……!」
呻いた瞬間、腕を締め上げられる。
暴力的な力に、じりじりと自由を奪われていく。抵抗しようと力を込めても、男の体格と力には敵わなかった。
(私、あんなに頑張ったのに。なのに……!)
悔しかった。
試練を乗り越えても、力を磨いても、拘束されてしまえば女の体ではどうにもならない——その現実に、涙が滲みそうになる。
「離して……っ!」
「離すわけないだろ。王子の寵愛? 聖女? そんなもの、関係あるか。お前は元々、僕の女だったんだ。もう一度……僕のものにしてやる!」
「っ……!」
恐怖で心臓が跳ね、視界がにじむ。
(誰か……誰か……!)
そのとき。
「——汚らわしい手を、今すぐ離せ」
静かに、しかし底冷えするほどの威圧を帯びた声が、廊下に響いた。
「……え?」
ラズロが振り返る間もなかった。
風を裂く音が、私の耳を打つ。
ドガッッッ!!!!
廊下に音が響くと同時に、王子の拳がラズロの頬を正確に捉えた。
その瞬間、ラズロの体は空を飛び、廊下の柱に叩きつけられる。
「うがっ……ああああああっ!!」
悲鳴とともに崩れ落ちるラズロを前に、王子がゆっくりと私へと歩み寄ってきた。
「セリア。怪我はないか」
その声に、私はようやく呼吸を取り戻す。
「……っ、殿下……!」
どうしようもなく震えてしまった手。カイン王子がそっと両手で包んでくれる。
「遅くなって、すまなかった。……もう大丈夫だ」
「……はい。ありがとうございます……!」
ほっと息を吐いた王子は、そっと私の肩を抱き寄せた。
そして、倒れたラズロを冷ややかな目で見下ろす。
「貴様のような下劣な男が、彼女の婚約者だったとは……。国家の恥だな」
「ち、違っ……! セリアが、調子に乗ってるから……!」
「黙れ。その名を呼ぶな」
足が音を立てて振り下ろされ、ラズロの胸を容赦なく踏みつける。
「貴様は王都から永久追放だ。……本来なら、死罪にしても足りん行いだ。それを俺が見逃してやることに、感謝しろ」
ラズロは顔を青ざめさせたまま呻き、やがて意識を失った。
王子は私の方へ向き直り、その目に優しい光を宿す。
「……怖かったな。けれど、よく耐えた。……あとは、俺に任せてくれ」
その言葉に、もう何も言えなくなって——私はただ、小さく頷いた。
***
ラズロは、すべてを失った。
爵位も財産も、そして名誉も。
彼を庇う者は、ただのひとりもいなかった。
一件の報告を受けた国王は、即座に処罰を命じた。
ラズロ・ヴェインは領地を剥奪され、身一つで辺境の僧院へと送られる。表向きは『修行』と名づけられたが、実際には王都からの永久追放に他ならない。
私が彼を振り返ることは、もう二度となかった。
けれど、胸に残ったのは怒りや憎しみではない。
あの夜、絶望の底で差し出された、温かな手のひら。
寄り添い、守ってくれた彼の声が、心の奥に深く刻まれていた。
カイン王子──いや、彼という一人の男性への想いだけが。
夕暮れの星のように、胸の奥で静かに光り続けていた。
***
私たちは、共に政を学び、共に戦い、幾つもの難題に立ち向かった。
時に声を荒らげて言い争い、時に他愛もないことで肩を揺らして笑った。
あるときは、山岳の魔獣討伐の帰り、激しい雨に遭って洞窟に身を寄せた。
濡れた外套を乾かしながら、燃えさしの焚き火を前に、カインがふと漏らした言葉がある。
「……貴女が笑うと、俺は本当に救われるんだ」
ただの言葉以上の重みを感じて、私の胸はきゅうと締めつけられた。
この人の隣にいると、自分は自分でいられる。
誇り高く、まっすぐに、恥じることなく──。
いつしか私は、誰より深く、彼の隣にいたいと願うようになっていた。
それから一年の春。
王宮の庭園が柔らかな光に包まれる季節、カインは夜の帳の下、私を静かに呼び出した。
「セリア。……貴女に見せたい場所がある」
カインに連れられて辿り着いたのは、宮廷の奥にひっそりと残された古い庭園だった。
かつて王妃の私的な空間として使われていたが、今では誰の記憶にも留まっていない。
けれど、その庭はすでに『忘れられた場所』ではなかった。
風に揺れる白と紫の花々──アーモンドとアイリスが咲き乱れ、まるで夜空の星々と共に、私たちの歩みを祝福してくれているようだった。
「一年かけて、こっそり庭師たちに頼んで整えた。……最初から、貴女と見ると決めてたんだ」
カインは、迷いなく私を見つめる。
「俺は王になる。けれど、未来を語る前に、まず一人の男として言わせてくれ」
その手に握られていたのは、王家に代々受け継がれる誓いの剣──
王太子が婚約を申し込むとき、ただ一人に捧げる証。
彼はその剣を地に伏せ、片膝をついた。
夜風が花々を揺らすなか、カインの声が静かに響く。
「セリア。俺は、貴女を心から尊敬している。強くて、誠実で、誰よりも優しい貴女を。……どうか、俺の隣に立ってほしい。王としてではなく、一人の男として、人生を共に歩んでほしい」
瞳の奥に、熱が溢れた。
胸の奥からせり上がる想いが、止められない。
「……そんなの、ずるいです。あなたばっかり、全部言ってしまって」
私だって、何度も救われた。
何度も支えられ、励まされ、笑わせてもらった。
いつの間にか、心はすっかり──この人のものだった。
「私があなたの隣に立っていいのかと、ずっと怖かった。けど……」
「いいに決まっている」
カインは私の手をそっと取る。
温もりが、指先から心へと広がっていった。
「貴女じゃなきゃ、駄目なんだ」
涙が、頬を伝って零れ落ちる。
でも、構わない。素直なままの私でいていいと、カインの目が訴えているから。
「……はい。私でよければ。生涯、あなたの隣に立たせてください」
その瞬間、風が丘を包み、花びらがふわりと舞い上がった。
星々がそれを照らし、ふたりの誓いを静かに見守っていた。
王と、彼の妃となる私の誓いの夜は、確かにこの世界に刻まれた。
その後、カインは王となり、私は王妃として人々に迎えられた。
共に政を治め、時には冗談を言い合いながら、ひとときを分かち合う。
ある夜のこと。
執務に疲れて机に突っ伏したカインの肩に、そっと毛布をかけたとき、彼は目を覚まし、優しく笑った。
「なあ、セリア。今夜、庭を散歩しようか。……あの花が、そろそろ咲く頃だ」
「はい。ふたりで、見に行きましょう」
誰も見向きもしなかった場所が、彼の手で、想いで、私たちの記憶で満ちていく。
苦しみも傷も、寄り添い合えば、花のように静かに咲き変わっていく。
これからも私、彼の隣で生きていく。
王として、妃として……そして、かけがえのない一人の人間として。
この庭に咲いた想いとともに──ずっと。
わ、いらっしゃいませ、ありがとうございますー!!
ああああ、ヒーローがヒロインを好きだとわかるシーンがなかったからかぁ!!
ほんとですね(;´∀`)
もっとヒーローの気持ちが漏れていていいですよね!!
うわぁ、基本的なことを置き去りにしていた(;´∀`)
ありがとうございます、どっかでぶっこんできます!!
お読みくださった上にアドバイスまで、本当にありがとうございました!!