沖縄行ってきました。
2013年02月07日 (木) 23:57
沖縄に三泊四日で行ってきました。まああんまり観光できませんでしたが。
食い歩きは良かった。紅芋美味しいです。






第二話 やはり私の冒険RPGはまちがっている



 もう色々間違ってる私のことは置いておくが、RPG風なこの世界だが技術レベルは前世の私の生きていた時代と比べても何ら遜色は無い。
 と言うことで、冒険に出かけるのに徒歩である必要も無く。

『次は~笈ヶ世~笈ヶ世でございます』

 車内に流れるアナウンスを聞き、隣に座る葵の袖を引っ張ると、葵が背伸びして壁に付いたボタンを押す。

 ピンポ~ン~♪
『次、停まります』

 ボタンが点灯し、車内アナウンスが流れる。
 …………まあ、分かったとは思うが、例え外にモンスターが徘徊していようと地域を巡回するバスに乗れば安全に目的地まで着く。
 RPGの移動って基本的に徒歩じゃないのか…………と思ったのは私だけなのだろうか?
 まあこれを使えばわざわざ道中でモンスターと戦う必要が無くなるのは確かなので便利と言えばそうなのだが。

 そうこう言っている内にバスが私たちが降りる停留所に停まる。
「葵、降りるよ」
 私の言葉に頷き、手を繋ぎあって前へと歩く。
 バスは前世のそれと同じようで、運転的の傍にあるケースにお金を投入すれば良い。
「えっと…………二人で二百円」
 十五歳までは子供料金で半額なので安くついた二人分の小銭を入れてバスを降りる。
「かーくん、行こ!」
 そしてバスを降りた途端、自由な外に出てじっとしていられなくなった葵が走り出す。
「慌ててこけるなよ~?」
 そう注意しながらその背を追いかけるが、中々追いつかない。
 葵のやつどれだけ本気で走ってるのやら…………。
 どうして子供と言うのは常に全力疾走するのやら…………と考え、思わず「子供って元気だなあ」と呟いてしまう。
 かく言う自身も子供ではあるが、どうにも精神的には子供ではいられないせいか、全力疾走と言うものに拒否感を感じてしまう。
「やーれやれ…………」
 あんなに走って、明日筋肉痛だろうなあ…………とか、今日も怪我せずに済むかなあ…………とか。
 そんな夢も希望も無いことばかり考えている私がいて…………RPGってもっとワクワクするものじゃなかったかなあ?
 私のRPGは何か間違ってないだろうか。



 変わったのは世の中じゃない、あなた自身だ。
 と言う言葉が前世の知識の中から出てくるのだが、今の私にはきっと関係ないと信じている。
「おーーー!!!」
 ただまあ、私の目の前で洞窟を見て目を輝かせている葵を見ると、何だか自分が汚れて見えるから不思議だ。
「で、入るのか?」
 私の問いに葵が「そうだよ!」と元気一杯に答える。
 その答えに苦笑しながら洞窟の入り口を見てみる。
 暗い…………が、灯りは持って来てあるから大丈夫だろう。
 それに聞いた話ではたいしたモンスターもいないらしいから大丈夫だろう。
 懐中電灯のスイッチを入れ、一つを葵に渡す。五歳児でも持てる用にペンライトほどの大きさしか無いが、歩くのには支障無さそうな程度には明るいので良しとする。
 そうして足を踏み入れた洞窟だったが、中は割りと広く、五歳児二人が並んで入ってもまだまだ横幅に余裕がある。大体入り口が横六メートルと言ったところだろうか、高さも四メートルほどあり、中々に大きな洞窟だ。
 奥に行くほど道が狭まっているようだったが、懐中電灯の明かりで見える範囲では問題なさそうだ。
「たんけん、たんけん♪」
 声を弾ませ歌う葵が先々行かないようにしっかりと右手を繋ぎ、肩を並べて歩く。
 すでに入り口が遠くに小さく見える程度まで歩いてきたが、モンスターなどは出てきていない。
「このまま出てこないでくれると良いんだけどなあ」
 思わず呟いたそれがフラグだったか…………不意に視界の端に映る影。
 それを見た瞬間、咄嗟に懐中電灯のスイッチを切る。隣の葵が首を傾げながら私を見る。
 その手に持った懐中電灯が今だ点灯しているのを見ると、手を伸ばしそのスイッチを切る。
 そうすると、辺りを暗闇がおお…………わない。
「…………葵、静かにあそこ見てみろ」
 声のトーンを落とし、そっと葵の手を引いてそちらへと視線を誘導する。
「…………ぁ」
 そこにいたのは電気ネズミと呼ばれるモンスターだ。通常のネズミを一回りほど大きくしたような姿をしており、体内の魔力で常に全身に帯電している。そのせいで、存在するだけでパチパチと音を立て、暗闇の中でも光っている。普段は洞窟の中で大人しく鉱物を齧っており、基本的に人を襲うようなタイプではないのだが、例外と言うものがある。
 それが大好物の電気を見つけた時だ。
 例えばこいつらの生息域である洞窟の中に人間が入る時、暗闇を照らすために懐中電灯を持っていくが、こいつらは懐中電灯に流れる微細な電流を敏感に感じ取り、それに群がる。そう言った場合、人間がいようとお構いなく襲ってくる。
 ネズミより少し大きい程度だが、その危険度は群れでやってきた時にある。
 その体から発せられる放電は一匹一匹では微細だが、酷い時は数百匹と言う数のネズミが人に群がり感電死したケースも少なくないのだ。
 だがこいつらの対処方法は簡単だ。
 まずは手元の懐中電灯にスイッチを入れる。点いた明かりをネズミたちへと向け、明かりに気づいたネズミが寄ってくると懐中電灯を足元に置いて下がる。
 そして懐中電灯に群がったネズミたちを。
「葵、これ付けてやっちゃってくれる?」
「分かったー!」
 私の渡したそれ、ゴム手袋を手に嵌め、一匹ずつ腰の剣で刺して行く。
 ほとんど無抵抗に殺されていくネズミたち、そして最後の一匹を刺すと同時に。
 ぴろーん♪
 と、音がする。聞き覚えのある音に葵を見ると。
「ステータス」


【パーソナル】
 水瀬葵(みなせ-あおい) 5歳 男 レベル6

【ステータス】
 筋力24 敏捷18 体力32 知力6 魔力36 抗力49 命中37 回避21 器用19

【スキル】
体術Lv.1
剣術Lv.2
魔法Lv.1
陽属性解禁
天性A
光輝EX
暴れん坊B


 案の定、葵のレベルが上がっていた。
「レベル上がったな」
「うん」
 嬉しそうに頷く葵に思わずジト目になってしまう。
 私のレベルはどうやったら上がるのだろうか?
 そして、何故こいつはこんなにスキル数が多いのか…………。
 と、ここで解説しておくと、スキルはコモンスキルとユニークスキルと言う二つの種類に分けることができる。
 見分け方は簡単で、スキル名の後にLv.と書いてあるのがコモンスキルで、アルファベットが付いているのがユニークスキルだ。
 コモンスキルは主に技術の習熟度を示し、ユニークスキルは技術の才能を示す。あと魔法属性に適正がある場合、属性解禁の表示が出る。それで自分が何属性を使用できるのかが分かる。
 因みにそれぞれのスキルの詳細な説明も見ることが出来るのだが、こいつのスキルは色々おかしい。私のもおかいいことは自覚しているがこいつも十分におかしい。

 ユニークスキル:天性A
 先天性の才能。レベルアップ成長の能力上昇量の増大、特訓効果の飛躍的な上昇、スキル習得期間の簡略化など様々な場面で活躍する。

 ユニークスキル:光輝EX
 陽属性の極みに至る可能性の徴。全てのモンスターに対するダメージを飛躍的に上昇させる。

 ユニークスキル:暴れん坊B
 手を焼く暴れん坊。物理防御が-15%されるが、物理攻撃力が+25%される。

 なんなんだこのチートスキルの数々。
 しかも数も少ない陽属性の使い手って…………どこの勇者だ。
 まあ人のこと言えない部分もあるのだが。

 ユニークスキル:記憶継承C
 前世の記憶を継承しているが、劣化しており、生前の自身のことに関してはほぼ全て欠落している。

 ユニークスキル:生存適応EX
 どのような状況下でもあろうと、生き残るために自身を周囲に適応させようとする。規格外の能力を誇り、自身が適応して無い状況に直面した時、その状況に対応する耐性スキルが発生し、乗り越えるたびにステータスが成長する。ただし、必ず一度は耐え切らないとならないと言う欠点もある。

 ユニークスキル:時間操作E
 概念的に時間を操作する適正を持つ。このランクではまだ一秒未満の僅かな変化しか起こせない。

 と言うのが私のスキルだ。
 前世の記憶を持っていること自体がスキルになってるとは予想外だったが、それ以上におかしいのはこの生存適応と言うスキル。ありていに言えば、あらゆるものに耐性を持つスキルだ。
 ゲームで例えるなら『物理攻撃』で100のダメージを受けた時、次から受ける『物理ダメージ』を100マイナスする耐性を手に入れる。と言った感じだろうか。
 つまり次からは101ダメージ以上を食らわない限りダメージを通さないのである。
 しかもこれは魔法のダメージや状態異常などありとあらゆる場所で適応され、耐性に応じてステータスまで上がったりするから驚きだ。
 レベル0の私が葵と共に冒険できているのはある意味このスキルのお陰だと言える。
 それとレベルアップによるステータス上昇は無くとも、この世界が現実なのは間違いないのだから普通に体を動かせば体力が増えるし、力仕事をすれば筋力が増える。その辺りは普通のRPGには無い概念だろう。
 だからもし私が真面目にRPGしようと思うなら、体を鍛えつつこのチートスキルに磨きをかけていくと言う凡そ通常のRPGと言う言葉から連想するものとはまるで違う行動を取る必要がある。
 …………RPGって何だっけ?
 と思わず思ってしまうのは無理も無いと思う。

「かーくん?」
 思考の渦に飲み込まれていた私を現実に引き戻したのは葵の心配そうな声だった。
 どうやら短くない時間思考に耽っていたようだが、気を取り直して冒険を再開しようと思う。
「大丈夫、そろそろ行こっか」
 少々ネズミに齧られたがまだ使えそうな懐中電灯を拾い、そう言って笑うと、葵もすぐに笑顔で頷き、また手を繋いで歩き出す。
「葵の懐中電灯は無事?」
「うん、大丈夫だよ」
 ほら、と言って見せてくる葵の懐中電灯は本人が言う通り、特に問題は無さそうに見える。
 私のも齧られてしまってはいるが明かりは付くので問題ないだろう。
「ならこのまま続行で問題ないな」
 無い…………よな? と自身に問いかけ、問題ない、と自答する。
 ならば、と歩き出してすぐに洞窟の奥、暗い闇の中にふわりと浮かぶ赤い光。
「………………何かいる」
 私の言葉に葵が腰の剣を引き抜き…………懐中電灯の明かりを消し、少しずつその光のほうへと近づく私たち。
「気をつけろよ、葵」
「うん、わかってる」
 事前情報で調べたモンスターの中にあんな赤い光を出すやつはいなかったはずだが…………。
 そもそもモンスターなのかすら分からない。
 だからこそこうして少しずつ近寄っているのだが。
 カラカラカラ…………と音がする。勿論私たちではない。
 となるとあの赤い光からか?
 一体何の音なのか…………まるで糸車でも回しているような。
 カラカラカラ…………音が近づく。
 そして、徐々にだが、その光の正体が見えてくる。
 カラカラカラ…………。
「………………は?」
 近づく光、その光に照らされ映し出されたソレに思わず声が漏れる。
 カラカラカ…………。
 ピタリ、と止まる音。そして思わず立ち上がった私はソレの全貌が見る。

 おでん始めました。

 そう書かれた張り紙。器用に引っ掛けられた暖簾(のれん)。そして沸き立つ白い湯気。
 屋台だった…………どこからどう見ても屋台だ。
「へいらっしゃい…………居酒屋屋台にようこそ」
 鉢巻を巻いたオッサンが私たちを見てそう笑いかける。

「……………………なにコレ」

 それは果たして…………誰の心境だったのだろうか。



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退会済
2013年02月08日 20:46
沖縄って地味に北海道よりもアニメとか充実してたりしてなかったり……