2011年07月08日 (金) 10:23
こんにちは、らいとてん、です。
「So what?」第27話を投稿しました。
ヴォルデがんばれー。
ちなみに、モニカの前世アキラの母親も天然だったんだよ。
そんな天然嬢を落とすのに、アキラの父親は10年かかったんだよ。
ヴォルデがんばれー。
(大事なことなので二回言いました。)
***【27.5話】『小さなリーナス』***
リーナスは兄弟達の中で一番小さかった。
王宮の柱に家族で印した肉球スタンプを見上げ、彼は、しょぼん、と尻尾を垂らす。
成長の証として刻まれた肉球跡は上にいくほど新しい。
赤色は、爪まで刻まれた御母様。
青色は、丁寧に押された御父様。
藍色は、所々、人態化した手の跡もあるモニカお姉ちゃん。
紫色は、所々、尻尾の跡も付けているエルティナ。
緑色は、兄弟の中で一番大きいアルクィン。
橙色は、ちょっと掠れてしまって雑なバルトロ。
黄色は、兄弟の中で一番小さい、僕。
他の兄弟の肉球スタンプは、上にいくほど大きくなり、両親のものと変わらない大きさになっていく。だが、リーナスの肉球スタンプだけは、まだ他の兄妹の半分ほどしかない。
(どうして、僕は小さいままなの?)
御母様に相談してみた。
「我が愛し子よ。大きさなど気にすることはない。見よ。今朝捕ってきた竜だ。私はこれの頭ほどの大きさだが、勝負を挑んでみれば、喰うのは私で、喰われるのはこやつだった。大事なのは、相手を倒す牙を持つか否かなのだ。ほら、お食べ。我が愛し子よ」
――竜の骨は、噛み応えがあってとっても美味しかったの。
御父様に相談してみた。
「リーナスは、一番魔力に対する容量が大きいからね。身体がまだ魔力に馴染んでいなくて、ゆっくりと育とうとしているんだろう。大丈夫だよ。あと千年ぐらいしたら、きっと一番大きいのはリーナスになるよ」
――御父様の難しい子守歌を聞きながら、お昼寝をしたの。
モニカお姉ちゃんに相談してみた。
「リーナスは小さいままでいいんだよ。だって、そっちの方が可愛いから」
――そ、そうかな。
そうかな、と首を傾げてリーナスは肉球スタンプの柱を見上げる。
小さいから、すぐにお腹一杯になって幸せになれるんだ。
小さいから、もっともっと大きくなれるんだ。
小さいから――モニカお姉ちゃんが可愛いって言ってくれるんだ。
リーナスは、うん、と頷くと一番上にまた一つ肉球スタンプをつけた。
前と変わらず小さな肉球跡に、彼はにっこりと笑って、兄弟達の待つパレヴィダ神殿へと駆けていった。
***【27.5.5】『卑小な人間でございます』***
人間は所詮小さなことで右往左往する生き物だ。
離宮の柱に銀の女王一家が刻んだ肉球跡を見上げ、彼は、ふみゃん、と眉尻をさげた。
初めて銀の女王御一家が肉球を印される光景を見た時の衝撃は忘れられない。
(北から取り寄せた最高級ビアンコカララの大理石がー!)
絶叫しそうになった。
だが、宮内省の長官としてのプライドが、それを邪魔した。
そして、私は、さらなる衝撃の光景を見ることとなる。
なんと、御子様方で一番小さい御方、リーナス様が後ろ足で立ち上がり、よいしょ、よいしょと上の方に肉球を付けようと、背伸びを始めたのだ。なんと愛らしい・・・・・・! そのまま家に持ち帰らなかった私は偉いと思う。
***
銀の女王一家が住まう離宮を管理する宮内省には苦労が絶えない。落雷・爆破・水没は日常茶飯事だ。荘厳な宮殿を何の躊躇いもなく破壊する銀の女王御一家に、今日も長官の声にならない悲鳴が挙がる。
そんな彼が、ちょっと疲れたと思った時に見上げるのが、この柱だった。
見よ、天を目指し印されたリーナス様の肉球を。
なんとお小さく愛らしいことか。
リーナス様の肉球スタンプが見られるのは離宮職員だけ!
「可愛いは正義!」
長官は、明日も頑張ろう、と天に拳を突き上げた。
暑気払いに爽やかな喉越しの一角獣の血をどうぞー、とリーナスが冷えたグラスを差し出しています。鈴月鈴様のために捕ってきたそうです。後ろで、「大切な者のために牙を振るうとは。我が愛し子の魔獣としての器は、十分に大きく育っているようだ」と、御母様が満足げに頷いておいでです。
暑い日が続きますが、本当にお体にはお気を付け下さい。