天下国家というもの
2022年04月02日 (土) 19:12
ウクライナ事変(戦争と称しても良いが、これの方が今は適当だろう)の報道やその認識で私は強烈な違和感と既視感を抱いている。

ごくごく一般市民が私の抱く違和感やら既視感であっても当面は問題がないだろうが、こと政治家や軍人、軍事評論家がこれではいただけない。

報道ではウクライナの一枚地図が示され戦況が付記される。特にYahoo!の特集記事が代表例として扱いやすい。

だが、それは戦場や戦域というものであって、戦争や事変を理解するにはとてもではないが不十分なものと言える。

例えばだが、野戦軍司令官やその参謀が戦場となる地域だけの情報で戦闘を行うのかと考えればわかるだろうが、戦場だけでなく戦域全体を戦線全体を見渡して作戦行動を立案実行する。

では、戦争報道というそれはどうだろうか?

戦場での悲喜こもごもを報道するという例もあれば、淡々と戦況を報道するという例もある。双方のプロパガンダ報道合戦という例もある。

さて、では、戦争ないし事変とは、その戦場のことだけで考えて良いのか?

そんなわけがない。

戦場を左右するのは戦術であり、戦術を左右するのは戦略である。また戦略を左右するのが国家戦略であって、国家戦略を左右するのが世界戦略である。

では、その国家戦略や世界戦略を考えるとき、戦域地図で考えるのか?

無論そんなわけがない。そういったものは地球儀を基本として考えるものだ。

世界地図ではないのかと問われるかも知れない。だが、それは半分正解で半分間違いである。世界地図はメルカトル図法で示されるが、それだけで必要とされる情報を読み取れるわけではないからだ。そこで地球儀なのである。そこからはメルカトル図法で示せない情報が見えてくる。

さて、そこで考えて欲しいが、ロシアが弱体化して本当に得をするのが誰であるのか、である。

それはどの視点で読み取るか、そこで地球儀の役割である。

北極航路やオホーツク海を押さえているのがわかるだろうが、ここに空白地帯が出来たらどうだろうか?

千島や樺太をロシアが押さえていることのメリットを受けているのは日米だとわかるはずだ。

これは南西諸島や台湾が存在することで支那を太平洋に出さない防波堤として機能していることと同義なのだ。

コントロール出来る相手、話し合いが出来る相手とそうではない存在どちらが隣国で強大な戦力を有しているべきかは言うまでもない。

さて、そこでウクライナ事変に話を戻そう。

上記を踏まえてロシアが弱体化して良いのかと。そのデメリットを受け入れる覚悟があるのかと。

支那は沿海州を自国領土だと公言しているのだが、シベリアに空白地帯を生むことがどういう結果に繋がるか、わかっているのかと。

ロシア憎しだの勧善懲悪は大変結構。そのデメリットを撥ねのける力があるならば。

だが、我が国の戦力はそれが出来るのか?冷静にそれを考えたことがあるのか?


追伸

恐らく、読者の一部もしくは大部分かも知れないが、私を血目涙もない輩と思うかも知れないし、時代錯誤の差別主義者と思うかも知れないが、上から目線のいけ好かないヤツというそれもあるかも知れない。まぁ、実際それは間違ってはいないと思うし、かと言って改めるつもりもない。

しかし、こと政治という分野においては、上から目線で見るものであるし、人間の命など所詮は数字でしかない。いかに効率よく国家目標を達成するか、それこそが至上のものであるし、至高の論理だと思う。

だから、ウクライナ事変でもウクライナ切り捨てを述べるし、インドやトルコなどのようにロシアとの距離も大事にする方針を示す。

ついでに言えば、そういう視点でモノを言うことを否定するならば、文字通り思想/思考弾圧の類いだろう。

追伸2

当然、「このはと」の作中も、そう言った視点であるから、特定層は政治的都合や効率によって割を食っているわけだが。その当時の視点ではそれが当たり前なのであって、現代的視点や価値観など有害だと作中でも明言している。
コメント全3件
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有坂総一郎
2022年04月05日 20:11
>地政学

基本はここ。それに国家間の関係や経済関係、資源関係を当てはめる。国民の命の勘定や国民の感情なんて下から数える様なもの。間違っても上下逆になんかしてはいけない。国策を誤るのはだいたいそういう時。

>祖先の死因もあり反露的教育がなされた

まぁ、先祖の仇じゃ仕方ないよ。でも、それはそれ、これはこれだからね。

>ドゥーチェと似た状況

それは言い得て妙かも知れない。実際にスターリンと比較しても、ジューコフやモロトフなんかに相当する人材が見えてこないからね。

>ロシアは定期的に強力な指導者が補充され、なおかつタタール人に潜在的恐怖を抱いている国家です。一時弱体化しても中国如きに御せるものではないでしょう。

そうであって欲しいが、長い雌伏の時を過ごすことになりかねないと思う。まぁ、指摘の通り、シベリアに夢中になって太平洋に目が向かなければ我々にとっては利益だけれどもね。

>ロシアがすでに弱体化「していた」場合

そういった状態であると仮定すれば、支那にロシアを食わせて食中毒に至らせるのは有効な手段にも思えるが、過剰な期待をしていると、机以外の四本足を食う蛮族に吞み込まれるという危険性に遭遇しかねないから要注意だ。
よるくま
2022年04月02日 23:51
有坂先生のご懸念は尤もだと思います。しかし私は祖先の死因もあり反露的教育がなされたのもあり複雑な心持であります。

 敢て意見を述べさせていただくなら今のプーチン大統領は1940年のドゥーチェと似た状況であると言えるのではないでしょうか。どちらも共に傑物であることは間違いありません…しかしその配下はそうではなかった。既にロシアの軍事力が欧米も驚くほどに弱体化していることがあらわになっています。この瞬間ウクライナが全面降伏でもしない限りロシア勢力圏が中国に飲み込まれるのは避けられないでしょう。
 となればロシア勢力圏下にある中央アジアを不安定化させ連中にとっての北アフリカとし国力を消費させる、泥沼のシベリア開発に熱をあげさせるなどが選択肢に上がってくるのではないでしょうか。
 要するに痛めつけ美味しくなったロシアを中国に食べさせ抜け出せなくさせてしまうのです。以前先生も仰っていましたがロシアは定期的に強力な指導者が補充され、なおかつタタール人に潜在的恐怖を抱いている国家です。一時弱体化しても中国如きに御せるものではないでしょう。それまでの時はムスリムの方々に稼いでもらうのが良いでしょう。歴史的に見てもあの民族は海洋進出ではなく西域に進出する傾向があるのは明らかです。ロシアという圧力が無くなったら喜び勇んで西へとむかうでしょう。
 完全な妄想の類ですが、ロシアがすでに弱体化「していた」場合、こうでもするしかないのではないでしょうか。長文失礼しました。
waterwolf
2022年04月02日 19:51
地政学に疎いもので思索の参考にさせて頂きます。
有難う御座いました!