2023年05月08日 (月) 18:23
大和型など各艦に搭載された八九式高角砲だが、しばしば批判される対象になっている。
・発射速度が遅く弾幕形成に不利
・砲が重く敵機に追従出来ない
ただし、松型駆逐艦では電動機出力を増強した結果、用兵側に好評であったという相反した評価がある。
元々、八九式高角砲は敵雷撃機を対処することが目的にあり、比較的長射程の砲として開発されていることもあり、射程や威力については特に不満はなかったようだ。
そこで、だ。
史実ではそういう結果となっているが、「このはと」世界ではどうだろうか?
基本的に海軍については介入は殆どないため、砲の開発や艦船建造は海軍独自で好き勝手にしているという状態だ。まぁ、大角さんや譲らない人が介入している部分もあって史実と違い、天城型や加賀型が装甲空母化しているし、龍驤以後の空母建造もされていない。
それどころか、戦艦については魔改造や存在しないモノが増えている始末。しかし、同様に巡洋艦建造や駆逐艦建造は反比例して遅れ気味(とは言えど、ブロック工法で短期大量建造が可能だが)である。
そういう意味では対空火器への関心はそこまで高くないと言える状況であるが、不足する直衛艦への手当として自衛対空火器への関心が高まる可能性もある。
では、そういった背景で八九式高角砲はどう変化するだろうか?
随分前にも話題にしたが、八九式高角砲と九六式機銃の中間がないことが海軍艦艇の対空弱点と言える。
そして史実海軍当局もこれを実感し、大和における報告において「できれば一〇高(秋月型駆逐艦で採用した長10cm高角砲)程度のものを両舷2群ほど増設してほしい」と要望が上がっていた。
九八式八糎高角砲や九八式十糎高角砲がこれに該当する砲であるのは前述するとおりだが、さて、「このはと」世界においては同時期にこれらが首尾良く開発されるだろうか?
九八式十糎高角砲が開発開始されたのが35年、制式採用が38年である。この開発の経緯には八九式高角砲の運用実績によるものが反映されているが、その際に上記の問題点を解消することが求められ、より発射速度を速くすること、被害半径は同等、射程/射高は増強されている。
だが、良いことだけでなく、砲寿命が低下、機構の複雑化を招いたという。しかし、共通性がある設計を最初からある程度していたこと、砲身の生産数を考えると生産性の悪化(機構の複雑化)というのはどうも考えにくい。
で、大角さんだ。
「このはと」世界では大角岑生という人物は大角岑生であってそうではない。純粋な転生者ではなく他者の憑依に近いと以前書いたと思う。それは作中だったか活動報告で少なくとも戦後世界の知識を有するからだと示している。
史実の大角岑生は41年2月に支那方面視察を実行、その最中に広東方面で消息を絶ち後日墜落機体と遺体が発見されている。どうしたって戦後どころか戦時中の知識も持ち合わせようがない。
「このはと」世界の海軍において表裏で彼が上手く立ち回れているのは、そういった事情からだ。
その場合、九八式八糎高角砲や九八式十糎高角砲という手頃な代物を活用しないという発想に至るわけがないと思う。むしろ、戦後の知識を用いるならば、失敗作という判定が下っている九八式八糎高角砲の採用にも前向きだろう。
しかも、大角さんが作中で海軍の主導権を握った時期を考えると、早期開発に乗り出しても不思議ではないし、イタリアから37mm対空砲を買ってきていることも込みで考えれば、対空火器の充足に舵を切っても不思議ではない。
また、九八式十糎高角砲の砲身寿命の問題も、あらかじめ量産しておけばそのストックを活用して定期的に交換するという格好で対応しておけば良いだけだ。これも、長期計画を前提にしていれば何の問題もない。
砲身のストックの問題に関しても他国の事例を考えれば場所の確保くらいな問題でしかないとわかっている。英帝など軍縮条約の兼ね合いで15インチ砲がゴロゴロしていたというしね。
で、駆逐艦の建造遅延という状況も九八式十糎高角砲、九八式八糎高角砲の本格的採用には好都合でもある。最初からそっちを搭載する前提で建造可能だからだ。
また、初期ロットについては順次、既存艦に八九式高角砲と交換で装備していけば良い。そして九八式八糎高角砲はMEKOシリーズや戦標船などに採用する前提で考えれば尚良いのではないだろうか?
しかし、問題はその砲の製造そのものだ。呉の製造能力をオーバーすること間違いないから、舞鶴かどこかに新設して製造能力を強化しておく必要がある。
あぁ、そうなるとそれも駆逐艦の建造遅延の理由にしてしまえるじゃないか。