2012年09月23日 (日) 23:13
ここまで読んで頂き有難う御座います。
神様トリップしてみたくて書いた物です。
作成途中、中途半端、在り来たり、それでもよければお進み下さい。
なんでそんなの載せるんだ?って?
最近、罵倒がないんですよねぇ…
【 異世界に浮かぶ紫煙の行方 】
『………………起きなさい』
『………起きるのです』
「……起きるから、まず。寝起きの一服を」
『そんなモノ、ここにはありません。ここは』
「あー……、あん? いつもの所に……はぁ?」
『こら、話を聞きなさい。いいですか』
「ない!? ない! 何処にも煙草がない?! どうして! なんで?!」
『通信簿に“落ち着きのない~”って書かれた事あるでしょうぉ。ですからね、まず話を』
「なんでないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! はっ、まさかここは、異世界?!」
『なんで過程すっ飛ばして、結論に辿り着くのですかアナタは。正確には、その一歩手前なんですけどぉ』
「俺は今から、神をも殺す」
『えっ? どう言う思考のステップしてるの? 私しんじゃうの?』
「選べ、お前には選択肢がある。まず一つ、俺に煙草を寄こす。二つ、俺に煙草を渡す。三つ、俺に煙草を買って来る。……さぁ、どうする」
『全部一緒でしょうぉがぁぁ! 最後のは単なるパシリだし! だから、ここにはないっつってんでしょぉ!』
「……あああ? ……ぁぁ!? ……がァぁ……はァはァ、ああア……まままぁ、うぃくレあぃ……タ」
『おいこら日本国籍。日本語喋れや、さっきから話すすまんでしょお。待って、にじり寄らないで』
「タ……ニコ……タタタぁ……ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ。オオ、タァ……ァブ、ぉォコホォォォ」
『神は思った。こいつはもうダメだと……。え? なにこの情念……漏れてる……嘘。具現化まで?! えぇ? まさか、場所が悪いの?! この人、想念だけで場に干渉してる。ちがっ、何処からか横槍が、って……ジジィィィィ!? アンタかぁぁ! よっ、同士よ! じゃないわよアホー! ここは禁煙だっつってんでしょぉ?!』
「クもレ、くモれ、スェェェェ、スェ。ただえ、ただえ、はいれ、はいれ。みちミチみちミチ、チャッカしタイ」
『トエスエアパカリス?! 私達の力を掴んでる!? もういいわよぉぉ! なな、汝、願いを云え! 汝が願いを携えて、死山血河を越える杖にならん事を祈るぅ!』
「チャッカチャッカチャッカチャッカチャッカ。煙草ヲよ、こ、せ、え、ぇ、ぇ」
『一より湧きいで十に届きし汝の願い。十一の御魂はカヤの外、かごめの歌は輪の前で唄うぅぅ! 逝ってこいっ……アァァンスラヴォォォォト!』
「オ? オ? オォ? オオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ………………」
「た、煙草は……?」
悪夢を見たセイか、寝汗をかいた体はベットリしていて気持ち悪い。
シャツを摘み、服の下に空気を送りながら、寝る時も入れたままの胸ポケットの煙草を取り出した。
胸ポケットから煙草を取り出し、火を付ける。今ではこの動作は意識せずとも出来る。
「……ん? あれ、ライターが、あれ?」
なんてこったい、寝てる間にライターだけ落ちたのか、胸ポケットには“煙草しか”無い。
仕方なく煙草のフィルターを甘噛みする。
時間帯は夜、随分と山奥なのだろうか、星があまりにもキレイで、満天の下で煙草を吸えたらさぞやうまいだろう。
そう思いながら、人工の明かりを探すために、俺は夜の山を走った。
しばらく足場の悪い山を駆けていると、ここは本当に日本なのかと疑問が湧いてくる。
そもそも、俺は自宅にて眠りについていたハズである。
日々の煙草代を稼ぐだけの仕事をこなし、疲れた体を煙にて癒す。
ただそれだけの日常を送っていたハズなのだが、これはおかしな事になっているのだろうか。
あてどもない事を考えても、なんら現状に対する救いはなく、結局は振り出しに戻るのだった。
やはりまずは火を見つける事、これに尽きる。
小一時間程、星明かりを頼りに、勘を当てに闇夜を走ると、灯りらしきモノが眼球の端に引っ掛かった。
これで煙草に火がつけられる。安堵の息が漏れた。
口に加えた煙草を落とさないように、俺は更にスピードを上げて疾走する。
車が二台は通れそうな土の道を見つけた。
轍(わだち)の跡ではなく、二本の足で固めただろう黄土の帯だ。道の両端は凹んでいる事から、この道にはルールが敷かれている事を伺わせる。
真ん中には雑草の進入を許してはいない。これだけ山深い場所であって、徹底して道を保持する場合は、おそらく一つだけ。
「まずいな、これは神の道だ。たぶん、この先に神社なり、土着の神を奉る場所があるかもしれん」
端に引っ掛かった光は、祭事の篝火か。
なにがまずいかなんて、今まで走ってきた山で分かろうものだった。
夜には闇より暗く、昼には目の奥で葉緑体が繁殖しそうな緑の規模からして、おそらくここは日本では秘境と言える場所にあるのだと推測出来る。
交通の不便な場所に集落を造る理由など、その先祖は余程の後ろめたい事をして追われたか、政争に敗れて落ち延びたか、真っ当な理由を探す方が苦労するだろう。
と、言っても、どれ程世代を重ねたかは分からないが、今の子孫にはもう関係のない理由かもしれない。
現在の住人達に、理解がある事を望みたくなるが、閉鎖的な環境を過ごしている人間とのコミュニケーションは、非常に繊細な対応を心掛けないとならない。
マレビト信仰を持っているのならば、まだコミュニケーションの可能性はあるのだが……考えても始まらない。
限界集落だろうと、部落集落であろうと、友好、非友好は会ってみなければ分からない。
割合的に、非友好的な態度が大半な事は、頭の隅に追いやった。
「考えている状況は過ぎたような気もするし……」
独り言を呟いたのも、異変を感じたからだ。
足が、勝手に、動く。
別段、ニコチンが切れて体の自由が効かない訳ではない。
まだ、そこまでは達していないと経験則から判断出来る。
では何なのだろうか、自分の四肢が自分の意思で動かない事が、凄まじく不安を駆り立てる。
「外の人間が、道を踏んだ事に神様が両膝を上げたのか。せめて、烈火の如くの怒りなら、一服できるかもしれんね」
負け惜しみでも言ってなければ、やってられんよ、正直。
「貴方様が『ヤマノケ』様の使いか?」
俺の目の前には、高床式の小屋と言って差し支えない木造建築と、中学生か高校生ほどの年で、緋袴に似た着物を身に付け薙刀を構える少女が居た。
ヤマノケ? どこかで聞いた事があるような。
しかし名前の感じからして『山神』の類なのだろう。この地で祀る神の名が妥当だろうが、その使いと勘違いされている。
俺は、咥える煙草を落とさないように、慎重に口を開く。
「いーや違うね。俺の名前は、境行平(さかいゆきひら)。すまんが、火を貰いに来た」
「……旅人か? 悪い時分に来たな。もうすぐヤマノケ様が参られる。早々に立ち去られよ」
「何となく時期が悪そうかと思ったんだがね。こちらは火さえ貰えれば、それでいいんだが」
少し遠慮しながら食い下がる。
そこらにある篝火で十分なんだが、人がいる以上黙って使うには申し訳ない。それくらいは弁えている。
肩口までのウェーブかかった金の髪を左右に揺らし、ここの緑と同じくらい深い木々の色を湛えた双対の瞳は「否」と短く返答した。
堂々巡りになる気配を、別の“あやしい”複数の気配が切欠で、強制的に転換を迎える。
「なんだかねぇ」
「下がって。やはり、タタリはタタリか」
――――チッ、老害共め。唾を吐く仕草をし、口汚い言葉をつく。
ここ、神域じゃねぇのかい。随分な巫女さんだと思いながら、俺の後方から迫る気配の元を観察する。
篝火越しには、はっきり分からないが、3メートルくらいはありそうな“毛虫”が、わらわらわらわらとその数、十をゆうに越える勢いで増え這いずっている。
俺が毛虫に特別な思いを抱えていなくてよかった。
鳥肌モンだよ、こりゃ。
「なぁ、お嬢ちゃん。まさかとは思うが、アレとやり合おうってのか?」
「僕は、しなくちゃいけない事を、したいだけだ。ヤマノケ様の使いだろうが、許す訳にはいかない」
答えているようで要領を得ない回答は、少女の意識が毛虫の群れに集中しているようにも思えた。
緋袴の金の少女は、薙刀に徳利から液体を振り掛けて、ぼそぼそと口ずさみながら臨戦態勢を取る。
どうやら少女は、神様相手に逆らってまで、守りたいモノを持っているようだ。
「ふむ、いろいろ事情がありそうだな。どれ、まだ猶予はありそうだし、そこの火。貰っていいかね?」
「さっきから……好きにしろ」
――――そりゃどうも。と感謝を述べて、俺は篝火から、ようやく火を失敬した。
顔が若干熱かったが、葉が燃え出すと、そんな事どうでもよくなった。
満たされる。
数時間ぶりの煙だったが、一時間を越える禁煙は久々だったので、いや、本当にうまい。
満たされる。
空気なんぞよりも、いっとうにうまい。一気にフィルターの根元まで吸引する。
満たされる。
今の俺は、ダイ○ンの掃除機を越えただろうか。
「なんだ、その煙は! やめてくれ!」
味わっていたら一瞬でなくなってしまった。煙草の蓋を開けて、五本まとめて取り出す。
内の一本に、新しく火を点け煙草の煙が立ち上がる。
ふと気が付いた疑問を、金の少女に話す。
「勝手に俺の煙吸うんじゃないぞ? でだ、お嬢ちゃんアレとヤリ合おうって話かい?」
「誰が吸うかッ! ヤマノケ様の使いだろうと、タタリをここに入れる訳にはいかない」
「勝てないって分かっててもか?」
俺の後ろで、ずる……ずる……と這いずる。
音は先程よりも近く、そして増えている。
篝火の朱色に照らされた、森緑の瞳はこちらを見ている。
覚悟が決まった目が、邪魔だ退いてろ。そう言ってるように見えた。
「難儀なこった。ちっとだけ試してみたい事があるから、やるな」
怪訝な顔をストレートでぶつけてくる金の少女を無視して、二本目を根元まで吸い切り、残りの四本を口に咥えて火を灯す。
しかし、勿体ない。
這いずる毛虫に向かって、火の点いた煙草を一本投げつけた。
リイイィィィィィィ……! 子供のような、甲高い音波のような声を発した。
鼻先に落ちた煙草が原因だろうが、先頭の毛虫が勢い良くひっくり返った。
後続の毛虫は、煙草を嫌がるかのようにうねると、落ちた煙草を迂回し左右に分かれる。
「え?」
「マジカ、本当に効くたぁな」
左右に割れた毛虫の群れの鼻先にも、同じように煙草を一本づつ飛ばす。
黄土の帯から外れる事ができないのか、後ろの毛虫はその場でうねりながらも立ち往生になった。
口に残った一本まで使わずに済んだのは、嬉しい誤算だった。
「うぅ……臭い。一体、何をした?」
「もののけの類、特に山に関する奴らは煙草の煙を嫌う、らしい。案外馬鹿にできんモンだ。けど、完全に引いてくれる訳じゃないみたいだな」
「……らしい、って。確かでもない事に賭けたって言うのか?」
「効かないなら効かないで、そん時はお前さんに任せるさ。そのために、そんな物騒なモン構えてんだろう?」
音にはならないが、金の少女の口が動いた。
「呆れた」くらいは言ってるのだろうか、しかし、違和感が残った。
四文字の音には、口の動きが足りない。別の言葉だったか?
「チーちゃん、まだここから出ちゃダメ~~?」
金の少女の後ろ、粗末な造りの神殿から、間抜けとも思える間延びした声が聞こえた。
「クチナシ! まだダメだ! 良いと言うまでそこに居て!」
厳しい言葉を掛けるも、上回る程に『心配です』と言ってるように聞こえた。
そろそろ状況を整理したい所だな。
取り敢えず、電話くらいはあるんだろうか?
「後ろッ!!」
金の少女が、突然俺に向かって薙刀を担いだ。
言葉と行動の意味は、強烈な衝撃と共に理解した。
首を捻り、俺の背中に伸し掛る毛虫を見る。
油断した、飛び跳ねてきやがったか。
「**、**************……!」
何だ? 上手く聞き取れない。
それより煙草だ。
毛虫のぶちかましを喰らって、俺の口の煙草は何処かに飛んでしまっている。
あまりの出来事に、カチリと怒りに火が点いた。
黒いマグマのようなタールの肺から、そして直前までの残り香も含めて、紫煙は積乱雲のごとく口から立ち昇り、覆い被さってきた毛虫の鼻っ面に直撃する。
毛虫が盛大にひっくり返った。
それを見た金の少女が見逃さず、肩に担いだ薙刀を上から下に力一杯振り下ろす。
土煙を上げる程の一撃を受けた毛虫は、二つに千切れ吹っ飛んだ。
「******? **、********」
どう言う事だ、喋ってる言葉が全くもって理解出来ない。
今まで言葉は通じてたのに?
取り敢えず、口に一本咥え直して礼を述べる。
「すまん、助かった。っと、この言葉は分かるか? チーちゃん」
「誰がチーちゃんかッ! 反応が薄いから心配したぞ!」
「あ?」
さっきから何なんだ、今度はしっかりと言葉が理解出来る。
意味不明具合に、思わずアホっぽい声を上げてしまったが、チーちゃんが何か勘違いした。
「僕はチーハヤと言う名を持っている! それとだ、タタリにあそこまで密着されては心配になるだろう」
「ふーん、チーちゃんタタリってあのデカイ毛虫の事? 神様の使いじゃないの? 近づいたら俺ヤバイ?」
「チーちゃん言うなッ!!」
息荒げて可愛いね。いじられキャラか。
篝火からまた火を失敬して、一服吸って命の有り難味を知る。
煙草を吸うためには命がなくては始まらんよ。
「**! *******?! *******!」
あ? またか……煙草、口に咥えてないな?
おもむろに口にセットして、チーちゃんに話し掛ける。
「なぁ、チーちゃんや」
「おのれぇ……クチナシの奴ぅぅ、余計な事を」
煙草を口から離す。
ついでに投げた煙草を越えられない毛虫に向かって煙を吐く。
「***! ***、********」
あぁー……何となく分かったが、分からんな。
悶える毛虫はうねうねしたと思ったら、口に咥え直した煙草を見たのか、徐々に後退を始めた。
「むッ、相当に煙を嫌がっているか。確かに臭くてかなわないからな」
チーちゃんはシンパシーを感じたのか、哀れみを込めた目で去っていく毛虫の群れを見送る。
煙草が翻訳機能を果たしている事を確認出来た俺は、不条理さに項垂れる。
嫌煙の目で見るチーちゃんは、薙刀を肩から下ろして鞘を刀身につけていた。
「なし崩しだが礼を言う。無事クチナシを守る事にも繋がった」
――――ここまでつくった――――
『謎のお供』
宿のベットで眠りに就いている時の事。
何処からか足音が聞こえ目が覚めた。
タッタタッタと動物の軽い足音に似ていて、気になった俺は起き上がった。
部屋の中、それと廊下も見たが、生物の気配はせず、結局なんの原因も分からず仕舞いで、アクビを大きくあけて再びベットの住人となった。
それから明け方に、腹の辺りに重さを感じて、また目が覚めてしまった。
寝ぼけ眼をこすりながら、腹の辺りをじっと見るも、何か物体が乗っているとも見えない。
少し重いが、上体を起こしてみたら、その重い感覚は転げるようになくなった。
そんな現象が何日か続くと、もう慣れたモノである。
俺は、その現象に「異世界犬型幽霊」略して、ワンコワンと呼ぶ事にした。俺犬派だし。
何故犬かと言うと、俺が犬派だからにほかならない。
俺がベットに入ると、腹の辺りが重くなるので、今では脇に移してから寝ている。
「おーい、ワンコワン。ほれほれ、こっちこい。よし、お前の定位置はここだからな」
実害がないので、そんな感じ。
俺の旅にも着いてきてるようで、それからは先々のベットや野宿で気配を感じた。
旅の仲間が増えたらしい。
『人面瘡』
ある村に立ち寄った時の話である。
宿が一つだけあるような小さな村に――――宿が置かれると言うだけで、街道から離れてはいるが立派なモノだ――――宿泊を決めた際に、チーちゃんに怒られたが、そこの女将さんの様子が慌ただしい。
興味本位から尋ねると、どうやらおかしな病にかかった者が居て、その治療が難航しているとの事。
未だ伝染病に関する正確な情報がないためなのだろうか、仕切りに「大丈夫かねぇ……大丈夫かねぇ」などと、村と患者を心配していた。
俺も宿泊するにあたって、病をうつされてはかなわんとも思うので、女将さんに患者の家を聞き確認しに行く事にした。
あくまで自分のためである。クーちゃんのほんわかニコニコ顔の視線がウザったい。チーちゃんはこっそり溜息付かんでくれ。そもそも俺は医者じゃないんだから。
抗議の煙を吹かしつつ、少ない世帯数の村の中、教えられた家を難無く見付け、雑な造りのドア口を叩き挨拶をする。
ドアを開けたのは30代も後半ではないかと思う女性だった。
本来ならば朗らかな笑みが似合いそうな、気の良さそうな女性を思わせるが、今は心労のためか憔悴した顔にクッキリと目の周り隈をつくっていた。
訪問の意図をオブラートに包み、建前上「何かお手伝い出来るかもしれない」と匂わせながら交渉する。
食付きはとてもよかった。後ろからの視線がちょっと痛い。
どうやら治療の最中のようで、その様子を拝見させて貰う事にした。
ここが異世界だと言う事を忘れていたかもしれない。あ、もしかしたら元の場所にも、あったのかもしれんが。
『人面瘡』生物の表面に、人の顔と思しき痣の事を言う。
この痣は、一般的には『シミュラクラ現象』と呼ばれる現象で説明される。この現象は、人間の心理的作用に依存し、三つの点があたかも人の顔に見えると言うモノだ。
心霊写真の特集なんかに「よ~~く見て下さい」とナレーションが入るのも、このシミュラクラ現象を誘引させんがための、テレビ局の姑息な手管である。
話が反れたな、とま、上記の通り、見間違いと看破されるべきモノであるからして――――なんで、目玉が付いてんだよとツッコまずにはいられなかった。
いやはやたまさか……うん、めっちゃ睨んできてるわ奴(やっこ)さん。
少年の腹に人の顔面の半分くらいの大きさで張り付いている? 生えている? 奴さんは、治療なのか必死になって人面瘡の口をこじ開けようとしている、神父さんらしき人と格闘していた。
軍配は人面瘡が優勢で、汗水流して口に手をかけている神父さんらしき人に対して、実に冷ややかなモノだった。新たに現れた俺達をじっくり観察する余裕すらあるようだ。
中略。
薬はある。神父さん曰く、聖なる灰を水に溶かし、容器の中身が乾燥しきるまで待つ。中身の溶液が蒸発したら、今度は聖水を混ぜ込み祭壇(普段祈りで使う場所とは違う専用の場所らしい)にて、一日保管をすると、薬となるようだ。実にあやしいといわざろうえない。
飲ますためには、人面瘡の口を開けなくてはならない。
煙草ぷー、お、これうめぇけむりっじゃっけ。オレにもクレやぁ。
その隙を突いて薬を捩じ込む。
――――とか、ここまでつくった――――
『少女の最後の願い』
街道を歩いていたある昼下がり。
クーちゃんが「呼ばれてる」と、デムパな発現をして脇道に突っ込んでしまった。
俺とチーちゃんが追いかけると、その先に小さな女の子が倒れていた。
野盗にでも襲われたのかと思ったが、どうやら病に倒れて動けなくなってしまったらしい。
中略。
少女の遺品である髪を受け取り、息を引き取った少女を、俺とチーちゃんで埋葬した。
穴を掘っている間、ずっとクーちゃんは祈りを捧げていた。せつねぇ。
最後に少女から『遺髪の半分は奉公先の主様に、もう半分は家族の元に』そう請われて息を引き取ったのだ。
丁度進行方向だった事もあり、俺達三人は願いを引き受け、少女の村へと足を進めた。
中略。
最後に奉公先の家に着いた。むしろ屋敷なんだが。
気品溢れる初老の婦人だったが、その背筋は今なお真っ直ぐ天に向かい、立ち振る舞いからすら歩んできた人生を彷彿させるような人物だった。
少女の最後の願いと告げると、短く「そうかい……」と呟いただけだった。
居心地の悪さは前の少女の生家でもあったが、こればっかりはしょうがないだろう。人に愛される少女だったようで、家族達の悲しみは深かった。
老女も、先程の言葉のあとに「どうしてあんなに良い子が」と続いたのかもしれない。
用は済ませ立ち去ろうとしたら、老女から待ったがかかった。実際には労いを誘われたのだが。
これにクーちゃんが反応し、率先してお宅に上がっていった。
この時、少しの違和感を受けた。
まるで、屋敷の間取りを分かってるかのように動いたのだ。俺がションベンって言ったら、トイレの場所を教えてくれたのはクーちゃんだったし。
原因が判明したのは、応接間らしき場所に通された時だった。
それまで熱に浮かされるようだった足取りが、急に確かなモノへと変化した。
元に戻ったんじゃなくて“変化”だったのは、あの時の少女がクーちゃんの体をお邪魔していた事が理由だったのだ。さすが巫女さん。
『お館様、幼い頃より大変お世話になりました。既にこの世を旅立つ身ではありますが、最後にどうしても御礼申し上げたく、無理を言ってこのような遅参となりました』
「おぉ……おぉ――――よぉ、来たなぁ」
『実の娘のように良くして頂き、何の御恩も御返しする事なく逝く不孝。どうか御許し下さい』
「何を言う。お前がどれだけ私に尽くし、奉公したのかよく知っている。礼を言わなくてはならないのは、私の方ではないか。これから長い旅の前に、寄ってくれた事が何よりも有り難い」
『勿体無きお言葉。光栄に存じます』
「お前が居なくなると不自由するが、何、まだ足腰はシャンとしている。気を付けていっておいで」
『はい、最後に感謝をお伝え出来た事に心残りはなく、これで旅に往(ゆ)けまする。どうぞ御体には御自愛を』
――――本当に、本当にありがとうございます。そう言って、少女は消えた。
老女の涙は止めどなく流れた。
――――ここまでつくった――――
しかし、キャラクターの引き出しが少なすぎやしないか。
群像モノなんて氏んでも書けませんは。メイン3人に、各話+2.3人が限界だと思います。