2022年08月19日 (金) 06:40
鯰屋です。
随分と久々の活動報告になりました。最後に短編を投稿したのが昨年の十一月のことのようで、気がつけば半年以上の期間が空いてしまった。連載にひとつの区切りを設けてからは一年以上経つみたいです。あまりにはやい。
齢を重ねるたび明確に一年という期間が圧縮されて、どんどんと加速しているような実感がある。生きることそのものに慣れてきてしまっているからなのか……とも考えたけれど、ひたすら巡って反復しているはずの夏が今年もやってきて、こんなに暑いものだったかと首を傾げたりもする。だから、たぶん、慣れているのではなく、どことなく怠惰になっている部分が大きいのだろうと思います。
何もかもが色を帯びていないんじゃないかと錯覚するくらい非生産的な一日と、視界の隅に映る些細なものまで意味を見出してしまう極彩色の一日を反復横跳びしているようでもあり、そのグラデーションに甘んじているうちに時間は過ぎ去ってしまうものらしい。後悔するかもしれないから世の中の動きに狼狽えるままでも、何かしらのものを残さなくてはならない。音楽でも小説でも、どんな形でもいいから書き留めなくてはならないと机に向かうものの、そう簡単に言葉が許してくれるはずもなく、また夕方。そんな日々を送っていました。
おそらく停滞と衰退は同じような意味で、その場所に甘んじて足踏みしていれば、世の中は自分を置いてどんどん前に進んでいくので相対的に自分は後ろへと下がっていく構図になる。芸事というと仰々しいけれど、毎日書かなければ置いていかれる。追い越される。やがて脚が壊死して気づいた頃には歩けなくなっている。だから、ひたすらに変わり続けなければならないなと強く考えながら、今の自分なりにやれることを考えて、新作を書きました。短編です。「火と空の祭」といいます。
ソルトアンドサンクチュアリという現時点において何百時間も遊んだ最高のゲームがあって、その名作の中に「火と空」というモチーフや概念があった。ある種のグラデーションやバランスを司っているものだと思うのだけれど、幼い精神ながらにも本当に美しく映ったことが記憶の片隅でずっと生きていた。
少し前に続編が出て、昔みたいに兄弟と二人で遊んでクリアした。僕が魔法で時の流れを緩慢にしている間に彼が棍棒でボスをしばく——しょうもない時間だったのかもしれないが、あと何回こいつと遊べるだろうか、あるいはもう二度とこんな瞬間はないのかもしれないな、と考えたら途端に寂しくも虚しくもなる。自分の周囲の環境が本当に目まぐるしく変わっていく最中のことだったから、もうこの場所には戻ることができないかもとすら考えた。
だから、記憶になる原風景が色彩的な鮮度を保っているうちに(マインクラフトみたいに今の自分の座標をスケッチしておく、開拓される前の原生林の写真を撮影して手元に置いておく意味も込めて)書きました。ここでひとつ区切って、また書き続けます。次は連載です。