2012年11月25日 (日) 13:01
人生において、嫌いなものを好きになる瞬間というのは存在する。
もっともよくある事例は食べものだ。
子どもの頃に食べられなかったピーマンの甘みがわかるようになる。セロリや春菊の香味を楽しめるようになる。シイタケの……と、このあたりでやめておこう。問題は食べものではないのだから。
初対面でダメだ。
話してやっぱりダメだ。
毎日のように顔突き合わせているけど、どうしようもなくダメだ。
そんな人間をどうやったら好きになれるというのだろうか。好きになることがあるのだろうか。
そんな僕の問いに、君は「あるんじゃない?」と軽い調子で答えた。
何で質問したのはこちらなのに疑問符で返されるのかわからない。しかも考えないで返答したろう。
「へえ。ずいぶん人生経験が豊富なんですね」
嫌みのつもりで言ってやったのに、まあねとまんざらでもなさそう笑う。
確かに君は僕より年上だけど、人間的な成熟度ときたら、そこらの中学生にも負けてると思う。
いくら繁華街から外れた閑な喫茶店の、さらに閑な時間帯のシフトだからって、化粧は濃い(ここはキャバクラじゃない)、客にタメ口(と下ネタ)、三組以上客が来たら注文を混乱する(絶望的な頭の悪さ)、その間違いを指摘すると逆切れ(自分の仕事をしろというセリフはそのままお返ししたい)、時間ができると携帯をいじってばかりでろくに掃除もしやしない(頼むから自分の仕事をしてくれ)。その他数え上げればきりがない。
「ああでもそういうのはさぁ」
ってまだその話考えてたのか。さっき帰ったグループ客の洗い物を片付けなければならない僕の中では、それはもう過去の出来事になってるのだが。
「最初から好きだったのに、好きになっちゃいけないから『こいつ嫌いだ』とかって思ってるんじゃない? 嫌いな人間を好きになるっていうんじゃなくて、本当は好きだってことを『再発見』するだけなのよ」
カウンターに腰かけて(それはやめろといつも言ってるのだが)無駄に得意げにこちらを向いた顔が赤いと思ったら、手にはビールの缶。その薬指にはケバい外見とは裏腹にシンプルな指輪。
そうなのかもしれない、と僕は少しだけ思った。
私に文才あるとか言ってくださるのはりきさんくらいですよ♪
自分の創作の根底は、やっぱりホラーだなと思ってます。
年が明けたら暇になるので、何本か書けたらいいですねえ……ネタぜんぜんないけどw