2019年02月23日 (土) 03:19
このあとがきは、本編読了後にお読みいただくことを推奨します。
ピュグマリオンの匣庭、最初は普通に「ピュグマリオンの箱庭」というタイトルだったのですが、検索してみたら同名のソシャゲがヒットしたので箱の字を変えました。匣という字には牢という意味もありそうで、なかなか作品にマッチしたタイトルかとも思います。
元々はゴスロリ少女と青年の耽美な閉じられた世界を描きたくて構想した話だったのですが、その世界の中でピュグマリオン・コンプレックスを登場させたいなと思った際、元の神話にもからめようとすると性別が逆転しました。せっかくだから色々逆転させようと思ってマリオンとカーライルの依存の方向も逆転しました。下剋上も意識しています。
1880年代のヨーロッパの貴族社会で男装貴族が可能だったのかは果たして謎ですが、あり得ないというのもあり得ないだろうということで書いています。いやわかんないです、あり得ないかもしれないです。
一応途中で登場するストリートの殺人事件というのはジャック・ザ・リッパーを想定して書いています。当時人々の間でちゃんとこう呼ばれていたかの調査が追い付かなかったので変にぼかしています。今の名称と当時の名称が異なることは珍しくないので……。それに、時代を限定しすぎると身動きがとれなくなるのでぼかしたのもあります。
ヴィクトリア朝大英帝国。不思議の国のアリスが生まれ、ホイッスラーやターナーの生きた時代の文化が大変好きです。産業革命後、蒸気の中で人々が失われた自然に思いを馳せたり、新たなものが次々と登場した時代。この作品を書くにあたり当時の生活やカントリーハウス、マナーハウスについていろいろと調べましたが、書きたいものが悪戯に増えました。カーライルのその後も是非とも書いていきたいところです。
時代考証というのは本当に際限がなく、けれども諦めたら途端に駄作にまっしぐらだと思っているので、これからもこの時代の風俗は勉強していきたいです。
それと、子供の一人称視点なので、言葉を難しくしすぎないようにするのが難しかったです。かなり普段の言葉遣いを変換しながら書きました。なんだかんだカーライルはキャンディの時に地の文まで言葉遣いを変えているので、プロ意識がめちゃくちゃ高いと思います。
部誌に掲載した作品なので、意図的にコンパクトにまとめていますが、もっと濃厚にじっとりマリオンとキャンディの蜜月とカーライル少年の冒険は書きたいところ。あとドレスの描写はどっさり入れたいですね。リメイク時の課題です。
それでは、長々とお付き合いありがとうございました。
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