【ネタバレ注意】『PSYCHO-PASS -Sinners of the System- Case.01 罪と罰』
2019年02月08日 (金) 17:57
立川で爆音で見てきたのでネタバレしかない感想を書きます!















舞台は2117年2月の日本。(『劇場版 PSYCHO-PASS』の半年~1年後)
深夜の都内で、乗用車の暴走事件が発生。予測ルートを割り出すと、なんと公安局の本部ビルに向かっていることが判明する。夜勤だった霜月、宜野座、六合塚が対処に向かい、危険を冒しながらも暴走を止めた三人。すると車の中から出てきたのは、「夜坂泉」という若い女性。犯罪係数は200を超えていたものの、どうにも様子がおかしい。情緒不安定なまま不明瞭な言葉をいくつか呟いたかと思うと、そのまま気を失って倒れてしまう。

この夜坂という女性は豪雪地帯である青森で、経済省が管轄する特殊隔離施設「サンクチュアリ」に勤務する心理カウンセラーだということが判明。しかも脳には重度の薬物汚染による障害が発生しているらしい。なぜ青森にいるはずの彼女が東京で車両を暴走させたのか、なぜカウンセラーが薬物で脳を冒されているのか――調査しようという矢先、経済省から彼女を「サンクチュアリ」へ強制送還せよという命令が下る。
厚生省管轄の公安局では、経済省の管轄下にある施設での出来事には関与できない。煮え切らない霜月は、主人公かつヒロインの常守朱から夜坂の護送を任される。
「つまり、今回は私の事件ってことでいいんですよね、センパイ?」
意気込む霜月は宜野座と六合塚を伴い、豪雪吹き荒れるサンクチュアリへ向かう。


サンクチュアリで霜月たちを出迎えたのは、柔和な雰囲気をたたえた女性監督官「辻飼羌香」、施設の住人たちの保全を担当する元執行官「松来ロジオン」をはじめとする不気味な面々。
サンクチュアリとは潜在犯たちを大量に隔離し、とある目的のために労働に従事させ、サイコパスを健全に保たせている「潜在犯の楽園」だった。みな楽しそうに、地下鉱山施設で、レアメタルの発掘を初めとした労働に従事している。
さっそく捜査を始めようとするが、「住民のサイコパスの保全に関わるため」の一点張りでなにも進展しない。明らかに何らかの妨害が入っていることを感じ、苛立つ霜月。かわいい。
いっぽう、東京の公安局では常守が中心となって、暴走事件および夜坂をはじめとしたサンクチュアリの関連人物を捜査していたが、サンクチュアリで六合塚が「潜在犯(=夜坂)の逃走ほう助」の名目で拘束されたことを知る。
痺れを切らし、逃走した夜坂を確保するため、ドミネーターを片手に強制捜査に踏み切る霜月。
夜坂の身に何が起こったのか?
かたくなに立ち入りを禁じられている地下に何があるのか?
「サンクチュアリ」とは何なのか?
そして、裏で糸を引いているのは一体何者なのか?














ここから先は物語の核心に触れるネタバレです。



















青森という時点で察するべきだった。「やったー地元じゃん、でもなぜ青森?」と疑問を持つべきだった。(これは私見ですが)この施設、六ケ所村あたりにあるのでしょう。
六ケ所村とは青森県の小さな村で、放射性廃棄物の再処理施設があります。


つまりサンクチュアリとは「高レベル放射性廃棄物の処理場」であり、潜在犯たちはそこで放射線物質を地下から回収する業務に従事させられていた。経済省の国会議員「烏間明」が中心となって創設されたこの施設の目的は、シビュラシステムの海外輸出・及び諸外国との交流を見据えた際に不利益となる放射性廃棄物を回収・厳重に再封印すること。サンクチュアリに収容されていた潜在犯たちは、薬物投与による集団催眠によって思考を操作され、何も知らずにその業務に従事していた。それを主導していたのはもちろん、監理官である辻飼だが、その裏にはさらに何者か、大きな悪が潜んでいるらしい。
それを告発しようとしたとある男性(名前を忘れてしまった)。製薬会社に勤務する彼は、サンクチュアリの住民たちを洗脳する薬を開発していたのだが、夜坂の暴走事故と前後して何者かによって殺害されてしまう。
その事実を託されたのが、施設に収容されていた婚約者「久々利桃花」が施設内で産み落とした息子「久々利武弥」くん。潜在犯では適切に育児を行えないと判断された親子は引き離され、母親代わりにカウンセラーである夜坂が育てていた。彼の持つ端末に夜坂が残したメッセージ、それは武弥のサイコパスが改善されることで開く、すべての真相を語った映像だった。
たとえ子供とはいえ、真実を公表されればサンクチュアリは崩壊する――
そう判断した辻飼によって処方され続ける違法な薬物を、武弥を庇って飲み続けた夜坂。彼女の脳の異常はそのためであり、完全に洗脳されてしまう前にひとり東京へ向かい、武弥の父親を頼った。夜坂の暴走事件の真相は彼によって行われた、公安局へのメッセージだったのだ。


夜坂を保護し、地下で真実――放射性廃棄物の山をその目で確認した霜月と、武弥に託されたメッセージによってすべてを知った宜野座。住民のサイコパス保全のため、全ての収容者の前で霜月を公開処刑しようとする辻飼だったが、逆に霜月によってすべての事実を収容者に露見させられてしまい、サンクチュアリ内にはサイコハザードが引き起こされる。洗脳によって住民を扇動していた辻飼はエリミネーターで執行され、サンクチュアリは崩壊した。
「人間を動かすのは力じゃない。心なのよ」。2期の霜月さんからは考えられないセリフです。
サイコハザードによって暴走した潜在犯たちに襲われかける霜月たち。しかし、東京から増援にやってきた常守たち刑事課1係の助けを受けて、命からがらサンクチュアリを脱出した。





「まだひとり、裁かれていない人物がいる。」
数日後、霜月はサンクチュアリの創設を提唱した国会議員・烏間の元にいた。おもむろにドミネーターを向けると、表示される犯罪係数は「0」、色相はクリアホワイト……つまり、烏間もまたシビュラシステムの一員であり、サンクチュアリの創設、意図的な隠蔽工作、公安局から分断された管轄、すべてがシビュラシステムの主導で行われたことだったのだ。霜月はこの事実を隠ぺいする代わりに、救出した夜坂、そして武弥の命の保証を得る。
「でも、あなたのせいでシステムに綻びが生じるところだった。人の命を蔑ろにした、恥を知りなさいッ!」
最後に烏間へ強烈な平手打ちをかまし、霜月は事務所を後にする。


その後、厚生施設へ引き取られ治療を受けた夜坂と、養護施設への引き取りが決まった武弥くん。ふたりがいつかまた共に暮らせる日は、そう遠くなさそう……
「刑事さん、どうして僕を助けてくれたの?」
「ん、それはね――――お姉さんたちは、正義の味方だから!」















ここから感想です。
印象としては、『攻殻機動隊S.A.C.』に対する『攻殻機動隊ARISE』ですね。オープニングとエンディングも、アニメシリーズのものをリミックスしたもので、凄く神秘的なものに仕上がっています。
前回の劇場版がアクション重点だったのに対し、今回はしっかりサイバー・ミステリーしていた感じがありますね。放射性物質の秘密が出てくるところなんか最高に鳥肌でした。ただし、それは今回の作品にアクションが足りないというわけではないですよ、もちろん。
『PSYCHO-PASS』という作品の素晴らしい所は、ドミネーター、シビュラシステムという「絶対的な力」が登場し、なおかつそれを行使する立場の視点で描かれながら、最後は必ずステゴロで締めるところ。2期で足りなかったのはたぶんそれ。でも、2期は2期でしっかりとシステムを利用し利用された、より陰鬱なSFとして仕上がっていたと思います。
ただそれだけにオチが「やっぱりな……どうせお前もシビュラなんだろ……」っていうのがガッカリ。たまには黒幕が違うっていうのも見せてほしいけど、これはこれで「サイコパスらしさ」なのかもしれないですね。


霜月というキャラクターは個人的には須郷さんの次に好きなので、彼女の「相変わらずさ」と、しっかり「成長した」ところが見られたのは凄く楽しかった。佐倉綾音ファン、霜月ファンには見逃せない一作となっております。
時折見せる、霜月さんの悟ったような顔。そして刑事らしいきりっとした目つき。不思議と「常守朱」が重なって見えます。
「あいつと長いことやっていれば、こうもなる」2期の1話で宜野座が「変わった」と言われた際に返したセリフですが、霜月も例外じゃなかったということでしょうか……でも、常守朱のいう「正義」と、霜月美香の「正義」は、やっぱり微妙にニュアンスが違うんです。人が人らしく生きる人間らしさ、そしてシビュラの掲げる「人間らしさ」。けれど、そんな彼女が最後にシビュラに対して「平手打ち」という反抗の意思を示したのは、いちばん大きな成長なんじゃないでしょうか。
彼女もやっぱり心の底ではちゃんと人間であり、人の良心というものを信じている。非人道的なことに憤り、無垢な生命を慈しむ。常守の後輩として3年目、本人の自称する「公安局のエース」も遠くないかもです。

ちなみに常守はどうして今回の「ヤマ」を霜月に任せたかというと、
常守「私が動くとすぐ上に目を付けられちゃうでしょ?」
霜月「自覚あったんですね。」
いい凸凹コンビです。
常守から霜月への呼び方は「美香ちゃん」。お互いの距離も随分縮まったみたいですね。



そしてついに出ました。小山力也さん。なんというか、この手の作品ではもう切り札的な存在です。ここで出してきたか。
サンクチュアリの保全官であり、元執行官という経歴を持つ「松来ロジオン」役としての登場です。初っ端からワルモノ感ぷんぷんで、最後の最後までワルモノでした。
施設内を無断で捜査し、立ち入り禁止区域へ侵入した霜月たちを追うため、収容者たちを指揮していましたが、途中で指揮を外されてしまうことに。
「俺は俺で子犬狩りだ。」『S.A.C.』で「サイトォオオオ!そいつをよこせェェェエエ――ッ!」のシーンで有名な、あの強化外骨格に酷似したメカで陽動役の宜野座を追い、交戦します。ほんとうに、えっ死ぬんじゃないの、っていうくらいまで、あの宜野座さんを追い詰めました。2期での彼の強さを知っている人は驚きでしょう。何気に公安局のヘリを破壊し、霜月たちの退路を断つというアフターケアまでこなしちゃう。
そんな彼がどうして犯罪に加担するのか?
簡単に言えば「お金のため」「欲のため」だったみたいですが、それ以上のものを彼には感じますね。同じ執行官の経歴を持ち、そして同じ潜在犯だった宜野座にはシンパシーを感じていたみたいです。「俺と組んで一儲けしないか?」と、宜野座を誘うようなセリフも。
「どうせお前もそのうち、人を信じられなくなる――同じ潜在犯だからな!」
そう言い残して吹雪の中、何百メートルを転落していくロジオン。
助からないと判断したのか、それとも別の感情があるのか、宜野座は最後までエリミネーターの引き金を引くことができませんでした。


そして今回ここまで語っていないいいとこなしの六合塚さん。
ぶっちゃけ彼女の役割は人質です。濡れ衣を着せられて敵に拘束される、囚われのお姫様。けれど拘束されながらも情報を霜月たちにオペレーションし、的確なサポートを行います。
でもこのシーン、明らかに口を動かさずに脳内通信だけでリアルタイムに情報を共有しているような描写に見えるんですよね。何かの伏線かな? 弥生さん電脳化した?


あと気になったところとしては、たぶん「携帯型心理診断鎮圧執行システム」、まあドミネーターなんですけど、恐らくソフトウェアを更新していますね。
文字のフォントや照準の狙い方、色相表示のされ方などがテレビ版や劇場版前作とは微妙に異なります。今回は霜月視点でしか拡張現実が表示されなかったんですけど、これは個々人で勝手に設定できるものなのか、それともソフトウェアが更新されているのか、気になるところですね。
ドミネーターは作動前に使用者のサイコパスを読み取っているはずだから、使用者にとってもっともストレスフリーな環境で表示するように設定されているのかもしれない。フォントとか、ストレスの有無に結構関わりそうだもんな……





とまあ、ここまで長々と語ってきましたが、
まあ、60分とは思えないクオリティ、めちゃくちゃめちゃくちゃ、めっちゃくっちゃ楽しめましたよ。凄い面白かった!
しかも爆音上映だし。立川バンザイ。




Next → 『CASE 02』須郷さん主役。
Next → 『アリータ:バトル・エンジェル』予告編激熱。


そう、アリータすげえいい!
イドとベクターの再現度というか、あっひと目でイド! ベクター! ぜんぶ分かる。キャメロン監督、モーターボール編やりたがってたもんね。必見! 絶対見る!
コメント全2件
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王生らてぃ
2019年02月10日 19:23
>零斗留トさん
2週間限定公開なので恐らくもう見られないのではないでしょうか。ぜひ、劇場で見ることを強くお勧めしたいですが……!
あと、改心ってほど改心してないですから大丈夫ですよ。なんというか、これまでは緊張していて見られなかった、彼女本人のパーソナリティがだんだん出てきた感じ。「くだけてきた」って言うんですかね。
きちんと霜月「らしさ」と、成長したところが60分に凝縮されています。
零斗留ト
2019年02月10日 18:48
とても分かりやすく良い感想文でした。詳細に良し悪しのネタバレ書かれてて、見に行きたいと期待を持たせる感じですね^_^

でもウザネル改心はちょっとなぁ…