2011年06月21日 (火) 00:13
街の警備隊の一隊員であるところの彼は、単純に職務を全うさせた結果だった。迷子の子猫が泣いているのを、厳つい恐ろしいと評判の顔でできる限りの笑顔を作ってなだめ、親のところまで連れて行った。ただそれだけの。
その日以来、彼の後ろには可愛い子猫ちゃんが付いて歩くようになった。おじさん、おじさん、と無邪気に傷つく一言を繰り出す子猫ちゃん。おじさんと呼ばれるような年じゃない、と言い張って、いつしか言い逃れも出来ないくらいおじさんになってしまった。
「おじさんのお嫁さんにしてね」
「馬鹿だろお前」
「ばかじゃないよー」
くすんと小さく鼻を鳴らしながら、膝の上に乗っかって、その細い柔らかな体を擦り付ける。そりゃあ彼からすればいつまでも可愛い子猫ちゃんだったけど、世間一般から見ればもう子どもではない。いつまでもいい年下一人身の男のところに若い女の子がうろつくのはよろしくない。
「こんなおっさんにかまってばっかりいないで、若くてカッコイイお婿さんを探しなさい」
年長者の威厳を掘り起こしてそう諭すのに、お馬鹿で可愛い子猫は聞きやしない。
「若くはないけどカッコイイよ。おじさんのことは全部もらってあげる。お顔の皺まで全部だよ」
男の鼻の頭に刻まれた皺を指で撫でて、笑った。
「イタダキマス」
爪を研いだ猫に捕らえられて美味しく頂かれた彼は、その後すぐに可愛い奥さんを迎えて、これまたすぐににゃあにゃあなく可愛い子どもに恵まれた。
書いてみたけどあまりにも短かったのでしばらくこっちにおいておこうと思います。
いぬのおまわりさんで、顔がアレなわりにへたれたおっさんと、いけいけ女の子。下克上と思ったけどなんか違う。