2014年12月21日 (日) 02:39
最新話の第471話『堕天』と第470話『クロノVSサリエル』ですが、すでに読んだ方はお分かりかと思いますが、ここでようやくプロローグで張った伏線回収となりました。私もこのネタを披露するために、まさかここまで長い時間がかかるとは・・・ともかく、これでクロノと第七使徒サリエルとの決着となります。
それでは、今回の内容について説明していきたいと思います。
Q サリエルが白崎さんだったのって、後付けじゃないのん?
A いいえ、ちゃんとプロローグを書いた時点から、サリエル=白崎さんは決まっていました。気づいていた鋭い読者も多く、割と初期の頃から予想もされていましたね。
それではこの場を借りて、サリエル=白崎さんネタの伏線説明をしたいと思います。
最初の伏線としては、まず第10話『パンドラ大陸』にてサリエルがクロノ同様、実験体の『思考制御装置(エンゼルリング)』を装着していた、という点です。表向きは、サリエルがお情けでクロノを見逃してくれたことのアンサーとなるわけですが、サリエルも実験体であった、という情報が、彼女もまた異世界召喚・転生の可能性を示唆していました。
これと同じような内容の伏線としては、次の第35話『七番目のプロローグ』になります。サリエル視点での話になっていますが、いわばこの時の視点が白崎さんの人格に上書きされた現在のサリエル人格のもの、ということになります。モノローグがやや幼い感じになっているのは、まだ実験施設での経験がないからですね。
個人的にハッキリとサリエルの正体を意識した伏線になっているのが、第151話『悪夢(1)』です。
高校生のクロノが朝目覚めると、物凄くヤル気が起きないけど渋々登校しようと玄関を出たら、サリエルに刺されて炎の世界に引き込まれる、というような悪夢を、アルザスの戦いを冒険者全滅で終えてショックの癒えないクロノが見る話でした。
さて、実はこの悪夢の中で、クロノ母はヤル気のないクロノに対して、さっさと家を出るよう促すために、こう言います。
『「なにボーっとしてんだ、コレ持ってさっさと行きな! もう百合子ちゃんが迎えに来てるよ!」
「……百合子、ちゃん?」
母に愛情少な目弁当を押し付けられつつ、そんなコトを言われる。
百合子ちゃんって、誰だ、ああ、待て、ついさっきまで考えていた白崎さんの名前じゃないか。』
夢の中では、白崎さんがクロノを迎えに来ているという設定。しかし、玄関を出ると待っているのはサリエル。これは現実世界から異世界召喚した今現在のクロノのリアルを象徴すると同時に、白崎さん=サリエルだから、この二人が入れ替わっているという意味合いを籠めて書きました。
そういう割と重要な伏線だと思っているので、このシーンは書籍三巻でも削らずにちゃんと載せましたね。
それから、地味ながら一応、この結末に向けての伏線となっているのが、第164話『サリエルの憂鬱』です。クロノVSサリエルにおいてクロノが見た情報の中にもあった、アイがダイダロス王城のサリエルに会いに来るワンシーンです。
このシーンでアイは調子に乗ってサリエルにキスしようとするが拒否られています。
『「貴女がいてくれるならば、ダイダロスは安心です」
「んふふーありがとねぇー!」
嬉しいこと言ってくれるサリエルに対して勢いのままマウストゥーマウスでキスしようとするが、流石に敬虔な十字教徒として性的な行為はNGなのか、やんわりと手のひらでアイの唇は抑えられた。』
という部分ですか、これがさりげなくサリエルの純潔アピールとなっています。
サリエルは元実験体という身の上なので、マスク共はやろうと思えば見た目は超絶美少女のサリエルを何でも好き勝手にできるのでは・・・と想定されますが(実際、キプロスは実験体の女の子と致していましたし)サリエルの場合は処女性が使徒であり続ける重要なファクターの一つだったために、これに関しては固く守られている、という設定が今だからこそ堂々と説明できるワケですね。しかしながら、この結末に至らない段階において、このテの処女アピールの説明は色んな意味でわざとらしいので、書くことができませんでした。そういうワケで、ギャグ的にアイのキスを拒むことで、サリエルは自らの意志で性的な行為を避けている、という表現にしておきました。
それからは、ややしばらくサリエルの出番がないので伏線の張りようもありませんでしたが・・・大きなヒントとなるのが第312話『白金の月21日・白光教会孤児院(4)』です。
リリィが九体の男性型『人造人間(ホムンクルス)』を手に入れる話ですが、ここで『人造人間(ホムンクルス)』という存在が初めて明かされるわけですね。同時に、『人造人間(ホムンクルス)』の特徴としてアルビノカラーであるというところが、分かりやすくサリエルと共通しています。
この『人造人間(ホムンクルス)』の登場によって、次の伏線となる第365話『レッドウイング伯爵の秘密(2)』に続きます。
やけに日本文化が伝わっているルーンのレッドウイング伯爵が、本当に異邦人だった、しかも姉貴の彼氏(赤羽善一)だった、という内容ですが、これがさらに、サリエルと全く同じ転生パターンだったというワケですね。伯爵の肉体が『人造人間(ホムンクルス)』であるということは、回想シーンでフィオーラの台詞で明らかになっています。
彼女の台詞から、赤羽善一は純粋に『人造人間(ホムンクルス)』を保管している古代遺跡の装置が作動したことによって、偶然、目覚めてしまったということが窺えます。
さらにこの赤羽善一は、クロノと全く同じ日に転生にあっている、というのも重要なポイントとなっています。同じ日に、同じ町で二人がこの異世界に呼び出されたのは単なる偶然ではなく、必然であった、というのも、次の話でクロノも予想しています。そして、全くその通りで、白崎さんもまた、転生した一人だったということです。
ここまで情報が出そろうと、いよいよサリエルの正体について予想する読者が多くなりました。サリエル=白崎さん説と、サリエル=姉貴説、の二つが主流だったかと思います。
前述した第151話『悪夢(1)』と同じ九、白崎さんとサリエルを重ねる描写による伏線は、第四の試練であるラストローズ討伐を通して描きました。勿論、白崎さんに告白されるというクロノの淫夢シチュエーションですが、これも実は現実をなぞったものであったという意味ありますね。
また、第391話『夢か現か』にて襲い掛かってくる(?)ヒツギを撃退するために立ちはだかった白崎さんが、自在箒とボールペンで、サリエルのダイダロス戦での槍と白杭(サギタ)のモーションを繰り出すところも、正体を重ねたネタとなっています。表向きには、ラストローズの能力で、クロノの脳内にある強力な人物のイメージをそのまま投影しているだけという設定ですが。
少し話が逸れますが、実はクロノはあともう二つは試練をクリアしてから、ガラハド戦争突入でサリエルとの決着をつける、という構成にするつもりでした。しかし、幾度も「長い」「遅い」と言われ続けたので、自分でもどうにかサリエルとの決着を前倒しできないかと考えた結果、必要な準備がピッタリと揃う第四の加護習得、までにすることにしました。実際、私は現在の構成に変えて良かったと思っています。話に無駄がなく、文字通りにクロノはその時に持ち得る全てを使って、サリエルを倒すワケですから。
さて、第四の加護を得ることで、サリエルとの決着に必要な準備が全て整い、最後にこの結末に向かう伏線として、第411話『加護契約論』でのフィオナとの会話があります。
果たして、ここでフィオナが冗談で「純潔を奪えば――」と言わなければ、どうなっていたでしょうか。
とりあえず、想定していた伏線に関してはおおよそこんな感じです。あまりに長いので、私も忘れている可能性はありますので、他にもサリエル=白崎さん説を意識したシーンがあるかもしれないですね。
Q 四肢切断の重傷サリエル、ここで加護消えて大丈夫?
A 大丈夫だ、問題ない。
サリエルはそもそも改造されたホムンクルスです。つまり、加護がなくてもクロノと同じ、あるいは最後まで改造されきっているのでそれ以上の身体スペックを秘めています。
首を落とされる、心臓を貫かれる、大量出血、などなど、致命的なダメージを受ければ死にはしますが、そこまでいかなければ生命維持にさして問題はありません。
それと、すでにクロノがありったけの『妖精の霊薬』をはたいてサリエルに治癒を施しているので、通常の人間と同じ程度の肉体であっても、死ぬことはありません。
ついでに、四肢欠損はこの異世界では魔法で再生が可能です。竜王ガーヴィナルとの戦いで、すでにサリエルは一度、眼球と片腕を再生しています。これは使徒の特別な再生力によるワケではなく、純粋に労力と魔力を費やしたお高い魔法治療です。普通の人も、同様の処置を受ければ再生しますし、他にも様々な欠損再生の治癒魔法・治療法が存在します。ただし、どれも高額ですね。
Q 使徒の防御ってどうなってんの? サリエルあっさり切られたけど?
A 基本的に、白色魔力のオーラの密度分が、純粋に加算される防御力となります。薄ければチェインメイル程度ですし、集中して密度を濃くすれば、鋼鉄のプレートよりも固く、あらゆる属性を遮断する万能なガードを可能とします。使徒がダメージを受ける時は、このオーラがどの程度働いているのか、また、使徒本人の防御行動の成否によって変わります。
パターン1 アイがエメリアの不意打ちを食らった場合。
これはアイが直後に余裕で起き上がったことから、ハルバードを喰らう寸前にオーラでの集中ガードが成功したことを示しています。
ただし、アイは回避や矢による迎撃、またサリエルが防御魔法を使うように、使徒はオーラ防御に頼りきりではなく、基本的には通常の方法でガードを行い、どうしようもない一撃の時にだけオーラで対応、というのが基本であることが、これまでの戦闘描写で判断できるかと思います。
パターン2 サリエルがカイの『極一閃(アリティマスラッシュ)』を白刃取りした場合。
これはオーラ関係なしに、純粋にサリエルの超人的技量によって成功させた受けです。もし失敗していれば、オーラごと真っ二つできるほどの威力が、この『極一閃(アリティマスラッシュ)』にはちゃんとあったと、カイの名誉のために明言しておきます。
パターン3 サリエルの足がクロノの投げた鉈で切断された場合。
鉈の投擲だけで、オーラの防御を破れる切れ味があったから、足はバッサリと切れました。また、『天送門(ヘヴンズゲート)』によって、自動的に動かされた状態のサリエルでは、攻撃に対して適切な回避も防御もとれません。
このように、使徒相手でもオーラを破れるだけの攻撃力さえあれば、ちゃんとダメージは通りますし、一撃で殺し切ることも可能です。ただし、超人的な使徒が黙って攻撃を受けてくれることはないので、消耗させる、隙をつく、といった作戦や準備が必要というワケです。
決して、シーンに応じて都合よくダメージを通したり、無傷にしたりはしていません。
Q 第四の加護はネタ枠じゃ・・・
A 前述しましたが、この結末を迎えるために絶対必要な能力でした。
Q 因縁のライバルをヒロインとの思い出の場所で達磨レイプする主人公って・・・
A クリスマスに相応しい、最高にロマンチックなシチュエーションだと私は本気で思っています!
実のところ、書き始めの頃はまだこの展開に決まりきってはいませんでした。リリィの小屋でクロノが別のヒロインを相手に・・・というのは、元々は別のところで使おうかなと思っていたネタなのですが、最終的に現在の形になりました。思いついてからは、もうこれしかない! と言い切れるほどガッチリ固まりましたね。
一種の作品論的な話になりますが、皆さんは主人公がヒロインと結ばれるシチュエーションは、どのようなものが理想的だと思いますか?
長い苦難を共に乗り越えて、ついに二人の思いが通じて結ばれる、というのがベストでしょうか。それとも、突発的な危機を越えたことで、強烈に惹かれあう情熱的な結ばれ方でしょうか。
どちらも正しいと、私は思います。ですが、面白くない。少なくとも、私はそう感じていました。
主人公とヒロインが明確に肉体関係を持つというのは、漫画ではあまり見られませんが、ラノベではたまに、それと、なろう、では割とよく見かける展開ではあります。実際、なろうの総合ランク上位にも、童貞ではない主人公はそこそこいるでしょう。
異世界でチートでハーレム、を悪くは言いません。しかし、そうしてただ可愛いヒロインと素敵に気持ちよく結ばれるだけの話に、どれほどの面白みが見いだせるでしょうか。絵のない小説では、サービスシーンのメリットも小さいですしね。
では、作品として主人公がヒロインを抱く、というシーンを面白く見せるために必要な要素は何か。考えた結果、辿り着いたのが『背徳感』という答えです。禁断の恋だとか、結ばれてはいけない二人とか、これもまた、ありふれた要素でしょう。
でも、世に溢れる『背徳感』のシチュエーションというのもまた、どうも私の感性と一致しない。これぞ、というのは見たことない。それなら自分が――そうして追及した結果が、コレです。
賛否両論だろうというのは覚悟の上。けれど、私はこれ以上ないほど素敵で最悪な悪夢の初体験をクロノにさせることが出来て満足です。これこそ正に、『黒の魔王』の主人公に相応しい、ヒロインとの結ばれ方ですね。
Q 次回『性夜決戦』inノクターン
A 大変申し訳ありませんが、クロノとサリエルの決戦シーンはご用意できておりません。
果たして、超人的な身体スペックを誇る改造人間とホムンクルスの二人がどんなスーパープレイを繰り出すのかは、皆さまのご想像にお任せいたします。
まだ語りたいことがあったような気がしますが、今回はこの辺で。
それでは、大きな転換点をようやく超えた『黒の魔王』を、どうぞこれからもよろしくお願いします!
サリエルとクロノが結ばれる(?)その場の状況だけでなく、それに至るまでのストーリ全てが最高でした...
これからも応援させて頂きます!!菱影代理先生もお体にお気をつけてお過ごし下さい!!