2017年07月31日 (月) 01:19
クロノVSリリィ。それが、ヤンデレハーレムルートへ入るための、唯一にして絶対の方法なのです。
かつて、私は思いました。
主人公VSヒロインの戦いって、あんまり面白くないよね。
何故か? 基本的には出来レースだから。
ヒロインは敵に操られている。ただし、涙の説得コマンドで正気を取り戻す。
ヒロインの大切な人(親兄弟、故郷など)が人質にとられている。放っておけば、主公か頼れる仲間達が、無事に人質を助けてくれます。
実は、ヒロインには裏が……ごめんなさい、最初からアナタのことを利用していたの。衝撃の裏切り発覚ですが、これも涙の説得コマンドを駆使すれば、無事に愛やら絆やらで戻って来てくれます。
今の私でも、主人公とヒロインが戦う展開について、ロクな理由が思いつきません。いえ、物語としては非常に重要な展開であったり、設定であったりするのですが――ヤンデレ至上主義者の私からすると、ヒロインが主人公よりも優先する事情が存在する、ということがそもそも許せないのです。だって、ヒロインって世界の全てと主人公を天秤にかけて、ノータイムで主人公を選べる女の子のことでしょ? 主人公のためならば、どんな犠牲も厭わない、そんな献身的な愛があるからこそ、物語のヒロインという大役を果たせるのです。
私の中ではそうなってるので、作者の設定的にはどんなに重要だろうと、主人公より優先する事情がある女など、まったく心に響きません。不満です。もっとヤンデレヒロイン増えろ。
世の創作事情を恨んでも、どうせ私が満足いくヤンデレ作品が出てくることはないので、自分で書きます。
そして、その結果がクロノVSリリィでした。
主人公VSヒロイン。この構図そのものは、面白いモノだと思っています。作中において、最も固い絆で結ばれているべき、主人公とヒロインが、一体、いかなる理由でガチバトルするに至るのか。非常に挑戦し甲斐のあるテーマかと。
無論、私が選んだヒロインの戦う理由は『愛』です。
込み入った事情や陰謀、悲しい過去の記憶などなど、余計な理由は一切ありません。ヒロインはただ、主人公への恋心のみで、戦いに望めばいいのです。そう、嫉妬に駆られた独占欲、これだけあれば、二人が戦う理由としては十分。
そうして、リリィがクロノを独占しようと本気で戦いを挑むために、クロノはサリエルに童貞を捧げ、フィオナと付き合い、最後の試練を用意しました。ガラハド戦争が終わって以降の話は、基本的にはクロノとリリィの戦いのための準備、前フリ、といった感じですね。
第30章でリリィはフィオナ、サリエル、ネル、をそれぞれ倒しましたが、この戦いはヒロイン同士の内輪の話に過ぎません。でも、ヒロイン同士の殺し合い、というのは前の活動報告で語った通り、これもまた初期から盛り込んだ大事なネタだったので、丸ごと一章かけて描き切りました。
しかし、物語的に重要なのは、やはり、主人公たるクロノ自身の戦いである、第31章ですね。クロノがリリィを取り戻して、ようやく話が丸く収まるので。
さて、ここまで語ったのは、いわばヒロイン側の戦う理由です。
クロノには、主人公側の戦う理由があります。
それは勿論、大切な人であるヒロインを絶対に取り戻す、という感情ですが……所詮、それは建前です。クロノにとっては紛うことなき本音ですが、作者の私にとっては建前に過ぎません。
作者としての、主人公が戦う真の理由は、ハーレムルートへの解放条件です。
作者なんだから、条件も何も、いつでも好きにハーレムさせればいいじゃん、不幸な美少女奴隷でも買い込めばいいじゃん、となりますが……作者だからこそ、自分が納得のいく理由がなければ、安易に主人公をハーレムにさせたくない。主人公には、ハーレムを作るに足る器が欲しい! 少なくとも、私はそう思っています。
クロノはすでにして、立派な主人公として活躍してくれていますが、真にハーレムを志すには、覚悟が足りませんでした。
その覚悟がどういうものか、というのは31章の序盤で、酔ったシモンに怒鳴られた通りです。
私としては、主人公にはきちんと自分の意思でハーレムを作ってもらいたいですね。女の子達に言い寄られて、なし崩し的にハーレム化するのも、女の子達の方から「みんな一緒でいいよ?」と公認ハーレム化するのも、私は御免です。私自身がそういう境遇になるなら大歓迎ですけど、私が描く物語の主人公には、そんな男として情けないほど都合がいい展開など絶対に許しません。それに、ヘラヘラ笑って受け入れる主人公なんて気持ちの悪い男、書きたくもありません。
かといって、男らしく選ぶ女は何が何でも一人に絞れ! とは言いません。そう、何が何でも一人に絞るということは、選ばれなかったヒロイン達を全員、生き地獄に突き落とすということです。
主人公は男としての筋を通して、一人を選べば、そりゃあ気持ちは楽でしょう。自分は悪くないのだから。誠実に愛を貫いた結果で、誰に非難される謂れもありません。
でも、それで死ぬほど苦しむヒロインがいていいのか、死んだ方がマシなほどの苦しみを背負い続けるヒロインがいていいのか。ヤンデレは、常に選ばれる一人とは限らないのですから。私の作品、ヒロイン全員ヤンデレですから。フラれたヒロインが新しい恋に生きるルートなんて、一切存在しませんので。
というワケで、恵まれないヤンデレヒロインを生まないためにも、主人公には是が非でもハーレムにしなければいけない、宿命を背負っているのです。それでいて、安易にハーレムを作ってもいけないのです。
この自分勝手に厳しい条件をクリアして、史上初めてヤンデレハーレムルートを解放したのが、我らがクロノです。
カッコよく言えば、クロノはハーレムの主たる、男の器を示した。
素直に言えば、こんなに苦労したんだから、もうハーレムでもいいよね?
クロノがリリィをぶん殴っては、心臓を捧げて、蘇った。これだけ経験すれば、私としても、ハーレムを築くのに十分な物語を描いたと、納得できます。自分の満足いくハーレムルートを、初めて、書きあげることができました。
本当に、ここまで辿り着くまで、長かったです。
さて、主人公とヒロイン、クロノとリリィ、二人のテーマとは別に、第31章について、順に解説していきたいと思います。
まずは、リリィ誕生について。
この話、ぶっちゃけて言うと後付け設定です。
妖精は花のつぼみが開いて生まれる、とは初期に語られた設定説明なのですが、この辺の話を書いた当時は「まぁ、リリィはデカい花から産まれたんじゃねーの?」くらいの適当な設定加減でした。
一応、妖精女王イリスが特別に目をかけた後継者候補の姫、としての資格をリリィは持っていて、その証こそが半人半魔の生まれ、ということは決まってました。リリィが生まれながらに破格の力を持っているのは、単に特別扱いで生まれたから、強いのは当たり前、といったところです。
それから何年も時が流れ、ガラハド戦争も終わり、いよいよヤンデレ大戦勃発、という話にまで辿り着くと、リリィの出生についても、自然とイメージが固まって来ました。
結果として、リリィは、女冒険者クロエとクズ男リリエンタールの間にできた子供、その胎児の段階で死亡した体を、妖精女王イリスが利用することで、妖精としての力をもって誕生した存在、ということに落ち着きました。半人半魔、半分が人間で半分が妖精って、そもそもどういう状態なんだと私自身、長らく疑問というか曖昧にしていましたが、本物の人間の体を材料にして妖精を作り出しているから、半人半魔なんだ、という明確な理由づけを確立することができました。
設定面は置いとくとしても、リリィの誕生秘話がほぼ呪いの武器ストーリーのような感じに仕上がったのも、個人的には満足してます。
リリィがクロノと運命の出会いを果たす、その直前に、実の父親をそれと知らずに殺している、というのも実にリリィらしくていいと思います。
ちなみに、幼女リリィがクロノと出会った時に、子供らしく警戒したり、木に隠れてみたりしたのは、ついさっきリリエンタールに攫われそうになったから、余計に注意が働いていたから、という理由もつきます。リリエンタールの件がなければ、リリィはもうちょっと堂々と無防備にクロノと接してましたね。
それと、リリィ誕生の話を章の最初で語ったのは、試練攻略の章は、最初に試練モンスターの紹介回とする、というマイルールがあるからです。
記念すべき、最後の試練モンスとしてリリィをカウントしているから、この話をやりました。ついでに、ここでやっとかないと、もう二度とリリィの誕生秘話を語る機会がないという理由もありました。
ちなみに、フィオナにも誕生秘話がちゃんとあります。いつか、お披露目する機会があるかと思います。
スパーダに強制送還され、フィオナはリリィを殺しに、ミアちゃんからは残酷な最後の試練スタートを宣言され、すっかり落ち込んで目から光を失ったクロノ。
失意のどん底に落ちた彼を救ったのは、男の娘枠のヒロイン、いえ、男の友情でした。
この『男の友情』は、第31章の隠れテーマのようなものです。
女の子とは恋愛を、そして男同士は友情を育む。正にリア充。物語の主人公なら、恋も友情も充実してないとダメかなと。どっちか片方だけだと、それはそれで問題ありそうじゃないですか? 美少女ハーレムオンリーで野郎とは一切関係持ちません、みたいな主人公は恋愛脳というか性欲塗れというか。逆に、女人禁制の野郎同士の熱い友情オンリーというのも、ホモ疑惑がかけられますし。
ともかく、クロノの友情面でのアピールです。
だからこそ、今回、純粋に恋愛で拗れてしまったクロノのために、野郎共が集まって「しょうがねぇな」と手助けしてくれる展開となりました。
酔ったシモンに発破をかけられて、クロノがハーレムを決意するのは、シモンのヒロインアピールではなく、立派な友情アピールなのです。男だからこその意見、といったイメージです。
そして、覚悟を決めて復活したクロノの元に集う、実に友達甲斐のある野郎共!
カイ、ファルキウス、ルドラ、セリス、の男オンリーパーティは、かなり前々からやりたかったネタでもありました。クロノはセリスのことをまだ男だと思っているので、男扱いです。
『ブレイドマスター』結成は、ヒロインとはまた別に、それぞれのキャラと地道にフラグを立てつづけた成果でもありますね。長編作品はやっぱり、積み重ねが大事だなと。
『呪いとの対話』について。卍解じゃないです、マジで。ちゃんと、昔から考えてましたよ、パクりじゃないです、信じてください!
実質、ヒツギがついに念願の肉体を手に入れるためのお話でもあります。
主人公に懐く、ペットやら魔物やら意思のある武器やらが、美少女擬人化してヒロインへ、というのはラノベにおいてはある種のお約束と化しているので、以前からヒツギがこうなることを予想されていた方も多いのではないかと。
私としても、安易にテンプレに頼るのを良しとはしませんが、かといって、テンプレを外せばいいというものではないとも思います。奇をてらう、なんて言葉もありますし。
ヒツギが体を手に入れて美少女実体化、というのは、ヒツギ登場からここまで時間をかけた末でのことなので、「擬人化とか萎える・・・」みたいな方も、ご容赦願いたいです。
元々、クロノが第六の加護で水属性が解禁されたら、その能力でヒツギが体を作れる、というのはヒツギ登場から決めていたことでした。アルザス防衛戦で活躍してくれた、スライムの冒険者スーさん、がスライムだけど人間の姿に擬態できる、という設定説明は、水属性でスライム作る→スライムから美少女作る→ヒツギ実体化、を実現するための、実は一番最初の伏線だったりします。まぁ、実現に至るまで、えらい時間がかかりましたが……
一応、第20章『色欲の世界』でクロノの夢をぶち壊しにやってきたヒツギが、夢の中だから少女の姿になって出てくる、というのは擬人化するにあたっては、最もわかりやすい伏線のつもりでした。
ここで一度、ヒツギの少女体のビジュアルを出しているので、以後、マクシミリアンのモニターを利用して自分の姿を映してはアピールする、みたいなネタにも繋げることが出来ました。
さて、呪いの武器との対話を果たして、準備万端で神滅領域アヴァロンに挑むクロノ。
文句なしにランク5級の『ブレイドマスター』ですが、実際、アヴァロン攻略はフィオナ達『リリィスレイヤーズ』の方が上手かったりします。仲は悪くても、やっぱり三人は強いので。
なんにせよ、特に苦戦することもなく順当にアヴァロンを通って、リリィの楽園たる遊園地『ディスティニーランド』へと到着。
現代日本人のクロノ視点で見て、ようやく真っ当に「ここ遊園地だ!」と描写することができました。まぁ、前の章で分かり切っていたことですが。
ちなみに私は、ディズニーランドには一度も行ったことありません。シーもありません。
あんまり大した遊園地経験がないので、実は30章でも31章でも、ディスティニーランドでの描写には割と苦労させられました。書きながら、何度もディズニーランドでググったものです。シンデレラ城って、高さ51メートルだそうですね。航空法などで、建てられる高さの制限とかもあるようで。
他にモデルにしたアトラクションは、クロノが爆撃リリィを叩き落とすために飛び込んだ、ランドで二番目に高い建物で、『タワーオブテラー』です。ディズニーシーでは一番高い建物らしいですね。
リリィVSブレイドマスターについて。
前哨戦、というのもあまり良くないかもしれませんが、まぁ、この辺もお約束ということで。主人公の前に、仲間達が先にボスとバトルをするわけで。
実は、どうやって上手くこの流れに持っていくか、しばらく悩んでました。
クロノを『コキュートスの狭間』で凍結させて、残りは適当に遊んでやろう、というリリィの裏をかいて、クロノが人質救出に向かい、仲間達がリリィの足止め、という流れはいざそのシーンを書こうという直前で、ようやく固まったくらいですね。
一番の悩みどころだったのは、そもそもリリィはクロノしか眼中にないから、仲間達の相手をする必要がないこと。そして、クロノの気持ちとしても、まずは自分がリリィの相手を、と動くこと。ブレイドマスターの作戦の前提としても、仲間達は人質救出役でしたし。
さて、どうすれば真っ先にクロノがリリィと戦うのを回避することができるか……そうだ『コキュートスの狭間』を使うか、と閃いたお蔭で、何とかこの筋書きが成立しましたね。まさか、こんなところで、以前に書いた第八使徒アイを閉じ込めている古代魔法の設定が生きるとは……お蔭で、リリィの楽園建設プランも、よりそれらしくなったかと。時間凍結で未来まで行くことで、自分の手を汚さずに全ての恋敵もしがらみも排除!
ここだけの話、リリィはフィオナとサリエルを解放するつもりはありませんでした。この二人だけは、そのまま未来の楽園まで保管し続ける計画です。
親友だから・・・などでは、断じてありません。
未来で目覚めたクロノに、フィオナもサリエルも天寿を全うした、という都合のいい嘘の説得 が通じず、どうあがいても、自分一人の力ではクロノが全てを失った絶望から立ち直らせることができなかった時の為に……実は二人だけ生きてるんだよね、と、クロノの心を取り戻す最終手段として確保するつもりだったのです。
勿論、クロノが嘘を信じれば、永遠に二人の存在は隠され続けます。リリィは一分の隙もなく、恋敵二人を利用する冷酷さが、魅力の一つだと思います。
リリィVSブレイドマスターは、構図としては前哨戦に過ぎませんが、この戦いがあるからこそ、最後にクロノが勝利できたことに違いはありません。無駄な戦い、というのは描きたくないので。
前の章でリリィはヒロイン三国同盟を相手に、連戦連勝しましたが、VSブレイドマスターでは、さらなる力を見せつけて、強さアピール。正直、ラスボスがリリィでもいいんじゃないかなと。
この戦いでは、これまで語られなかったキャラの加護が色々と明らかになりました。
セリスの『天元龍グラムハイド』、ファルキウスの『運命転輪・フィーネ』、ルドラの『鮮血大公・ロア』と、前々から考えていた加護の設定をようやく出せたかなと。
セリスの加護は、初登場時では何となくしか決まっていませんでした。重力使いの設定があったので、加護の能力そのものはすんなり決まったのですが……こう、しっくりくる名前が思いつかない。『天元龍グラムハイド』という名前に決まるまでは、かなりかかりました。龍神の加護で角とか生えるのは、ガラハド戦争でエメリア将軍の『ジオ・エリザベス』で描写したりしていたので、竜人化みたいな変化はあまり唐突感もなく描けたかなと。セリスもグラムハイドの加護が強くなったら、鎧を脱いでマイクロビキニで戦うようになるんじゃないですかね。
ファルキウスの加護も、本決まりするまでかなりかかりました。ネーミングも含めて。とりあえず、ファルキウスが剣闘士として大成するにはちょうどよい能力かなと。数秒間の未来予知で、相手の動きが分かるから、ただ勝利するだけじゃなくて、余裕を持ってバトルを演出できるというのが強みです。剣闘士は、ただ勝つだけでじゃなくて、観客を楽しませてナンボですから。
ルドラの加護は、かなり初期から決まってました。ルドラ初登場の頃から、能力も名前もほぼ決定でしたね。勿論、実は王子様・・・という生い立ちも含めて。ようやくこの設定出せたなーと、ちょっと感慨深かったです。少年時代で調子に乗ってたルドラが、レオンハルトにフルボッコされる過去エピソード、戦闘中に入れるのはテンポ良くないなーと思いつつも、ここでしか語るタイミングがないので、思い切って入れました。戦闘中の過去回想は、一回は許してください。
リリィの切り札、『女王鎧(レガリア)』と『スプリガン』。
ブレイドマスターを相手にするにあたっては、リリィがガチればそのまま勝つこともできましたが……やはり、何かしら新しい要素がなければ、バトルも面白みに欠けるかと。
とはいえ、どっちも以前から考えていたネタだったので、あまり迷いなく描くことができました。
『女王鎧(レガリア)』は、クロノの魔王の加護の力を利用しつつも、クロノ本人では絶対にできないリリィのオリジナル技ですね。妖精の強力なテレパシー能力と、第四の加護の合わせ技といったところ。リリィに三人を殺す意思はなかったとはいえ、ただそれだけだとただの甘ちゃんみたいですし、徹底的に利用し尽くす、くらいないと弱いかなと。
同時に、『女王鎧(レガリア)』として組み込むのは、それだけ彼女達の力を認めているということでもありますね。セリスの重力結界に囚われつつも、剣士三人組の猛攻を余裕をもって凌げたのは、なんだかんだでネルの力を利用できたからで、状況と相手に合わせて、『女王鎧(レガリア)』で能力を切り替えられるのは、かなり強力です。
『スプリガン』は、リリィなら戦人機(ナイトフレーム)くらい利用するかなという考えで、実戦投入。ロアの加護全開のルドラは、正直かなり強いので、1話の間で倒し切るには、とっておきの切り札といえるくらいのモノが欲しかったです。コイツがなければ、ルドラはかなりのところまで、リリィを追い詰められたと思います。
ラスボスクラスの強さを見せつけて、ブレイドマスターを征したリリィ。最後に残ったセリスに、胸が痛いことを言われたワケですが……この第610話『乙女心VS騎士道精神』は、当初の予定から一番外れた流れになりましたね。
実はここの話、リリィがセリスを触手責めにしては、鎧も服も剥ぎ取った全裸の逆さづりで、出てきたクロノに対して投げつけて、戦闘開始、みたいな流れでした。この時、裸のセリスを見て、始めてクロノが女だと気付く、という意味もありました。
リリィがセリスをいたぶるのは、セリスの言葉でリリィが逆上するからなのですが……この時点でのリリィでは、もう何を言ってもキレるほどではないなと思って。結果、本編の通り、セリスのある意味では正論の言葉を受けても、リリィは揺らがずに自分の恋心を貫き通すだけの覚悟を見せる、というような形になりました。
これはこれで、良い展開になったかと思います。このタイミングで、リリィに対して「お前のやってることは、愛ではなくエゴだ!」と言えただけで、セリスが存在する意味が十分以上にあったと思います。
クロノVSリリィについて。
なんだかんだで、クロノ登場で盛り上がってくれて、良かったです。ちょっとホっとしました。ちゃんと、クロノは人質救出に動いてました、という大義名分もあったので、無能主人公の烙印を押されずに済みましたね。
さて、フィオナが残してくれた情報に、ブレイマスターの奮戦でリリィに手札を切らせた最高の状態で、クロノはリリィに戦いを挑むことができました。逆にいえば、万全の状態のリリィと戦えば、クロノに勝ち目はありませんでしたね。
この戦いは、ただの殺し合いではないので、両者とも制限のある戦闘となりました。なので、クロノが目玉抉ったらリリィがマジで心配したり、城に落下した時にリリィがクロノの胸の上で甘えたりと、普通の戦いではできないやり取りを挟むこともできました。この辺の描写は、かえって萎える、とか批判くるかなと思いましたが、「リリィらしい」などの肯定的な感想を貰えて、嬉しかったです。私も、クロノ相手ではこういうところが、リリィらしい、と思っているので。
クロノの加護封じによって始まったリリィ戦ですが、書籍5巻の外伝『アッシュ・トゥ・アッシュ』を先に読んだ方は、色々と共通点に気づいたかと思います。
※もし、これから5巻を購入予定の方は、ネタバレになるので自主的な回避をお願いします。
外伝では、クロノは十字軍の神兵として、ダイダロスに侵攻し、その内にとうとうイルズ村を制圧、そこから光の泉の噂を聞きつけて、妖精の森(フェアリーガーデン)へと分け入ります。そこで、侵略者たる神兵クロノと、光の泉の守護神と化したリリィとで、激しい戦い、外伝におけるラストバトルが始まります。
どういう結末を迎えるかについては、詳細には書きませんが……リリィの心臓に関わる展開になっている、というのは明らかにしておきます。読んだ方はお分かりかと思いますが、あの展開は、この本編でクロノがリリィに心臓を捧げる、という展開が決まっていたからこそです。
書籍の方が発売が早く、クロノVSリリィが公開される方が後になると、前後が変わってしまいましたが、本編でも外伝でもクロノとリリィの戦いのは共通点があるということですね。
本編と外伝との共通点は他にもあります。
祝5巻発売、の活動報告で書きましたが、外伝クロノのメイン武器は二丁拳銃で、名前はそれぞれ『ストライカー』と『デストロイヤー』です。
で、本編でリリィが手にした二丁拳銃は、『メテオストライカー』と『スターデストロイヤー』です。
名前が似ている、というより、設定上でも、リリィの方が完全上位互換の性能です。
それから、今回のリリィ戦では、クロノは加護ナシなので、かなり久しぶりに黒魔法のオンパレードとなっております。懐かしのあの技から、疑似属性による新開発の黒魔法まで、色々と詰め込めるだけ詰め込みました。
この疑似属性の新黒魔法は、これでも外伝で登場済みのものです。
外伝クロノは黒魔法使いとして完成されているので、魔王の加護がなくても疑似属性を扱って、色々な黒魔法のレパートリーがあります。この辺は、加護の強化を抜かせば、本編クロノよりも、外伝クロノの方が優れてます。呪文詠唱もできますし。
空を飛ぶリリィの機動力を封じるために、『暴風撃(ストームスロワー)』を空中に撃つなど、同じ使い方をしている部分もあります。
色々と比較できる点が多いですが、本編クロノが優れているのは、やはり何といっても呪いの武器です。外伝クロノは、鉈先輩と出会ってないので。
リリィもフィオナも、今や加護の力で強力な結界を展開できますが、クロノにはそれがない……でも、呪いの対話で力を解放したホーンテッドグレイブのお蔭で、曲がりなりにも結界系の技を手に入れました。ただ『反魂歌の暗黒神殿(レクイエム・ホール)』はかなり使い道の限られる結界ですけど。
城でリリィがホムンクルス兵の部隊をけしかけたのは、ブレイドマスター相手に手札を切り、クロノに加護もレガリアも封じられて、かなり追い詰められていたからという裏事情もあります。あのまま人数に任せてクロノを襲い続けていれば、先に息切れするのはクロノの方だったでしょう。
さて、今回の一番の目玉イベントは、クロノとリリィの心臓交換でしょう。
一応、元ネタがあります。何を隠そう、クロノのモデルとなっている、ゲーム『ドラッグ・オン・ドラグーン』の主人公カイム、彼が物語の序盤に、相棒となるレッドドラゴン(メインヒロイン)と契約するために、自分の心臓を抉りだすシーンです。
ゲームだと、魂チックな白く輝く光の球体が胸の中から出て来るだけで、心臓と明言されてはいませんが……実はこのDOD、ノベライズ版というのもありまして、小説だと、ここのシーンでは本当に心臓を抉り出す描写になっているんですよね。すでに瀕死でボロボロになってるカイムが、傷口から手を突っ込んで心臓を抉り出す。
しかし、DODでは契約が成立すれば、その場で両者とも体力全回復という恩恵が得られるので、心臓抉っても大丈夫ですけど、クロノは奇跡の魔法的な契約儀式ではなく、ただの移植手術ですから。自分で治さないといけないところが、苦しいところ。
ともかく、少々のリスペクトも含めて、心臓交換のネタが出来ました。
このネタの一番大切なところは、ヤンデレの愛に報いるほどの献身、といったところです。
クロノ自身は、自分もリリィも両方助かる可能性があるから賭けただけ、と言っていますし、本気でそう思っていますが、やっぱりソレをされたリリィからすると、こんなに嬉しいことはありませんでした。
自らの命を捧げてでも、リリィを求めてくれた。ただこの一点だけで、リリィはクロノのハーレムを認めた、というより、真の意味でクロノに敗北した、といった感じです。自分のエゴを抑えてでも、クロノのために尽くせると覚悟も決まりました。
私としても、クロノがリリィの愛に報いるのに、最も相応しい儀式になったと思います。命がけで血生臭くて、ヤンデレと愛を誓い合うには最高にロマンチックだと、満足しています。
リリィはクロノのために心臓を捧げ、最後の試練を乗り越えました。クロノはリリィに心臓を捧げて、彼女を取り戻しました。
見事にクロノは、ミアと出会った日からきっかり一年で魔王の試練を全て達成。現実時間では、2012年1月(第一の試練開始の第13章)から、2017年7月と、実に五年半もの時を経ています。いやぁ、本当に、長かったですね・・・大体、なろう作品で、このように大きなイベントを複数予定している長編って、その全てをエタらずに描き切れるものは、かなり少ないんじゃないかと。自分でも、大きな試練を乗り越えたような気分です。
さて、試練を乗り越えて、ミアちゃんと若干険悪な対面を果たしたクロノですが、これ以降に関しては、Q&Aで答えていきたいと思います。
Q 『女王鎧(レガリア)』発動中は、第四の加護を発動していることにはならないの?
A なりません。ならないので、他の魔王の加護を使うことができます。
第四の加護『|愛の女王(オーバーエクスタシー)』が必要になるのは、『女王鎧(レガリア)』に組み込むための人物に、夢を見せて眠らせるところまでです。シャングリラの冷凍睡眠ポッドを利用しているので、加護の力技がなくても、安定して相手に夢を見せ続けることができる環境にあるので、リリィは自分のテレパシーだけで夢に囚われた者の心を自由に操れます。
Q ルドラは最初から加護発動してれば、リリィを抑えられたんじゃ?
A 加護を発動させた場合、仲間と連携がとれないどころか、血に飢えて仲間に襲い掛かる危険性があったので、最後に自分だけが残らないと、切るに切れない最終手段でした。勿論、自分が40年間積み重ねた剣の修行と、剣士としての誇りを捨て去ることへの躊躇もありました。
Q フィオナ達を救出した際に、シモンが背中を向けたのは気遣い?
A 気遣いです。ヒロインの裸を、他の男がおいそれと見るわけにはまいりません。シモンとしては、裸を見たことで、後でイチャモンつけられたら、自分の命に関わる問題なので、彼なりのリスク管理でもあります。
Q リリィの目が緑色なのは、嫉妬を意味する『グリーンアイドモンスター』ってこと?
A 知りませんでした。完全に偶然の一致です。
『グリーンアイドモンスター』は、嫉妬を現す英語圏での慣用句だそうですね。感想で言われて、初めて調べて知りました。
リリィの瞳がエメラルドグリーンなのは、最初に書いた頃に、「ただの金髪碧眼じゃあアレだなー」と思って、瞳の色は緑にしたという、単なる思いつきだったのですが……こうなると、最早、運命的なものを感じますね。リリィ、生まれながらに嫉妬を宿命づけられた、怪物です。
Q 心臓を捧げるのは、結婚指輪を左薬指にはめる由来にちなんでのことですか?
A 知りませんでした。完全に偶然の一致です。
結婚指輪を左薬指にはめる理由は、古代ギリシアでは左薬指が心臓に繋がっていると信じられていて、指輪をはめることで心が繋がる、というような意味合いがあったそうです。
指輪なんてまどろっこしい、直接、俺の心臓をくれてやらぁ! クロノの真っ直ぐな愛を、リリィは受け止めて、晴れて婚約成立です。
Q クロノVSリリィは、(1)~(5)までと、数字付きでは最長ですね
A ラスボス戦並みに気合いを入れた証のようなものです。でも、一気読みすると、それほど長々と戦っているようには感じられない、はず……
Q ハルト君って、前に名前でたことあったっけ?
A 安心してください、完全に初出です。強いて言えば、妖精女王イリスは、愛する男と永遠に結ばれている、という情報はあるので、神域にはイリスの男がいるはず、という推測がたつくらいです。
ちなみに、ハルト君の本名は『蒼真遥斗』です。
Q ハルト君・・・
A ハルトはミアと深い関係にあった異邦人の一人です。ハルトは妖精イリスと合体する『妖精合体(エクセリオン)』で、チート級の力を誇る、強力なライバルでした。
あまりに厄介な強さだったので、ミアはイリスと秘密裏に同盟を結ぶことで、ハルトを戦争の表舞台から退場させました。
具体的に言うと、ハルトは召喚された異世界で、そのチート級の力を正義の心でふるっては、見事にハーレムを築き上げていて、ハルトを独占したいイリスにとっては、ハレームメンバーの女どもはこの上なく邪魔な存在でした。ハルトとハーレムヒロインズは、ミアとは敵対する勢力に属していましたが、イリスにとっての敵は、ミアよりもヒロインズでした。
ハルトのチートパワーの源である『妖精合体(エクセリオン)』のイリスでしたが、彼女こそが弱点だとミアは見抜き、その嫉妬心を利用することにしたのです。
要するに、土壇場でハルトを裏切って、『妖精合体(エクセリオン)』を解除すること。イリスはハルトを連れて、事前に用意した場所(イリスにとっての楽園)へと逃げ込み、二度と外には出ないし、ミアも決して二人に手出ししない。残されたハルトのハーレムヒロインズは、敵として、ミアが責任をもって全員処理する。
こうして、ハルトを排除したいミアと、ハルトを独占したいイリスとの利害の一致によって、彼は強制退場させられ……そして今も、神となったイリスの傍に居続けている、というワケです。
それでは、かなり長くなりましたが、今回はこの辺で。
聖地クロノがリリィ帝国を倒し、全ての国に聖地を開くハーレム宣言をしたことで、世界大戦はついに終わりを迎えた。戦火で荒れ果てた大陸に、ついに平和が訪れた……はずだった。
正妻戦争。後に、100年戦争とも呼ばれる、永遠に終わることのない戦いが、静かに、始まろうとしていた――
というワケで、クロノのヤンデレハーレムの行く末を、どうか温かく見守っていただければと思います。