2024年11月02日 (土) 22:41
すまないが、タイトル通りに前後編の2話構成なんだ・・・長くなったから仕方がないんだ・・・
というワケで、実に4年ぶりとなる活動報告です。
第46章『レーベリア会戦』について。
そもそも最初の予定としては、ネロと会戦して決着がつく、くらいのかなりフンワリした内容でした。このエピソードに辿り着いた時点での総力戦を描けばいい、という感じで、ネロと決着がつく時がどんどん先延ばしになり……気づけば連載10年をとうに超え、1000話に届かんばかりの話数まで来てしまうという始末。
元より長い長いと言われてきた本作なのですが、私が明確に完結に向けて話を進めて行こうと思ったのは、カーラマーラ編を終えた頃ですね。
ここでようやくクロノが魔王としてエルロード帝国を建てられる段階に来たので、もうここから悠長に国作りして成長している余裕ないな、と思った上での、古代遺跡チートなカーラマーラになっている、とも言えます。
話を書き始めた一番最初の頃は、小国から徐々に勢力を広げて・・・みたいなイメージを思い描いていましたが、それやったらクロノがパンドラを支配する魔王になるのは、大魔王バーン様みたいなジジイになる頃でしたね。
この話は別にクロノがオッサンやジジイになる年頃まで通して描くものではないので、若い内に魔王まで成り上がるなら、十字軍の侵略で陥落した国々をどんどん取り戻して行く、という勢力拡大の方法しかありません。
流石にそれくらいの筋道は立てていたので、カーラマーラへ向かう道中となるファーレン、アダマントリア、ヴァルナ、と後に解放する国を用意したのですが・・・如何せん、カーラマーラ編が長すぎたのは反省です。
そういうワケで、カーラマーラ編後からは、予定通りの帝国拡大路線のために、十字軍に代わってネロが大遠征軍を率いて南征を始める、という流れとなりました。また、ついにスパーダも十字軍の手に落ち、ガラハドで留まっていた侵略の手がついに大陸中に広がる、という状況にまで持っていったはいいのですが……このままカーラマーラからファーレンまで順に取り戻して行ったら、アヴァロン解放されるの最後になるのでは? ネルとベルクローゼンはその間出番ナシなのか? 二人が加入する頃には黒の魔王もう終わるぞ……となったので、最初にアヴァロン解放しました。
ついでに最初の使徒殺すために、マリアベルとの対決もさせました。この辺から、今まで重ねてきた分の話をついに消化し始めた、だから使徒も倒した、といったところです。
帝国を建ててから最初にアヴァロン解放したお陰で、この時点でようやくネルとも結ばれることになりましたね。尚、素敵な初体験は無い模様。
次のベルドリア攻略とファーレン解放は、順当に勢力拡大ですね。特にベルドリア攻略は圧倒的なワンサイドゲーム。リリィが無双するくらいでいいんですよ。
ファーレン解放では、ネルに続きブリギットとも結ばれました。魔王になったので、ハーレム展開やりやすい恩恵ですね。リリィと殺し合った甲斐もあるというものです。
そして因縁のミサと決着をつける、ヴァルナ空中決戦。
第909話『最も愚かな選択』でネロはアヴァロンに戻り、ミサはそのまま進軍、という大遠征軍を真っ二つに割る愚策が敢行されるワケですが、ネロとミサが一緒にいられると困りますからね。でも二人がワガママ放題なんで、こんな愚策を取るのも何ら不自然ではなかったかと思います。
ミサの最期、は結構色々と悩みました。ただミサに悪食でトドメを刺して、呪いが解けて天獄悪食へ、というのはかなり最初に決まってました。ヴァルカンが悪食担いで初登場した時点でもう決まっていたと思います。
結局、ミサとのガチバトルはカーラマーラ到着前の話で済ませているので、ここでもう一度真っ向勝負はしなくていいと思い、あくまで決着だけ着けるような構成にしました。
実際、第691話時点で、クロノはミサを追い込み、リリィ達はマリアベル完封してたんで、すでに使徒を倒し切れるだけの実力は身についていたワケで。
ここで仕留められていれば、話は早かったんですが・・・カーラマーラ編のボスとして二人を利用して、長めの一章構成くらいで治める、ってのが尺としては妥当だっかかもしれない、という思いもありますね。
そういう反省も込みなんで、ミサも偽聖杯使って戦い長引かせたりはしませんでした。本当はミサもグレゴリウスから「実はコレが本物」と言われて偽聖杯持ってるんですけど、ピンクと出会った時点で使徒の資格を失ったので、使うこともなく抱え落ち、といった状態になってます。
ミサとピンクの関係は、中盤くらいから考えたことかなと思います。少なくとも、ピンク初登場の時には全く無かった考えです。
しかしながら、安易にピンク髪のキャラを出さなかったことが功を奏して、作中で唯一ピンクカラーなのがミサとピンクのみという共通項を作ることに成功。
ただピンクの転生淫魔設定と合わさり、ピンクを真ミサにしよう、という方向性にするかどうかは、結構しばらくの間悩んでいたと思います。
第555話『プリムヴェールの地下神殿』にて、ここを訪れたサリエルを、ピンクが案内する話を書いた頃には、まだ転生淫魔設定しか固まっていませんでしたね。ピンクがやけに淫魔ダンジョンに詳しいのは、転生した場所がここだったから、というのはすでに明らかになっています。
ちなみに、この話でサリエルに助けられた後の会話で、
「うん、めっちゃ痛かったわよ。久しぶりに死ぬかと思ったわ、マジで」
というピンクの台詞があるのですが、これはミサだった頃に死んでるからこその台詞です。転生淫魔だった、のちょっとした伏線でした。
一方、使徒ミサについては、カーラマーラ前での戦いの冒頭、第690話『変わり果てた姿』にて、覚醒直後の様子が描写されています。
ここが娼館だったことと、イケメン貴族とゴールインする寸前でもっと偉いキモデブ野郎に買われてしまう不運に見舞われた、という状況だけは決まっていました。
真ミサであるピンクの経験が、使徒ミサ自身の経験だった、という可能性もありきで、ここを書いたと思います。
ただ当時の私がこのシーンを書いた一番の意味は、覚醒直後のミサを取り押さえたのがサリエルで、そのよしみで何やかんや仲良く、というかミサがサリエルを気に入った、という流れが伺えることですね。
ミサがサリエルに絡むシーンはもうかなり最初の頃だけですので。ここでちょっとは思い入れエピソードいるかな、みたいな。
そうしてヴァルナ空中決戦に至って、私はピンク真ミサ説が一番面白いというか、納得できる関係性と終わり方ができるな、と思って採用しました。
個人的には、真実を悟ったピンクが、
「バァーカじゃないのぉ! アンタ、死んだ私の真似してたの!? はぁ、キモっ、引くわぁっ!!」
という台詞と、100点満点本物の解答を得られた使徒ミサの心境が、結構気に入ってます。
これを聞いて使徒ミサは救われたので、そりゃ使徒の資格も失うわと。
使徒ミサが使徒であり続ける条件は、自分がミサだと信じること。
ここでピンクが前世の本物ミサだ、と使徒ミサが気づいたとしても、ピンクが彼女の憧れた自由奔放な性格からすっかり変わって、落ちぶれたり、つまならい普通の感性に変わっていたりしたら、こだわり強めオタみたいに「こんなのミサじゃない!!」となって拒絶していたでしょう。
その場合は、やはり自分こそが真のミサ、という現実逃避の条件が満たされ続けるので、使徒のままでいられます。
ですので、使徒ミサを殺したのはクロノの復讐の刃ではなく、「バァーカじゃないのぉ!」という真ミサ純度100%の台詞だったのです。
それから、ミサ苦しめるために一瞬ピンク殺すか? と思っても、無様な言い訳を秒で繰り出すピンクを見て即座に諦めるところも、クロノらしくて気に入ってます。
でも小太郎だったら、同じシチュエーションなら殺しはしないけど、ピンクにえぐいセクハラかますのを見せつける、くらいの嫌がらせはするかなと思います。
アダマントリア解放はベルドリア同様、ワンサイドゲーム。フィオナが無双するくらいでちょうどいい。
この期に及んで、使徒がいない敵軍相手に苦戦しても仕方ないんで・・・ここから使徒以外の強敵とか出しても、ひたすら長引くだけなので、安易にそういうのを登場させたりはできませんね。
この章では基本、フィオナの強化回であり、『魔女工房(ウィッチクラフト)』というリリィやシモンとは別に古代の魔法技術を拡大させる内政(?)回でもありました。ここでシモンに列車まで作らせてたら死にますので。
また、帝国におてはリリィが宰相として影響力強すぎるんで、フィオナにも対立派閥になれるくらいの立場になって欲しい、という思いもあって、レキウルを弟子扱いしたり、そういう交流も増やしてます。やっぱりフィオナには、リリィのライバルでいて欲しいので。この二人が争ったら帝国滅びるな、ってくらいのパワーバランスを目指したいです。
と、ここまで描いてようやくレーベリア会戦まで辿り着きました。
この章はネロとの決着を含めて、かなり色々と詰め込んだ内容でした。大まかな要素は順に、
ラグナの黒竜軍団加入。
サフィールとの決着と、ワイスの取り込み。
ヴェーダ傭兵団との対決。『暴君の鎧(マクシミリアン)』の戦闘形態(デストロイア)。
レキとウルスラの同郷対決。
ネロとリィンフェルトの最期。
となっており、地上戦と空中戦については元から会戦の内容として想定したものでしたね。
まずは冒頭のラグナの取り込みですが・・・これは大幅に短縮した形です。本来なら一章かけて同盟というか、臣従させるとこまで持っていくような内容でしたが、カットです。
すでにベルを仲間に加えているし、黒竜の成り立ちも分かっていますので、今更ここで長々と語らなくてもいい、逆に古代の命令権利用できれば即座に加入させられると設定も利用できたので、こういう形に落ち着きました。
ラグナ章があれば、ガーヴィナルの過去話までいれる尺もあったかと思いますが、それとなく察せられるだけでも十分かなと。
折角なので、ここで簡単に解説。
ラグナはベル同様に、この時代ではもう魔王の加護持ちが現れない限り、命令権を更新できない、という停滞に縛られています。
それに嫌気が刺したのがガーヴィナルです。純正の古代黒竜のヴィンセント達は過去の命令には逆らえないのでラグナを放棄する行動が取れませんが、子孫であるガーヴィナルは絶対的というほどではありません。
現代のラグナで生まれる黒竜は、ギリギリ稼働状態にある設備によって人工的に生み出される形となっていて、それによって誕生した黒竜は、古代の命令権と生物の竜としての本能、が五分五分くらいの状態になります。
基本的には命令通りに従う感性ですが、ガーヴィナルのように強い不満と野心を抱くような性格となれば、それに逆らって自らの本能を優先し、完全な自由を選ぶこともできる・・・けど、実際ソレやったのガーヴィナルだけなんで、やっぱ完全な力を受け継いだ特別な個体だからこそ、という感じです。
で、ガーヴィナルが「魔王なんか待ってられるか、ワイが魔王になったる!!」と一念発起してラグナを出奔するワケですが、その頃にはすでにガーヴィエラという娘が生まれていて、物心もついていました。
幼いガーヴィネラにとってガーヴィナルは、完全な黒竜の力を受け継いだ偉大な父親・・・だったのですが、ラグナも自分も捨てて出奔したことで、許されざる裏切者、という強い恨みを抱いています。ラグナの黒竜としては恨むべき裏切りですが、自分も連れて行ってくれれば、という思いもあって・・・彼女が父親に抱く気持ちは複雑で大きい、だからこそコレが地雷だとリリィは一発で見抜いていたので、
「可哀想に、ラグナの山奥に引き篭もっていたせいで、世の中の礼儀も常識も知らずに育ったのね。竜王ガーヴィナルはダイダロスを治めた偉大な国王だったけれど————娘がこんな有様では、浮かばれないわね」
逆鱗ぶん殴るレベルの挑発ができたワケです。
ちなみにリリィは、ガーヴィナルのことは結構、認めてます。書籍版だと「いっつもスパーダに負けてる」ってディスる台詞もありますが、なんやかんやでダイダロスは豊かな状態を維持できていましたので。
それから、リリィはガーヴィナルに会ったことがあります。
第648話『バグズ・ブリゲード』にて、二十年前に妖精の森に蟻が現れて焼き払った、というリリィの台詞があります。続けてダイダロスの騎士団と冒険者も合同で駆除した、とありますが、この時にガーヴィナル直々に騎士団率いてやって来ていたというワケです。
で、そこで見たのが虫の大群相手に無双する少女リリィ。
勿論、強いヤツ大好きのガーヴィナルはかなり熱心に勧誘しますが・・・リリィが求めていたのは主人ではなく、愛すべき伴侶なので。泉を守る使命がある、と丁重に断り、ガーヴィナルも神の使命を尊重して大人しく引いた、という経緯がありました。
この時にリリィも実際にガーヴィナルの為人を知っているので、ダイダロスの王に相応しい立派な人物である、という評価をしているワケです。
なのでガーヴィエラに対する挑発は、半分くらいは本音だったりもしますね。
しかし、ガーヴィナルがリリィのスカウトに成功していたら、妖精将軍としてスパーダ滅ぼしていたかもしれません。ガーヴィナルの野望も夢ではないです。
説明順がちょっと前後しますが、次はヴェーダ傭兵団について。
これもラグナ同様、本来なら一章丸ごと使ってヴェーダ編になる予定でした。
ヴェーダの御子と仲良くなって再登場するルルゥ、マクシミリアンと因縁のある唯天ゾア、と一章使えるだけのネタは温めていただけに、残念です。
ヴェーダ編があれば、現状格闘最強のネルと、それに次ぐサリエルをメインで活躍させたいな、と思っていました。
そういうワケで、ヴェーダ傭兵団もレーベリア会戦でまとめて消化することにしました。パンドラ最強と名高いラグナ黒竜軍団をさっさと加入させてしまったので、ネロにヴェーダ味方するくらいで、多少バランス取るくらいで良かった感もありますが。
これも尺短縮ですが、ルルゥとは再戦もせずに寝返る展開。
しかしながら、期せずしてファイアーエムブレム伝統の敵ユニット説得からの仲間加入、の流れを描けて良かったです。どこかで一回は説得だけで敵を寝返らせるところを書きたいなと思っていましたので。その点、自由人のルルゥは非常にちょうどいい相手でした。
尺の都合で色々残念な扱いになったヴェーダではありますが、VS唯天ゾアについては、レーベリア会戦でのベストバウトという自負があります。クロノもかなり久しぶりに全力戦闘だったかなと。
クロノの強みである呪いの武器と真っ向から斬り合えるゾアの武仙宝具。そして黒魔法を力と技で突破してくる実力。
何より、純粋な技量で強いゾアに対しては、『|黒の魔王(オーバーエルロード)』も決定打にならない、というのはネロ戦の後に分かるでしょう。ですので、クロノが楽に勝てるような切り札を隠したまま戦ったワケではなく、ゾアとは真に正々堂々の決闘だった、ということです。
技量においてはゾアの方が勝っていました。武器もほぼ同格。なのでクロノは勝つために、最もアドバンテージを稼げる『|暴君の鎧(マクシミリアン)』の切り札を使うことにしました。技で上回られるなら、更なる力で押し潰す、というある意味では使徒と同じ戦法ですね。
それでも最後は『天上天下』を地力で対応しなければ死んでたので、勢いのついた『戦闘形態(デストロイア)』を制したクロノの勝利でした。
ゾアの最期もミサと似てますね。自分が500年焦がれた相手が、理想以上の力を持って戦ってくれていたので。
これでマクシミリアンをネロが着て使徒パワーぶんぶんするだけだったら、ゾアは萎え落ちしてたでしょう。
そんなゾアの生き様も、個人的には結構気に入っています。ヴェーダ法国を作って安定させたところまでは、マジで伝説の英雄です。前作主人公並みの経験値といったところですね。レーベリア平原から、クロノと似たような旅路を経たのも、若い頃のゾアが主人公だった感の現れです。
最初期カーラマーラで冒険者やっていた時代は、クロノが一番憧れるような冒険者生活を送っていましたね。そこから故郷に戻って、滅びた里の再興と秩序をを取り戻す正義の戦いに身を投じる若きゾアは、激動であり充実した生き方ができたでしょう。
と、そうして法国を建てた後に天寿を全うすればハッピーエンドだったのですが・・・クロノと違って、ゾアが真に求めるのは平和よりも強さだったワケで。
自分が築き上げたヴェーダ法国という平和が全てご破算になるリスクを承知で、ゾアは五百年生き抜いた末に、自分の欲を優先してレーベリアに参戦しました。
結果的に、クロノが理想のマクシミリアンを見せてくれた上に、全力を尽くして負けたので、ゾアは報われた最期だったと言えるでしょう。クロノからすると、ネロ戦の前に勘弁してくれ、といったところですが。
レーベリア会戦ではゾア戦でクロノの全力戦闘が出来たから、ネロ戦は加護お披露目メインの消化試合でOK、という判断もできましたね。
それでは、今回はこの辺で。
後編に続きます!
ところでミサとピンクで思い出したけど、ピンクが転生して30年くらいってことはサリエルもミサも実は三十路だったということですかね?