2019年05月05日 (日) 02:13
そこは、闇の中だった。いや、闇の中というより
自分はその一部として存在してる感じに近かった。
自分が何者かはわからない。体の感覚もなく
ゆったりと時間が過ぎ脳だけがかすかに働いている。
数々の思考をめぐらせてはいたが
そのうち考えることもなくなりぼーっとしてる
時間が長くなった。
時間の感覚すらなくなってきたころ声が聞こえてきた
「まったく~こんなとこにいたの?ずいぶん探したよ~。」
???
状況がまったくわからなかった。わかるのは自分の頭の中に
声が響いてくるということとその声はこの闇とは
釣り合わない幼げな印象を与える声が大人びた口調で
喋っているということだけだった。
「ん?ほら何してんのいくよ。といっても君一人じゃ
動けないんだけどね~。」
行くとはどこへ?
「まぁまぁ来てからのお楽しみということで!」
目の前をさっきの所とは正反対な光がオレを包んだ。
「さぁついたよ~。」
そこは、天国でも地獄でもない。はたまた懐かしいと思う
場所でもなく人がいる気配もしない場所だった。
オレが目にしたのはごく普通の家の中、あたりを見回しても
普通すぎて見るところもないという印象を与える家だった。
「どぉ?気に入った?」
突然した声に驚いたと同時に振り返ってみるとそこにはさっきの
声の主がいた。容姿は声質からとは裏腹にというパターンではな
く、想像からは1ミリも違わない見た目7~9歳の男の子が子供
じみた笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
「気に入るもなにも家の中も自分の見た目も普通すぎて感想も
でてこないよ。」
???なんで自分の見た目が普通だとわかったんだ?鏡を
みてもいないのに、すると子供は
「あれ~なんで自分は自分の顔がわかったんだ?って思った
でしょ~?」
「なんでオレの考えてる事がわかったんだ?それよりここはどこ
でおまえh・・・」
「あーーーーーー!うるさーい!!!!」
少年は大声を出してオレの声を遮った。もう少しくらい質問の
内容を聞いてくれても良かったとも思うが・・・
「ちゃんと説明するからまって!子供じゃあるまいし!」
子供に言われても・・・
「今何かおもったでしょ?」
「いえ何も。それで?答えてよ。」
不満げな顔をして少年は喋り続けた。
「えーっとまず単刀直入に言うとあなたは一度死んで
生き返る一歩手前の状態です。それで・・・」
???死んだ?オレが?その前にそこそこ重要な事をさらっと
流しやがっていくら小説だからってあんまりなんj・・
「はーい!そこ!余計なことは考えない!これから言うことの
方が重要なの!」
そもそもなんでこいつにはオレの考えていることがわかるんだ?
何もんなんだこいつは?とオレがあれこれ考えていると普通に話
を進めていった。
「そもそも何で死んであんなとこにいたかっていうと
運が悪かったんだよね~。」
「は?」
「あなたは稀に見る運の悪さの持ち主であなたが死んだ日
階段を上がろうとした一歩目で滑って打ち所が悪く・・・」
「・・・・・」
そんなギャグ漫画でもなさそうな死にかたオレは唖然した少年の
方はこっちを見ながら笑いをこらえていた。腹が立つ。
「それであなたはあの世に来たんだけど誰かが間違って地獄に
送っちゃって僕が迎えに来て可哀想だから生き返る試練を
特別にあげにきたってわけよ!あっちなみにその説明も僕が
かねてるんで。」
この状況で驚くほど冷静に話を聞いた自分がいたことに驚いた
と言うのが、この少年のひとまずの話を聞いてでた感想だった。
如何せん死んだときの記憶も家族も友人も自分の名前さへ覚えて
いないので、この少年の話を聞いてもどこか他人事のように思え
ていまいち現実味にかけるものがあった。
「まぁ大体の話の流れはわかったけどな。まだ肝心なことを
説明してないぞ。」
「あわてなさんなって。ここはどこかというと別に大したとこ
じゃないよ。例えるなら高速の近くのパーキングエリアってとこ
かな!」
別にうまくもない例えでわけわからんことを言ってるし
なぜか得意気にこちらを見つめており
どや顔をしている。
とてもうざい。
子供のどや顔がいかに腹が立つか生きている時のオレでも
分からなかっただろう。
「全然わからん。」
「まったく~にぶいな~。」
「つまりあの世とこの世の中間で説明しやすそうなとこに
いるわけ。天国か地獄で説明するわけにもいかないでしょ?」
納得がいったような、いってないような。いやまずその前に
「オレが聞きたかったのはそのことじゃない、なんでオレが
そんなもんうけなきゃいけないんだ?」
記憶がないのに生きている頃に愛着がわくはずもなく不運と
聞かされて戻りたいわけがなかった。
「理不尽だ。なんでオレが?とでも言いたいの?しょうがない
じゃない。人生理不尽が当たり前むしろ楽しんだ方がいいよ~
じゃないとつまんないからね。」
子供のくせに理不尽とは何か身に染みて理解をしているような
口振りで子供のように無邪気に言ってきた。そして
少し寂しそうでもあった。
「じゃあ何をすればいいんだ?」
「簡単さ。今からあなたの人生で起こった3つの不幸を自力で
解決したら、あなたは最後の不幸を解決したと同時に生き返った
ことになるよ~。そして不幸を解決するたびに僕が知らせる
サービスつき!」
今までの適当な説明からしたらきちんとした説明だが試練を
受けるまえに聞きたいことがあった。
「2つ聞かせろ。」
「なーにー?」
「オレとお前の名前は?」
「自分の名前くらい生き返ったときわかるよ。僕の名前は・・」
少年は1分くらい考えた後、意地の悪そうな笑みを浮かべて
言った。
じゃあ"匿名希望の案内人"略してトキアで!
なんじゃそりゃ